嫌われていた竜は、人間として生きていきたい

黒胡鴨

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第一章

第三話 悪夢

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 あれから、大きなトラブルは起きることなく日常を過ごしていた。

「ふぁぁ、おはよう、リオちゃん」

 扉を開けて廊下に出ると、あくび混じりの挨拶をしながらレインも部屋から出てくる。
「おはよう、まだ眠そうだね」
「昨日は、お兄ちゃんの手伝いが思ったより掛かっちゃってね」

 何気ない会話をしながら一階に下りていく。降りるとベイジが荷物を準備していた。

「あれ? お兄ちゃん。今日は狩りに行く日だっけ?」
「ああ、食料の消費が思ったより早くてな。誰かさんが食べすぎる所為でな」
「食べすぎじゃないもん、食べ盛りだもん。リオちゃんだって昨日は二回おかわりしてたじゃん」
「お前は、五回はおかわりしてただろうが」
「ふふ」
「あ、リオも食べすぎだって思ったでしょ」

 レインは涙目になりながら、反論していた。そんな話をしているうちに荷物の準備が終わり、ベイジは荷物を背負い、腰に小さなナイフを身に着け、玄関の扉に手を掛ける。

「じゃあ、今からおじさんと森に行ってくるからトラブルは起こすなよ。」

 ベイジは玄関の扉をくぐり扉が閉まる。
「もう、お兄ちゃんめ。私たちもご飯食べて、リテアおばさんの所に手伝いに行こ」
「レイン、朝から食べ過ぎないようにね」
「もうッ~~」

 レインは顔を膨らませ少し怒りながらも朝食を食べる。三回おかわりしていたのをリオは見逃さなかった。
 その後、おばさんの店に向かい、お店の手伝いを始める。

「二人とも助かるよ。ごめんね、毎回手伝いに来てもらって」
「いいよ、私達もおばさんのお店には何度も世話になってるからね」

 お店の棚に次々と商品を並べていき、リオは商品の入った箱をレインの近くまで運ぶ。

「レイン、次のやつ持ってきたよ。どこに置けばいい?」
「ありがとう。そっちの棚の下に置いといて」

 二人は商品をすべて並べ終える。空になった箱を二人は片付けていく。レインが最後の箱を持ち上げ持っていこうとした。
 その瞬間——。レインがよろけ、持っていた箱を落とす。

「レイン!」

 リオがすかさず体を支える。

「レイン、大丈夫?」
「あ、ごめんね。昨日の疲れが残ってたからかな」
「残りは、私がやるからレインは休んでて」

 レインの肩を支えながら店の奥にある部屋に連れて行き、椅子に座らせ休ませ、片付けを終わらせる。

「ごめんね、最後の任せちゃって」

 申し訳そうな表情を浮かべるレイン。その表情にいつもの元気はなかった。

「ほとんど終わってたから、大した事ない」

 お昼を過ぎ、帰宅すると。家にはベイジとアルグレードがいた。

「あれ? お兄ちゃんたち早いね」
「ああ、色々あってな、切り上げてきた」
「とりあえず二人ともお昼の準備をするから、手伝ってもらえんかの。ベイジは道具の片付けを頼む」

 アルグレードは料理の準備を始める。しばらくすると料理が完成し、テーブルに並べ始める。並べ終わる頃にベイジは道具の片付けを終えて戻って来る。四人は椅子に腰を下ろし、何気ない会話をしながら食事をする。食べ終わり、食器を片付けると、アルグレードは話をするために再び三人をテーブルに集める。

「さて、わしとベイジは狩りのために森に向かったのじゃが、問題が起きてのう。森の奥に魔物がおったのじゃが」

 家の中の雰囲気が暗くなる。

「とりあえずその場は対処はしたが、普段は村の近くで魔物を見ることは無いのじゃが。暫くは森に入らん方がいいじゃろ」
「分かったよ」
「分かった」
 子どもたちは森に入らないことを約束し、その日を過ごした。
 そんな話をした夜中。ベットの上でリオはうなされていた。目の前で誰かが殺されそうになっているが、体は動かず、手を伸ばすが決して届かない場所で無惨にも殺されている悪夢を……

「や、やめて。その……ころ、さ」

 その人が殺される瞬間。リオが飛び起きる。

「——はぁはぁ」

 息は荒く、体は汗でぐしょぐしょになっていた。

「一体……この夢は……?」

 その夜は、眠ることができず朝まで過ごしてた。しかし、その日から、リオは何度も同じような悪夢を見るようになる。
 数日後の朝。悪夢を見たことによって起きるリオ。ベットから起き上がり、部屋を出て、一階に下りようと階段に向かう。——途中。ドサッ、という音がレインの部屋から聞こえてくる。リオは部屋の扉を開ける。中ではレインがベットの横で倒れていた。

「レイン! 大丈夫!?」

 急いで駆け寄る。レインの顔は青白くなっており、汗でびしょびしょだった。呼吸は荒くなんとか呼吸しているような状態だった。リオは急いで一階に降りてアルグレードとベイジを呼び出す。アルグレードは状況を確認するとレインをベットに寝かせ、医者を呼びに急いで家を出ていく。

「レイン! 今、おじさんが医者を連れてくるから」

 ベイジはレインの手を握る。アルグレードが医者を連れて二階に上がってくる。医者はしばらく診察をする少し考えるような素振りをした後、自分のバックから薬の入った容器を取り出し、レインに飲ませる。すると、荒かった呼吸が少しずつ落ち着いてくる。

「とりあえずはこれで様子を見ましょう」

 医者は容器をバックに戻し、アルグレードと共に一階に降りていく。

「よ、良かった」

 ベイジとリオは息を吐き出すと、力が抜けるように崩れていく。
 その頃、アルグレードは一階で医者と話をしていた。

「それで、レインはどうじゃった」
「私が見たところ、魔力の流れによる症状でした」
「魔力の流れ」
「ええ。実は村に戻ってくる前に五年程前から王都で同じような症状の患者が現れ始めたようで、どの患者も少し前から体調が悪くなって突然苦しみだしたそうです。」
「ふむ」

 ここまで話すと医者の顔に影が差す。

「私も数人の患者を見ました。そしてはじめに見た患者は、ポーションを飲ませ様子を見ました。しかし、その日の夜に魔力暴走を起こし、診察していた場所もろとも周りを吹き飛ばしました。幸い患者以外の死者は出なかったそうですが」
「魔力暴走……」

 アルグレードの頬に汗が垂れる。

「魔力による症状だということが分かっていたので、二人目の患者には先程、お子さんに飲ませたものと同じ、魔力の流れを整える効果のある薬を飲ませました。症状は抑えられましたが。その夜に……亡くなりました」
「し、死因は何だったのじゃ?」
「死因は魔力回路の損傷によるものです」
「ん? 薬の効果はあったのじゃろ」
「はい、確かに飲ませた後に魔力の流れを診察したので効果は確かにありました」
「なるほどのう……」
「更に奇妙なのは三人目の患者です。若い女性の患者なのですが、同じく薬を飲ませました。その患者は家族といっしょに住んでいた家で様子を見るようにしました。数日間、診察をしました。ある日の夜中、診療所に旦那さんが訪ねてきました。奥さんが部屋から消えていたそうです」
「誘拐かの?」
「いえ、部屋には荒らされた様子はなく、窓が空いていたそうです。騎士団に探索をお願いしたところ旦那さんの知り合いが奥さんが街の中を一人で歩いているところを見たそうなのですが。まるで別人のような様子だったそうです」

 呆然としながらアルグレードは髭を触る。

「それで、奥さんは見つかったのかのう」
「まだ見つかってないそうです」
「うむ、そうか……」
「未だに完全な治療法も見つかっておらず、様子を見ることしか」

 重々しい雰囲気に包まれる。

「分かったのじゃ、今日はすまんのう突然呼んでしまってのう。ひとまず助かったのじゃ」
「いえ、私もアルグレードさんには世話になってましたので、力及ばずで」

 話を終えて医者は家を出ていき、アルグレードはレインの部屋に戻る。部屋ではレインの呼吸は安定しており、小さく寝息を立てていた。ベイジもレインの左手を握りながらベットの端にうつ伏せに腕と頭だけを乗せて寝息を立てていた。リオが戻ってきたアルグレードに近づいてくる。

「どうだったの?」
「ああ、大丈夫じゃ。魔力がちょっと異常を起こしたそうじゃが、何回か薬を飲めば治るそうじゃ」
「よ、よかった」

 リオを安心させると、アルグレードはにこやかな表情を浮かべる。しかし、拳は固く握りしめられていた。
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