嫌われていた竜は、人間として生きていきたい

黒胡鴨

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第一章

第四話 襲来

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  あれから、一ヶ月が経っていた。レインの容態は相変わらずでベッドで横になっていた。ベイジは付きっきりで看病をしていた。アルグレードは治療法を見つけるために王都に出かけていた。リオは動けない二人の代わりに村での作業を手伝っていた。悪夢にも多少は慣れて眠れるようになっていた。リオがリテアおばさんのところで手伝っていると、二人組の男性の声が耳に入る。

「聞いたか、こないだ俺のダチが森の入口で作業してたらゴブリンに襲われたらしいぜ」
「マジか。そういえば最近、村の近くでも魔物をよく見るようになったな」

 二人組は買い物を済ませ、店を出ていく。

「いやね。村の近くでも魔物を見るなんてね」

 リテアおばさんは、大きくため息をする。リオは手伝いを素早く終わらせると、早足に家に向かう。森の異変とレインのことで頭がいっぱいになりながらも帰宅する。すぐにレインの部屋に様子を見に行く。しかし、部屋では信じられないことが起きていた。あの日から起き上がることができなかったはずの、レインが立って歩いていた。

「え……レイン」
「おはよう、リオ」

 リオは抱きつく。抱きしめる力が無意識に増していく。いつもの冷静さは消え、目には涙が溢れていた。

「痛いよ、リオ……」
「あ、ごめん」

 階段の方から騒々しい音を立てながらベイジが部屋に入ってくる。レインの声が聞こえたようで急いで登ってきたようだ。

「レ、レイン!」

 ベイジは、すこし息が上がっていたが、リオを巻き込むような形でレインを抱きしめる。

「よかった、目を覚まして」
「も~~お兄ちゃんも……」

 二人にとって奇跡的な再会だった。二度と起きることがないと思っていたほど心配していた。レインはその日を境に元気になり、一緒に手伝いができるほどになっていた。
 しかし、リオはなにかは分からないがその状況に少し違和感を感じていた。ただレインと、また手伝いをできることで嬉しさでいっぱいになりそこまで気にすることはなかった。

「おじさん、まだ戻ってこないな」

 ベイジがその日の、お昼の準備をしている時に呟く。アルグレードが王都に向かってから十日ほど経っていた。ベイジは早くレインのことを伝えたくてウズウズしていた。その時、玄関の扉が開く。入ってきたのは手伝いを終わらせてきた、レインとリオだった。

「ただいまお兄ちゃん、お腹空いた!」
「お疲れ様、レイン、リオ」
 帰宅早々、空腹を主張するレイン。そそくさとベイジに近づき、料理が入っている鍋を覗き込む。

「ねぇ、お兄ちゃん。今日はお肉入ってる?」
「入ってない。最近、狩りにも行けてないし備蓄の乾燥肉も食べ尽くしたんだから」

 レインが目覚めた日の翌日に、お祝いとしてレインの大好物のお肉の入った料理を多く出した。大好物を口にしたレインの食べっぷりは凄まじく、今まで以上におかわりをしていた。その時点でほとんど残っていなかった。

「まだ魔物のやつ解決してないの?」
「ああ、森の異変が解決しないことには、しばらくはお肉は無しだろうな」
「そんな~~」

 レインはあからさまに落ち込む動きをする。その後ろで、リオはクスッと笑う。数日前の静けさが嘘だったように、三人の日常が戻っていた。リオはこのまま楽しくて平和な日常が続いていくと思っていた。しかし、そんな日常はたったの数日で終わりを迎えた。

 三日後、外が騒がしく、その声でリオは目覚める。リオが窓から外の様子をうかがうと、村を囲っている柵の近くに人が集まっていた。

「なんだろう?」

 ベッドから起き上がり、家を飛び出し、その場に向かう。そこにはベイジやローガンさん、リテアおばさんと知っている顔ぶれも集まっていた。

「何があっ――」

 リオが集団の隙間から視線を集めている場所を見ようとした瞬間――。

「見るな!」

 ベイジが怒号のような声を上げリオを止めようとする。しかし、すでにそれはリオの視界には映っていた。それは森の異変の調査のために派遣されていた男性冒険者の一人だった。ただし、腰から下はズタズタに切り裂かれ、更には何かで叩き潰された、肉の塊になっていた。上半身もズタズタだったが辛うじて人の形を保っていた。口が動く。まだ息があるようで呼吸をしていた。しかし、肉の隙間から風が漏れ出して笛が鳴っているような音をしていた。そこに集団を押しのけて一人の男性が近づいてくる。村に待機していた冒険者の仲間の一人だった。

「お、おい。しっかりしろ! 何があった!?」

 瀕死の冒険者の口が動き、笛のような音を鳴らしながら、小さく呟く。

「に……げ、ろ」

 その一言をつぶやいた途端、笛のような音が止まる。表情が固まったまま、仲間の冒険者は肩を掴み、体を揺らす。ただ、すでにそれは完全な肉の塊に変わっていた。長い付き合いだったのだろう、冒険者は地面に手をついて、大粒の涙を流していた。しかし、異変は悲しむ時間を与えてはくれなかった。柵の向こうの草木が揺れる。その揺れは徐々に村に近づいてくる。草木の揺れが止まる。静寂が訪れる。風で草木が揺れて隙間ができる。隙間からは赤い目の輝きが見える。魔物だ。リオは目視すると、数匹どころではなく、少し見ただけでも十数匹は確認できた。周りの人達は恐怖に固まり動けなかった。重苦しい雰囲気に包まれる。

「全員!、逃げろ!!」

 ローガンの声が雰囲気を破る。それと同時に魔物たちはすべてを破壊する勢いで、襲いかかって来る――
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