嫌われていた竜は、人間として生きていきたい

黒胡鴨

文字の大きさ
9 / 10
第一章

第六話 殲滅

しおりを挟む
 リオはゆっくりと立ち上がり、奥で壁にもたれ掛かるベイジのもとに向かう。目の前まで近づくと、かすかに呼吸音が聞こえてくる。その音を聞いて安心すると、小さく笑みを浮かべる。

「……よかった」

 一言呟くと、ベイジに背を向け、歩き出す。目的は決まっていた。村を地獄に変えた、魔物たちを一匹残らず殺し、レインのもとに向かう。それだけだった。
 外に出ると、数体のゴブリンと狼のような四足の獣が待ち構えていた。こちらを見つけると、唸り声を上げ始め、刺さるような殺気を感じる。

「……良くも好き勝手やってくれたな」

 拳を力強く握りしめる。鼓動が高鳴り、感情が怒りで染まる。そして、リオの瞳が竜の瞳のように変化しており、細く輝いていた。
 リオが右腕を上に掲げる、小さく言葉を紡ぎ、魔法を詠唱する。すると、リオの手の平に小さな炎が現れる。徐々に炎は集まっていき、空中にはいくつもの炎の塊ができる。それを見た魔物たちは咆哮すると一斉に襲いかかってくる。
 リオは腕を振り下ろす。炎の塊が魔物たちに降り注ぐ。炎は魔物に直撃すると、一瞬で炎に包まれる。断末魔を上げる間もなく、燃え尽きていく。それでも魔物が炎の隙間を縫ってリオに突撃してくる。リオは避けようとはしなかった。放った炎が意思を持ったように動き出し、突撃してくる魔物を包み込み焼き払う。リオはその炎を操り、村中の魔物たちを次々と殺していく。荒々しく、今までのリオとは別人のように。
 ——リオは息を荒げながら、村の中心で立ち尽くす。一面には魔物たちによって破壊された家の瓦礫。血溜まり。そして、灰になった魔物の残骸。
 リオはレインのもとに向かおうとした。その時ーー 
 奥の方から甲高い悲鳴が聞こえてくる。リオは振り向くと、生存者の姿が。その人は追い詰められ、泣き崩れた表情を浮かべ、今にも狼のような魔物に襲われそうになっていた。
 リオは駆け出す。足元の瓦礫を蹴り、魔法を使おうと手を伸ばす。だが、届かない。魔物が飛びかかり、牙が喉元に噛み付く。だが、牙は届くことはなかった。魔物の頭は瓦礫の上を転がりながら落ちる。体からは血を吹き出して倒れ、数秒、痙攣すると動かなくなる。
 リオは、足を止める。魔物の死体の奥を見つめる。魔物の死体の横に剣を持った男が立っていた。その男をリオは知っていた。

「アル……おじさん?」
 
 しかし、アルグレードはこちらを見ることなく、一点を見つめていた。剣を握っている拳は震えていた。リオは、アルグレードに近寄る。

「アルおじさん!」

 再び名前を呼ぶと、アルグレードは声に気づきこちらを振り向く。様子が違うことに気づいたのか、リオのことを少しの間見つめる。そして、口が開く。

「無事じゃったか、リオ」
「うん、アルおじさんこそ」

 リオは表情を緩め、安堵の息をつく。

「ベイジとレインも無事かの?」

 聞かれた途端、リオは緩めた表情を再び引き締め、思い詰めた顔を浮かべた。

「ベイジは魔物に襲われて怪我をして、家の中で休んでる。でもレインは——」
「何かあったのか!?」

 リオは言葉を詰まらせ、アルグレードに背中を見せるように振り返る。

「ごめん、アルおじさん。私、行かなきゃ」

 そのまま、走り出す。
 背後からアルグレードが呼び止める声が聞こえるが、振り返ることなく走り続けた。
 レインのもとに向かう。それだけなのに、心の中は不安と焦りが膨らんでいく。そして、記憶が戻ったことによって今までの違和感の正体を理解し胸が締め付けられる。
 息を切らし、血と瓦礫によって足が赤黒く染まっていく。それでも前に進み続ける。
 ――ついに、目的の場所に辿り着く。
 リオは、ゆっくりと足を止め、息を整える。目の前の空間、中心には大きな木が生えており、その根元にレインの姿があった。レインはゆっくりとこちらを振り向く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

女子高生研ぎ師見習い 悪役令嬢に転生しました❗ 〜農高出身転生者の私、勇者の剣を研いだけど、結局追放されました。よっしゃー!~

みちのあかり
ファンタジー
桜 凛(さくら りん)は調理師を目指す農業高校生。調理クラブの先輩から道具の手入れの大切さを叩きこまれ、研ぎの魅力に目覚める。大好きな恋愛シミュレーションゲームの二次制作をしていたら、なぜかゲームの世界の悪役令嬢リリアの子供時代に転生してしまった。 義母義姉からは疎まれ、母屋にも入れてもらえない日々。学園入学する前に餓死しそうよ! そんな中、農業高校での実習を思い出し、自給自足の生活を。 恋愛フラグ? そんなものよりまずご飯! 自給自足の子供時代 シャベル片手にコカトリスを倒す! 冒険者なら丁寧な言葉遣いなんて使ってられるか! やさぐれ街道まっしぐら! 偉い人にも忖度なし! どんどんレベルを上げましょう! 学園編 元王の養女になったリリア。 勇者達の指導係になったり、魔導具開発したり大忙しの学園生活。 目指すは卒業パーティでの追放劇。 早く勇者達から手を切って追放されたいリリアは無事に追放されるように頑張るけれど、ゲームヒロインちゃんが許してくれません。 カクヨムなどで投稿しています。

処理中です...