《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

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113.トビの反論

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 世界でも3本の指に入ると言われるビビット商会の副会長と紹介した事や、力が全てという気質を持つ竜人さえも気圧される獣気でいくらか見直されたのもあるだろう。
トビの言葉が外野に静かなさざ波を起こす。
その間にもトビはザガドの隣へと悠然と歩いて並んだ。

「ペネドゥル様、私も中へ入ります!
貴様、今すぐに消してくれるわ!
覚悟しろ!!」

 憎々しげにラジェットが喚くが、水牢が迎え入れる事はないようだ。

「お待ちなさい!」

 と、不意にラジェットに被せるように水牢の中から声が響く。
すると空間が歪み、ザガド達の前に緑髪の魔術師が現れ、庇うように立つ。
ラスイードだ。

「ラスイード、邪魔をするか」

 憎悪で煮えたぎる眼をペネドゥルが向けるが、静かに頭を振る。

「まさか」

 微笑んでペネドゥルへと近づくと踵を返す。

「エトラン副会長、このような大衆の面前でそのような暴言、いや、妄言を吐く以上覚悟はできているのですか」
「そらもちろんですわ」

 ラスイードの言葉にトビが神妙な顔で頷く。

「では当然の事ながら確たる証拠はあるのでしょうね。
こちらは我が国の王城に仕えし崇高なる騎士の証言がありますよ」
「存じ上げております。
しかし言い方を変えればそちらは証言のみ。
しかもその証言には信憑性がありませんのや」
「ほう」

 その言葉に目を細め、続ける。

「ではまずはそれをお話しなさい。
けれどおかしな事を言えば、我らの国の王族を辱しめたとして罰します」
「かまわへんよ。
ほなまずは国王陛下の伴侶の弑逆罪についてやけど、ザガド様が刺した所をホンマに見たん?
おたくらが見たんは刀に刺された伴侶とその部屋におったザガド様のはずやけど、違う?
あ、ザガド様が刺したんを見たんやったらちゃんと名前にかけて見たって誓ってや」

 最後の言葉であの時証言した猫属、犬属、虎属の騎士が口ごもる。

「それは····」
「しかしやましいからこそ我々に危害を····」
「逃げようとしたのだから····」

 トビはわざとらしいため息を1つ吐いた。

「ほな結局刺したんは誰かわからへんやん。
そもそもその居室って、誰か見張りはついてたん?
丸1日絶対に国王陛下夫妻を守る為にせめて部屋の扉の前におる見張りやで?」
「それは····」
「だが扉の前に定期的な見張りは····」
「俺は見張りはした事がないから····」

 虎属の定期的な見張り発言は問題だろう。
 
「せやけど俺がさっき行ったら誰も見張りなんかついてへんやったで?
誰でも入れる部屋で直接刺した所を見てへんのに犯人扱いは流石に無理があるわ。
むしろ早く国王陛下夫妻を殺させたいみたいやん?」

 トビは最後の言葉だけは肩を軽く竦めてラスイードの後ろの2人を見やって話す。

「おのれ、下賎の商人ふぜいが····」
「良かろう。
しかし私が白竜の認める血筋の中でザガドより強い事にかわりは····」
「それも疑問やわ。
そもそもそこの騎士さんらと国王陛下夫妻のおる部屋で捕り物やったんやろ?
ザガド様やったら万が一の事が無いように力抑えてたんちゃうの?
それにこの城の人に聞いたけど、ペネドゥル様は今までに何回も夫妻の周りのザガド様の結界を壊さそうとしてたらしいけど、まだ壊せてへんやん。
これではどっちか強いかわからへんやろう」
「何を言うか!
我が主が1番強いに····」
「黙れ、ラジェット。
ならば麻薬の証拠はどうする。
それこそが我ら竜人にとっては1番の許し難き事····」
「それが1番の嘘っぱちや。
ラスイード様、そろそろえんちゃいますの?」
「そうですね」

 ラスイードが改めてペネドゥルに向き直る。
ペネドゥルは平静を装いつつも、汗が顎を伝っていた。

「私は仮にもあなたの側近として動いていました。
例えあなたに脅された関係であったとしても、あなたが王族として、摂政として矢面に立ったから国王陛下が眠り、ザガド様が放蕩してもこの国の形骸だけは何とか保つ事ができたと私は思っております。
こうなる前にご自分達の非をお認めになって考えを改めて欲しかったのですが、残念です」
「ラスイード!
お前は主を裏切るのか!」

 頭に血が上った緑が牢を殴りつけるが、びくともしない。
しかし次の瞬間水牢が消えた。

「もう良い。
残念だが、お前達の王族を侮辱する発言には辟易する。
不敬罪で····」
「がああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 突然鎖に絡められたジェロムが咆哮を上げる。
拘束している手枷を引きちぎりそうなほどガチャガチャと鳴らす。

「おい!
あの手枷、壊れるんじゃないか?!」
「水牢が消えているのに大丈夫なのか?!」

 大臣や貴族達から焦りの声が聞こえてくる。

 バギッ!

 鈍い音がして、反動で手枷が小規模な衝撃波を放つ。

 それがおさまると、ジェロムが血に染まりながら立っていた。
近くにいたザガドは風で衝撃波を緩和させたせいか、少し離れた所で尻餅をついていた。
そこにトビが駆けつけつつ、ジェロムと距離を取っている。
ふうふうと荒い呼吸を繰り返すが、暫くすると血だらけの手で猿轡を引きちぎり、後ろの竜人達に獣気をぶつける。

 息を飲み、獣人兵士の何人かは気絶したりへなへなと座りこんでしまうが、流石に竜人達にそれはなかった。
が、次の瞬間更なるどよめきが走る。

「おい、
「回復が早すぎないか?!」

  俺の隣の兵士か驚愕の表情で呟く。
確かに抉れた肉が盛り上がって元に戻りつつある。
その状況は生々しい。

 よし、今だな。

「お、おい!
逃げろ!!!!」

 俺は大声で叫んで扉の外に飛び出した。

「待ってくれ!」
「俺も!」
「急げ!」

 扉まで少し距離があり、俺の後に続くように初めはまばらに、そして人の波が押し寄せる。

 ある程度ついてきた所で俺はキョロを懐から出す。

「キョロ!
おい、起きろ。
マジ寝するな!
起きてくれ!」

 ちょっと待て。
後ろから獣人押し退けて竜人の奴らまで来てるぞ!

「キョロロロロ~」

 いや、起きたけど寝ぼけてないか?!

「キョロ、ちゃんと起きてくれ!
ほら、俺乗せて飛んでくれ!」
「キョロ~」

 バサリと手の平で羽を震わせると、でかくなりながら走る俺の目の前に飛ぶ。
俺がキョロの背中に飛び乗ると、急上昇して高い天井すれすれに飛んであの広間に戻った。

「ぐうううぅぅぅぅぅ!」
「ジェロム、落ち着け!
私だ、ザガドだ!
ジェロム!」

 唸り声を上げてペネドゥルを背に庇うラジェットに向かい臨戦態勢に入っているジェロムをザガドが落ち着かせようと声をかけているところだったが、全く反応がない。
 ザガドの拘束は側にいるトビかラスイードが解いたようだ。

 と、不意にジェロムが足を踏み出した。
と思った瞬間には鈍い音がラジェットから聞こえた?!

 見るとラジェットが吹き飛び、ペネドゥルを巻き添えに後ろの壁に叩きつけられた後だった。
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