《完結御礼》【溺愛中】秘密だらけの俺の番は可愛いけどやることしれっとえげつない~チートな番を伴侶にするまでの奔走物語

嵐華子

文字の大きさ
122 / 210

122.錯乱

しおりを挟む
「やっときた。
ほら、レンちゃんこっち寝かしたって」

 俺達の事を前もって知らされていただろう兵士が扉を開けるとすぐにトビが出迎えた。
奥には城下から戻ってきていた副団長がいたが、ぐったりと意識のないレンに気づくと慌てて飛んでくる。

「何があったんです?!」
「うーん、これはさすがにヤバいなぁ」

 トビがレンを一目みて顔色を変える。

「何とかしろ、虎」
「頼む、トビ!」
「副会長、早く診て下さい!」
「いや、兄さん達無茶振りやわ」

 レンをいつかのようにベッドに寝かせるとトビが下瞼や首筋を触診していく。
こんな時だが、いや、こんな時だからこそ色を無くしたような真っ白い顔で息も絶え絶えに呼吸する弱った番に触れられると、わかっていても殺意を覚えてしまう。
が、どうにかそれを抑え込む。
俺とファル、副団長とトビにわかれてベッドを挟んでそれぞれ向かい合ってトビの話を聞く。

「熱が高いのに汗はまともにかいてへんから、まだ熱が高くなるかもしれへん。
先にあの貧血の薬は飲んでるけど、直接的に血を無くし過ぎてて必要な空気も取り込めてへん」
「トビ、俺の血を輸血する方法はないのか?!」
「兄さん、この世界で輸血の技術は確立してへんよ。
レンちゃんが好きなタイミングで自分の血を輸血できてるんは、ひとえに魔力で足りへん技術力を無理矢理カバーさしてるんと、レンちゃんの血が特殊やからや」
「副会長、特殊というのは?」

 トビがレンから離れると副団長がそっとレンの枕元に立ち、我が子にするように膝立ちになって手を握った。
心底心配した様子に、不思議と殺意は沸かない····事もなくは、ない。

「レンちゃんの受け売りやけど、血液いうんはいくつか型があんねん。
その型が合う血液しか輸血したらあかん。
もし型が合わん血液を輸血したら大抵は死ぬ。
型云々はレンちゃんからしか聞いた事ないけど、その手の話は医者なら誰でも知ってる。
せやからもし輸血する時は必ず家族か本人の同意を取ってからでないと輸血でけへん。
いちかばちかで輸血するけど、助かるのは大体3割くらいの確率しかないですよ、てな。
レンちゃんは調べる方法はある言うてたけど、今のところ自分以外では使えんみたいや。
せやけどレンちゃんの血やったら間違いなく輸血できる。
レンちゃんの血には生まれつき型がないらしい。
ただ誰にでも輸血できるけど、誰からも輸血はしてもらえへんのよ。
兄さんの血を輸血したら間違いなくレンちゃんは死んでまう。
それがレンちゃんの血の秘密や」
「····レン····」

 思わずレンを見つめる。

「····ん、ゴホッ····は、ぁ····」

 不意にレンがむせて体を副団長に向かって横向きになる。

「「レン?!」」


 俺と副団長の声が重なる。
くそ、何で副団長と手を繋いだままなんだ?!

「ゴホッ、ゴホッ····ぁ····」

 なおも咳き込みながら、体を起こそうとするレンをよりによって副団長が支える。

「····レン?
え、どうしました?!
苦しいんですか?!」

 副団長が慌て始めるが、何が起こった?
急いで反対側に回ると、レンが虚ろな目をしてぼろぼろと大粒の涙を溢して泣いていた。

「····ちゃ····おじいちゃん!」

 レンが副団長に抱きつく。

「誰がおじいちゃんですか!」
「おじいちゃん!
おじいちゃん!
····ふっ、うっ、ぃちゃ····うっ、ああああ!!!!」

 レンが首もとにしがみつき、子供のようにわんわん泣き始めた。

「だからおじいちゃんでは····はぁ、今だけですよ。
グランも睨まない。
ほら、レン。
どうしました?
苦しいんですか?」

 副団長は諦めたようにレンを縦に抱え上げてあやし始めた。
何で俺じゃないんだ?!

「おじい、ちゃ、ごめ、なさい。
っく、えっ、ごめんなさい」

 レンは泣きながら謝り始めた。
心なしか周囲に冷気が漂い始めたのは副団長の氷の魔法だ。
かなり熱が高くなっているのだろう。

「何故謝るんです?
何か悪い事でもしたんですか?」

 ぽんぽんと背中を優しく叩きながら、安心させるように穏やかに尋ねる。

「うぅ、っえ、ごめっ、なさい。
おばあちゃ····トビ君、っく、おじいちゃん、のっ、ふっ、紋、を反転、っふっ、眠っ、ころ、せ、な····えっ、えっ、ん、っく、ごめ、な、さい····」

 息を切らしながら一見、脈絡のない言葉を話しては謝る。

「····なるほど、そういう事やってんな。
黒竜、いつから知っててん?」

 目の前から不穏な気配を感じて視線を向けると、トビがファルを睨みつけていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

処理中です...