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122.錯乱
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「やっときた。
ほら、レンちゃんこっち寝かしたって」
俺達の事を前もって知らされていただろう兵士が扉を開けるとすぐにトビが出迎えた。
奥には城下から戻ってきていた副団長がいたが、ぐったりと意識のないレンに気づくと慌てて飛んでくる。
「何があったんです?!」
「うーん、これはさすがにヤバいなぁ」
トビがレンを一目みて顔色を変える。
「何とかしろ、虎」
「頼む、トビ!」
「副会長、早く診て下さい!」
「いや、兄さん達無茶振りやわ」
レンをいつかのようにベッドに寝かせるとトビが下瞼や首筋を触診していく。
こんな時だが、いや、こんな時だからこそ色を無くしたような真っ白い顔で息も絶え絶えに呼吸する弱った番に触れられると、わかっていても殺意を覚えてしまう。
が、どうにかそれを抑え込む。
俺とファル、副団長とトビにわかれてベッドを挟んでそれぞれ向かい合ってトビの話を聞く。
「熱が高いのに汗はまともにかいてへんから、まだ熱が高くなるかもしれへん。
先にあの貧血の薬は飲んでるけど、直接的に血を無くし過ぎてて必要な空気も取り込めてへん」
「トビ、俺の血を輸血する方法はないのか?!」
「兄さん、この世界で輸血の技術は確立してへんよ。
レンちゃんが好きなタイミングで自分の血を輸血できてるんは、ひとえに魔力で足りへん技術力を無理矢理カバーさしてるんと、レンちゃんの血が特殊やからや」
「副会長、特殊というのは?」
トビがレンから離れると副団長がそっとレンの枕元に立ち、我が子にするように膝立ちになって手を握った。
心底心配した様子に、不思議と殺意は沸かない····事もなくは、ない。
「レンちゃんの受け売りやけど、血液いうんはいくつか型があんねん。
その型が合う血液しか輸血したらあかん。
もし型が合わん血液を輸血したら大抵は死ぬ。
型云々はレンちゃんからしか聞いた事ないけど、その手の話は医者なら誰でも知ってる。
せやからもし輸血する時は必ず家族か本人の同意を取ってからでないと輸血でけへん。
いちかばちかで輸血するけど、助かるのは大体3割くらいの確率しかないですよ、てな。
レンちゃんは調べる方法はある言うてたけど、今のところ自分以外では使えんみたいや。
せやけどレンちゃんの血やったら間違いなく輸血できる。
レンちゃんの血には生まれつき型がないらしい。
ただ誰にでも輸血できるけど、誰からも輸血はしてもらえへんのよ。
兄さんの血を輸血したら間違いなくレンちゃんは死んでまう。
それがレンちゃんの血の秘密や」
「····レン····」
思わずレンを見つめる。
「····ん、ゴホッ····は、ぁ····」
不意にレンがむせて体を副団長に向かって横向きになる。
「「レン?!」」
俺と副団長の声が重なる。
くそ、何で副団長と手を繋いだままなんだ?!
「ゴホッ、ゴホッ····ぁ····」
なおも咳き込みながら、体を起こそうとするレンをよりによって副団長が支える。
「····レン?
え、どうしました?!
苦しいんですか?!」
副団長が慌て始めるが、何が起こった?
急いで反対側に回ると、レンが虚ろな目をしてぼろぼろと大粒の涙を溢して泣いていた。
「····ちゃ····おじいちゃん!」
レンが副団長に抱きつく。
「誰がおじいちゃんですか!」
「おじいちゃん!
おじいちゃん!
····ふっ、うっ、ぃちゃ····うっ、ああああ!!!!」
レンが首もとにしがみつき、子供のようにわんわん泣き始めた。
「だからおじいちゃんでは····はぁ、今だけですよ。
グランも睨まない。
ほら、レン。
どうしました?
苦しいんですか?」
副団長は諦めたようにレンを縦に抱え上げてあやし始めた。
何で俺じゃないんだ?!
「おじい、ちゃ、ごめ、なさい。
っく、えっ、ごめんなさい」
レンは泣きながら謝り始めた。
心なしか周囲に冷気が漂い始めたのは副団長の氷の魔法だ。
かなり熱が高くなっているのだろう。
「何故謝るんです?
何か悪い事でもしたんですか?」
ぽんぽんと背中を優しく叩きながら、安心させるように穏やかに尋ねる。
「うぅ、っえ、ごめっ、なさい。
おばあちゃ····トビ君、っく、おじいちゃん、のっ、ふっ、紋、を反転、っふっ、眠っ、ころ、せ、な····えっ、えっ、ん、っく、ごめ、な、さい····」
息を切らしながら一見、脈絡のない言葉を話しては謝る。
「····なるほど、そういう事やってんな。
黒竜、いつから知っててん?」
目の前から不穏な気配を感じて視線を向けると、トビがファルを睨みつけていた。
ほら、レンちゃんこっち寝かしたって」
俺達の事を前もって知らされていただろう兵士が扉を開けるとすぐにトビが出迎えた。
奥には城下から戻ってきていた副団長がいたが、ぐったりと意識のないレンに気づくと慌てて飛んでくる。
「何があったんです?!」
「うーん、これはさすがにヤバいなぁ」
トビがレンを一目みて顔色を変える。
「何とかしろ、虎」
「頼む、トビ!」
「副会長、早く診て下さい!」
「いや、兄さん達無茶振りやわ」
レンをいつかのようにベッドに寝かせるとトビが下瞼や首筋を触診していく。
こんな時だが、いや、こんな時だからこそ色を無くしたような真っ白い顔で息も絶え絶えに呼吸する弱った番に触れられると、わかっていても殺意を覚えてしまう。
が、どうにかそれを抑え込む。
俺とファル、副団長とトビにわかれてベッドを挟んでそれぞれ向かい合ってトビの話を聞く。
「熱が高いのに汗はまともにかいてへんから、まだ熱が高くなるかもしれへん。
先にあの貧血の薬は飲んでるけど、直接的に血を無くし過ぎてて必要な空気も取り込めてへん」
「トビ、俺の血を輸血する方法はないのか?!」
「兄さん、この世界で輸血の技術は確立してへんよ。
レンちゃんが好きなタイミングで自分の血を輸血できてるんは、ひとえに魔力で足りへん技術力を無理矢理カバーさしてるんと、レンちゃんの血が特殊やからや」
「副会長、特殊というのは?」
トビがレンから離れると副団長がそっとレンの枕元に立ち、我が子にするように膝立ちになって手を握った。
心底心配した様子に、不思議と殺意は沸かない····事もなくは、ない。
「レンちゃんの受け売りやけど、血液いうんはいくつか型があんねん。
その型が合う血液しか輸血したらあかん。
もし型が合わん血液を輸血したら大抵は死ぬ。
型云々はレンちゃんからしか聞いた事ないけど、その手の話は医者なら誰でも知ってる。
せやからもし輸血する時は必ず家族か本人の同意を取ってからでないと輸血でけへん。
いちかばちかで輸血するけど、助かるのは大体3割くらいの確率しかないですよ、てな。
レンちゃんは調べる方法はある言うてたけど、今のところ自分以外では使えんみたいや。
せやけどレンちゃんの血やったら間違いなく輸血できる。
レンちゃんの血には生まれつき型がないらしい。
ただ誰にでも輸血できるけど、誰からも輸血はしてもらえへんのよ。
兄さんの血を輸血したら間違いなくレンちゃんは死んでまう。
それがレンちゃんの血の秘密や」
「····レン····」
思わずレンを見つめる。
「····ん、ゴホッ····は、ぁ····」
不意にレンがむせて体を副団長に向かって横向きになる。
「「レン?!」」
俺と副団長の声が重なる。
くそ、何で副団長と手を繋いだままなんだ?!
「ゴホッ、ゴホッ····ぁ····」
なおも咳き込みながら、体を起こそうとするレンをよりによって副団長が支える。
「····レン?
え、どうしました?!
苦しいんですか?!」
副団長が慌て始めるが、何が起こった?
急いで反対側に回ると、レンが虚ろな目をしてぼろぼろと大粒の涙を溢して泣いていた。
「····ちゃ····おじいちゃん!」
レンが副団長に抱きつく。
「誰がおじいちゃんですか!」
「おじいちゃん!
おじいちゃん!
····ふっ、うっ、ぃちゃ····うっ、ああああ!!!!」
レンが首もとにしがみつき、子供のようにわんわん泣き始めた。
「だからおじいちゃんでは····はぁ、今だけですよ。
グランも睨まない。
ほら、レン。
どうしました?
苦しいんですか?」
副団長は諦めたようにレンを縦に抱え上げてあやし始めた。
何で俺じゃないんだ?!
「おじい、ちゃ、ごめ、なさい。
っく、えっ、ごめんなさい」
レンは泣きながら謝り始めた。
心なしか周囲に冷気が漂い始めたのは副団長の氷の魔法だ。
かなり熱が高くなっているのだろう。
「何故謝るんです?
何か悪い事でもしたんですか?」
ぽんぽんと背中を優しく叩きながら、安心させるように穏やかに尋ねる。
「うぅ、っえ、ごめっ、なさい。
おばあちゃ····トビ君、っく、おじいちゃん、のっ、ふっ、紋、を反転、っふっ、眠っ、ころ、せ、な····えっ、えっ、ん、っく、ごめ、な、さい····」
息を切らしながら一見、脈絡のない言葉を話しては謝る。
「····なるほど、そういう事やってんな。
黒竜、いつから知っててん?」
目の前から不穏な気配を感じて視線を向けると、トビがファルを睨みつけていた。
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