秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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16.商業祭~ルドルフside1

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「殿下、今日は商業祭ですね」

 学園寮の食堂で朝食をとっていると、レイが隣に座る。
今は不特定多数が行き交う為にレイは敬語だ。
手元にはお茶だけだから、今朝はこっそり転移して家で朝食を食べたみたいだ。
笑顔がどす黒いが、今度は何を画策している?

「そうだな。
1年は午前で授業が終わるから、今年もお忍びで回るつもりだ。
3日目が一番にぎわうしな。
····何を企んでいる?」
「ふぅん、いいですねぇ、殿下達1年は」

 おい、氷の微笑やめろ。

「な、何か土産でも買ってくる」
「嫌ですね、仮にも殿下にそんなのお願いするわけないじゃないですか。
ただ羨ましいなって思ったら、うっかり魔具でも仕掛けたくなっただけですよ。
ほら、僕達3年は夕方まで授業なので」
「····朝から物騒すぎるだろう?!」
「ま、冗談です。
今日はバルトス兄上も僕のアリーとお祭りに行くって朝から張り切ってました。
僕の天使とデートするって。
デートって、ふふ、僕の可愛い天使とよりにもよってデートとか、ふざけてますよねぇ」

 真横の俺がかろうじて聞こえたくらいの小さな声で、雷の魔具で落雷してやろうかなとか呟くのやめてくれ。
目が真剣なのが怖すぎる。
例の茶会の後、彼の妹はグレインビルの悪魔降霊術士と陰で噂されている。
それくらい養父と義兄達はあの小さな少女を溺愛し、彼女を害する者達には容赦しないと行動で示したのだ。
双子の兄妹はもちろん、父のブルグル公爵と宮廷魔術師の兄もグレインビル親子が視界に入った瞬間目にも止まらぬ速さでいなくなるらしい。
裏でどんな報復をしたのかは恐ろしくて誰も聞けない。

「そ、そうか。
それは残念だったな。
俺で良ければいつでも愚痴を聞くぞ」

 顔がひくつくのは許してくれ。

「ふふふ、ありがとうございます。
そういえば、バルトス兄上は背が獣人の平均身長くらいはあるんです。
商業祭って人が多いでしょう。
アリーは絶対抱っこされて頭1つ分高い位置にいるから、目立っちゃうんですよね。
僕が抱っこしてたら目立つ事もないのに、僕の可愛い天使が悪目立ちしないか今から心配です」

 何だと?!
それを目印にすれば俺の白銀の玩具に出くわせるかもしれないじゃないか!

 そう、俺はあの茶会以降、何度も彼の妹への訪問の打診をしてきた。
しかしあの美養父はことあるごとに断る!
隣の美少年も王宮魔術師の美青年にしても、白銀の少女との面会は全て阻止!

 しかしレイよ、怒りで油断したな!

「そうだな、さぞ心配だろう。
あ、ご飯食べ終わったから失礼するぞ」
「はい、朝から愚痴に付き合わせて申し訳ありません」
「俺達の仲だ、気にするな」

 俺はそそくさと食堂を出て今日の祭りに意識を集中させる。
俺を見送るレイヤードがどんな顔をしているのかなんて知るよしもなかった。

 そうして午前の授業が終わり、俺は2人の護衛達を連れて足早に祭へと向かう。
本当なら1人が良いのだが、王子という立場上そうもいかない。
護衛は茶会の時の近衛騎士団団長シルヴァイト=ルーベンスと近衛騎士団副団長アント=モーガ。
ここ数年のお忍びはこの2人が主に護衛してくれている。
茶会の時は集まった人属の子供達が怖がらないよう耳と尻尾は魔法で人属に近づけていたが、今日は外での護衛と様々な種族が行き来する祭りの為隠していない。
耳や尻尾を魔法で人属に近づけると身体機能が少し落ちるらしいので、外での護衛では隠さない。
お忍びの時はルド、シル、アンと呼びあっている。

「ルド様、今日は祭も3日目とあってことさら人が多いようです。
決していたずら心など起こさず私達のお側にいて下さい」
「そうそう、今日は全種族入り乱れてるから鼻も耳も利きにくいんですよ」
「さすがに俺も時と場合はわきまえているさ」

 真面目なシルは嘘つけと眉間に皺をよせている。
軽そうなアンは楽しそうだ。
····足して2で割るとちょうどいいんじゃないかと思うが実力は団長、副団長なだけにずば抜けている。
お忍びの時にこの2人が主な護衛になるのは、俺がよく護衛をまいてしまうかららしいのだが、気づくと側にいないのだから仕方ないではないか。
しかしこの2人が護衛中に側からいなくなったことは1度もない。

「それで、今年はどのルートから行きますか?」
「そうだな、まずは東通りから。
今年はジャガンダ国の商会がブースを構えているらしい。
そちらから反対方向に出店を回ってみたい。
あと、お前達の目線くらいで知ってる子供が抱き上げてられていたら教えてくれ」
「どういうこと?
人拐いの情報でもありましたっけ?
てかそれってどこの子ですか?」

 シルに今日のルートを答えつつ、それとなく2人にもさがさせようとしてみたが、やっぱりあからさまだったか。
アンがキョトン顔だ。

「し、知り合いの兄妹が来ているかもしれないと聞いたのでな。
いれば挨拶くらいはしておこうと思っただけだ」
「····ルド様、もしや白銀の少女ですか」
「そういえば、会ってくれないって地団駄踏んでましたね」
「踏んでない!
いれば挨拶くらいはしようと思っただけだ!」

 すぐに思い至ってドン引きした様子のシルに、アンが笑う。
くっ、俺は王子のはずなのに気安すぎないか。

「とにかく行くぞ!」

 真っ赤になりながら俺は雑踏の中に突っ込んでいった。
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