秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
16 / 491

15.運命の食材

しおりを挟む
「ケルトさんからセウユを置いてると聞いてうかがいました、とここの人に伝えてくれますか?」

 シル様におろしてもらい、恐らくお手伝いの孤児だろう子供に取り次ぎをお願いする。
ブース内の商品を見渡すが、醤油以外にも色々と調味料らしき物が陳列している。

 奥から品の良さげな焦げ茶の髪と目をした中年の女性が出てきた。

「お嬢ちゃんがセウユを欲しいのかい?
そこのお兄さん達じゃなく?」
「はい!
ケルトさんの串焼きが美味しすぎて、うちでも食べたいなって。
他にも調味料をいくつか見繕って欲しいですが、味がわからないので色々教えて下さい!」

 ニコニコ、ハキハキと話す。
商人はこうした話し方を好む傾向がある。

「ふふ、お嬢ちゃん色々心得てるみたいだね」

 ご名答。
自領で商品開発をしていく際、商業ギルドの人と話す機会が何度かあった。

「これがセウユだよ。
こっちは辛味の強い粉末で、ナナミ。
これは豆を発酵させたやつで、汁にとかして食べるアジソ。
このブースではセウユが塩加減の違いで2種類、ナナミは辛さと風味違いが2種類、アジソは風味違いで3種類置いてある」

 皆で試食をさせてもらう。

「「「「辛い!」」」」
「「「「しょっぱい!」」」」

 男達は全員顔を顰めた。
まぁそのまま食べればそうだろうな。
僕の欲しかった懐かしの調味料とほぼ同じ。
これはあの主食の発見も期待できる!

「他に珍しい穀物ってあったりしますか?」
「お嬢ちゃん博識だね。
ベイっていう粒状の穀物があるよ。
茹で蒸して食べるんだけど、ほら、これ」
「中を見てもいいですか?」
「もちろんだよ」

 手渡された紙袋を開けてみる。

(き、きたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)

お米だ!
日本人の心の友!
やっばい、興奮し過ぎて鼻血出そう!

「で、では、先ほどの調味料を全て3つずつ。
ベイは一番大きな袋の物を5袋下さい!」
「お嬢ちゃん、太っ腹だね。
まいどあり!」

 お手伝いの少年少女達が商品を揃えているのを見物しながら、ほくほくと満面の笑みを浮かべる。
あ、全て使いきった後の購入方法も合わせて聞いておかないと。
ベイを取りに奥へ行ったのを見計らったのか、殿下と護衛達が話しかけてきた。

「おい、正気か?!
あんなものをそんなに買ってどうするんだ?!」
「アリー嬢、もう少し減らした方が····」
「なになに、荷物持ちなら俺やるよー」

 殿下とシル様はドン引きした顔で購入を引き止める。
アン様は楽しそうだ。
バルトス義兄様は見慣れた光景だったのだろう。

「俺のアリーは買い物してる姿も可愛い」

 うん、通常運転だね。

「心配していただいてありがとうございます。
ふふふ、運命の食材達なのでむしろもっと欲しいくらいです。
義兄様、義兄様の鞄貸して下さい」

 支払いは王家と下手に関わりたくないので殿下の申し出を辞退し、義兄様にお願いする。
僕は義兄様の鞄に持ってきてくれたベイを詰めてもらう。
僕の鞄は入り口が狭くて大袋がつっかえてしまうのだ。
調味料は自分の鞄に入れていく。

「うわ、もしかしなくても収納魔鞄マジックバッグ?!
初めて見たけど、便利だねぇ。」

 アン様がキラキラした目をして持ち上げたり、つついたりする。
豹獣人さんは好奇心大勢なのかな。

 支払いを済ませた義兄様に抱っこされ、外にそろって出る。

「本日はお耳と尻尾をありがとうございました。
もしまた何かの時に会う事がありましたら、触らせていただいてもよろしいですか?」
「あぁ、かまわないよ」
「うん、ぜひぜひ触ってー」

 護衛の2人と和やかに話す。

「ま、待て!
俺の疎外感をどうしてくれる!」

 殿下が横槍を入れるが、知らないよ。

「そもそも俺とアリーの一時に無理矢理押し入ったのはそちらですよ。
疎外感とか知るわけないでしょう」

 義兄様、けっこう辛辣。
殿下半泣きじゃないかな。

「そ、そうだ!
アリー、今日買ったやつで何か作るのだろう!
それを食べさせろ!」
「あんなに嫌がっていたのに····何故です?」
「うっ····食べたいからだ!
····そんなに俺は嫌がられているのか?」

 しょんぼりと殿下が俯く。
さすがに何だか可哀想だ。
まだ13才の子供だし、仕方ないか。
まぁ僕は9才設定でもっと子供なはずなんだけど。

「レイヤード兄様が帰ってくるタイミングでなら、家にいらっしゃれば良いのではないですか」
「アリー?!」
「ただし、私はあくまでレイヤード兄様の帰宅の際にたまたまいる妹なだけです。
私と直接会うのを理由にはなさらないで下さい」
「なるほど、わかった!
その、俺の事はそんなに嫌ってないのか?」
「嫌い以前に良くも悪くも思っていません。
お家柄と関わりたくないだけです。
お茶会の時にも思いましたが、魔力がない私が関わればつまらないからみがありそうなので。
あと、またお耳と尻尾に触りたいです」
「そっちが本当の理由では····」
「いけませんか?」
「う、いや、どのみち護衛はつけねばならないからな」
「アリー?!」
「では、皆様ごきげんよう」

 義兄様は無視してさっさと切り上げる。
殿下達は義兄様の反対を警戒してか、足早に去って行った。

「アリー、何であんなことを····もしかして、疲れて眠くなってるのか?
そういえば、少し体温が高い。
あー、もうっ。
眠くなると面倒になって適当に対処する癖やめてくれ」
「へへ、兄様、ぎゅー。
おやすみなさい」

 そう、その通り。
僕はもう小一時間ほど睡魔と戦い続けていた。
中身はともかく、体は9才児なので疲れた時の睡魔には抗えないのだ。
義兄様に抱きついて心地よく寝息をたて始めるのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。

譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。 本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

魔物の装蹄師はモフモフに囲まれて暮らしたい ~捨てられた狼を育てたら最強のフェンリルに。それでも俺は甘やかします~

うみ
ファンタジー
 馬の装蹄師だった俺は火災事故から馬を救おうとして、命を落とした。  錬金術屋の息子として異世界に転生した俺は、「装蹄師」のスキルを授かる。  スキルを使えば、いつでもどこでも装蹄を作ることができたのだが……使い勝手が悪くお金も稼げないため、冒険者になった。  冒険者となった俺は、カメレオンに似たペットリザードと共に実家へ素材を納品しつつ、夢への資金をためていた。  俺の夢とは街の郊外に牧場を作り、動物や人に懐くモンスターに囲まれて暮らすこと。  ついに資金が集まる目途が立ち意気揚々と街へ向かっていた時、金髪のテイマーに蹴飛ばされ罵られた狼に似たモンスター「ワイルドウルフ」と出会う。  居ても立ってもいられなくなった俺は、金髪のテイマーからワイルドウルフを守り彼を新たな相棒に加える。  爪の欠けていたワイルドウルフのために装蹄師スキルで爪を作ったところ……途端にワイルドウルフが覚醒したんだ!  一週間の修行をするだけで、Eランクのワイルドウルフは最強のフェンリルにまで成長していたのだった。  でも、どれだけ獣魔が強くなろうが俺の夢は変わらない。  そう、モフモフたちに囲まれて暮らす牧場を作るんだ!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波
ファンタジー
小さい時から、様々な召喚獣を扱う召喚士というものに、憧れてはいた。 そして、遂になれるかどうかという試験で召喚獣を手に入れたは良い物の‥‥‥なんじゃこりゃ!? 個人的にはドラゴンとか、そう言ったカッコイイ系を望んでいたのにどうしてこうなった!? これは、憧れの召喚士になれたのは良いのだが、呼び出した者たちが色々とやらかし、思わぬことへ巻き添えにされまくる、哀れな者の物語でもある…‥‥ 小説家になろうでも掲載しております。

処理中です...