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32.ザルハード国の精霊~sideバルトス
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「やあ、バルトス」
「····仕事中です」
やっぱり来たか。
俺は手を止めずに書類を処理していく。
当然だが、目の前の黒髪碧眼の夢物語に出てきそうな優しげで整った顔した王太子は無視だ。
「つれないなぁ。
せっかくここまで来たのに」
「来なければよろしいかと」
「そういうわけにもいかないだろう?」
「なぜです?」
「アリー嬢の事は君に聞く方がいいから」
ほう、直球か。
「ねえ、久々に可愛い君の妹に会わせてくれないかな」
「可愛い事は全く肯定するばかりですが、嫌です」
すげなく断る。
「ルドルフの時と一緒で、友人宅に行ったら妹と会ったってやつでいいよ」
「俺が王宮で働いている時点で友人としての関係とは言えませんよ。
妹は体調もあまり良くないので嫌です」
「じゃあ私の側近に····」
「あり得ません」
何がじゃあなんだ?
週1で断り続けてもう何年になるんだろうか。
「なら7日前の大会で隣国のゼストゥウェル王子の背後にいた黒い靄について教えて欲しいな」
「黒い靄なんか知りませんよ」
「アリー嬢が知っているはずだよ?
保護者席でそう言ってた」
こいつ、あの距離で俺の天使の唇読んでたのか。
凍らせてやろうか。
「そう睨まないでくれ。
あの王子が会わせろって正式にザルハード国第一王子として書類出してきたんだよ。
これ、その書類ね。
同盟国の留学中の王子は王家が身元預かりだろう?
隣国との関係上正規の手続きできたものをむやみに断るわけにもいかないし、私としては体の弱いアリー嬢を王城に呼ぶのも本当はしのびないんだよ?
それにアリー嬢のことも色々調べてたみたいだし、会わせるにしても先にこちらの口裏は合わせとかないとさ」
やはりあちらはそう出たか。
レイヤードが大会後に学園であのバカ王子からアリーへの訪問の打診があったと聞いている。
断ったらしいが、隣国の王子として正式に手続きを踏むと俺達は予想していた。
持っていた万年筆を置いてため息をついた。
「お前は何を隠している、ギディアス」
「あ、やっぱり気づいた?」
「アリーの体の弱さは周知の事実だ。
本来なら断る口実など俺達はいくらでもできる。
それによってグレインビル家がどうなっても俺達は個々で動くから大して揺らがない。
だがそれでアリーの身が危険に晒されるのも本意ではない。
実際この7日で領内でアリーを探っていた人間の目撃情報と、屋敷へ侵入を試みた形跡があった。
まあ侵入したらしたで捕まえられたし、そちらの方がグレインビル家としては好都合だったが、王家としては侵入を諦めてくれて良かっただろうな」
「へえ、そんな事になってたんだ?」
「知っててここに来ただろう。
そちらが再び何かを探ろうとした事も俺達は気づいている。
侵入者が自国、他国どちらにしても捕らえれば確実に吐かせるから考えて行動しろ。
あと、うちの領でのアリーはかなり人気が高い。
下手な探りを領民に入れるような真似はやめさせておけ」
ギディアスの顔が一瞬強ばる。
かまかけみてただけだが、引っかかったな。
「····すまない。
だが、今はあちらの国も王位継承問題できな臭い。
アリー嬢を下手に巻き込ませない為にも、一度は会って当たり障りなく距離を取ってもらいたいのが私達王家の意向なんだ」
「黒い靄と言っていたが、お前は見えたのか?」
「ああ、見えた。
アリー嬢がその事で靄の主に興味を引かれただけならまだ良い。
たがもし気に入られてその事がこの問題の当事者達に知られるのだけは避けるべきだ」
「お前はその靄が何だか知っているのか?
何故それが見えたらお家騒動に巻き込まれる。
王位継承問題以外の何かもあるんだろう」
ギディアスが一瞬躊躇う。
「答えられないのなら、アリーとの面会は断り、侵入者は未遂であっても吐かせた後で殺す。
今回も未遂とはいえ見逃したわけではない。
不法侵入しようとした者を生かしてやる理由もないし、秘密裏にやるから安心しろ」
「····わかった、降参だ。
あの黒い靄はザルハード王家に伝わる精霊だ。
精霊を従えた聖女によって500年前に建国されたという逸話を聞いたことがないか。
建国当初は王族の大半が精霊を見る事ができ、見える者が王位継承権を持つとされていたが、いつ頃からか見る者が王族に現れなくなった。
だからあの国は事実ではなく逸話として情報を操作した。
だが今は13才の第一王子と11才の第三王子が見えている」
「13才と11才ね」
「ちなみに第二王子はすでに亡くなっている。
アリー嬢と年が近い上にあの靄を見える事によって婚約問題が絡みかねない。
そうでなくても聖女に仕立てて取り込もうとしかねないのがあの国の教会だ。
この国と違ってザルハードの教会は王家に対して影響を持っているだけでなく、過激な思考を持つ連中もいる。
裏では黒い教会とすら言われている。
ちなみに側室だが第三王子の母親が教会と繋がってる」
「なるほど。
最悪あっちの教会潰して王子連中とその仲間達を消してからアリーとこの国を出れば、問題は回避できるな」
「いや、ホントやめてくれ。
グレインビル家ならやりかねないし、できるのは分かってるけど、ホントそれは勘弁して」
「そんなにげっそりすることか?
1番手っ取り早いだろう」
「私達王族もちゃんとアリー嬢守るから、ホントやめてくれ」
「そもそも他人が俺の可愛い天使を守るとか不愉快きわまりない。
やっぱり消す方が万事解決だな」
「頼むから、アリー嬢からんだ時の毎度の短絡的思考やめてくれ」
「チッ」
「舌打ちならいくらしても良いから、な?」
何やら諭すような口調に変わるが、それはそれで苛つくぞ。
「まぁ、いい。
お前が全て話しているのかいないのか、まだわからない部分があるのかは知らないが、ひとまずその話は持ち帰る」
「····そうしてくれると有り難い。
それと私も他国の内部事情の全てを分かってるわけじゃない。
特に精霊に関することは曖昧な事も多いが、今話したのが私のわかる範囲での全てだ。
あの王子がやけに焦っているようだから、返事は早めに欲しい」
頷くのを見てやっとギディアスが出て行く。
アリーの闇の精霊の見解といささか食い違いがあるが、ギディアスもまた嘘はついていないと思いたい。
俺は残りの仕事をさっさと終わらせた。
目下の課題は今日こそレイヤードからモフり魔具を奪って天使にモフられる事だと気合いを入れて転移した。
「····仕事中です」
やっぱり来たか。
俺は手を止めずに書類を処理していく。
当然だが、目の前の黒髪碧眼の夢物語に出てきそうな優しげで整った顔した王太子は無視だ。
「つれないなぁ。
せっかくここまで来たのに」
「来なければよろしいかと」
「そういうわけにもいかないだろう?」
「なぜです?」
「アリー嬢の事は君に聞く方がいいから」
ほう、直球か。
「ねえ、久々に可愛い君の妹に会わせてくれないかな」
「可愛い事は全く肯定するばかりですが、嫌です」
すげなく断る。
「ルドルフの時と一緒で、友人宅に行ったら妹と会ったってやつでいいよ」
「俺が王宮で働いている時点で友人としての関係とは言えませんよ。
妹は体調もあまり良くないので嫌です」
「じゃあ私の側近に····」
「あり得ません」
何がじゃあなんだ?
週1で断り続けてもう何年になるんだろうか。
「なら7日前の大会で隣国のゼストゥウェル王子の背後にいた黒い靄について教えて欲しいな」
「黒い靄なんか知りませんよ」
「アリー嬢が知っているはずだよ?
保護者席でそう言ってた」
こいつ、あの距離で俺の天使の唇読んでたのか。
凍らせてやろうか。
「そう睨まないでくれ。
あの王子が会わせろって正式にザルハード国第一王子として書類出してきたんだよ。
これ、その書類ね。
同盟国の留学中の王子は王家が身元預かりだろう?
隣国との関係上正規の手続きできたものをむやみに断るわけにもいかないし、私としては体の弱いアリー嬢を王城に呼ぶのも本当はしのびないんだよ?
それにアリー嬢のことも色々調べてたみたいだし、会わせるにしても先にこちらの口裏は合わせとかないとさ」
やはりあちらはそう出たか。
レイヤードが大会後に学園であのバカ王子からアリーへの訪問の打診があったと聞いている。
断ったらしいが、隣国の王子として正式に手続きを踏むと俺達は予想していた。
持っていた万年筆を置いてため息をついた。
「お前は何を隠している、ギディアス」
「あ、やっぱり気づいた?」
「アリーの体の弱さは周知の事実だ。
本来なら断る口実など俺達はいくらでもできる。
それによってグレインビル家がどうなっても俺達は個々で動くから大して揺らがない。
だがそれでアリーの身が危険に晒されるのも本意ではない。
実際この7日で領内でアリーを探っていた人間の目撃情報と、屋敷へ侵入を試みた形跡があった。
まあ侵入したらしたで捕まえられたし、そちらの方がグレインビル家としては好都合だったが、王家としては侵入を諦めてくれて良かっただろうな」
「へえ、そんな事になってたんだ?」
「知っててここに来ただろう。
そちらが再び何かを探ろうとした事も俺達は気づいている。
侵入者が自国、他国どちらにしても捕らえれば確実に吐かせるから考えて行動しろ。
あと、うちの領でのアリーはかなり人気が高い。
下手な探りを領民に入れるような真似はやめさせておけ」
ギディアスの顔が一瞬強ばる。
かまかけみてただけだが、引っかかったな。
「····すまない。
だが、今はあちらの国も王位継承問題できな臭い。
アリー嬢を下手に巻き込ませない為にも、一度は会って当たり障りなく距離を取ってもらいたいのが私達王家の意向なんだ」
「黒い靄と言っていたが、お前は見えたのか?」
「ああ、見えた。
アリー嬢がその事で靄の主に興味を引かれただけならまだ良い。
たがもし気に入られてその事がこの問題の当事者達に知られるのだけは避けるべきだ」
「お前はその靄が何だか知っているのか?
何故それが見えたらお家騒動に巻き込まれる。
王位継承問題以外の何かもあるんだろう」
ギディアスが一瞬躊躇う。
「答えられないのなら、アリーとの面会は断り、侵入者は未遂であっても吐かせた後で殺す。
今回も未遂とはいえ見逃したわけではない。
不法侵入しようとした者を生かしてやる理由もないし、秘密裏にやるから安心しろ」
「····わかった、降参だ。
あの黒い靄はザルハード王家に伝わる精霊だ。
精霊を従えた聖女によって500年前に建国されたという逸話を聞いたことがないか。
建国当初は王族の大半が精霊を見る事ができ、見える者が王位継承権を持つとされていたが、いつ頃からか見る者が王族に現れなくなった。
だからあの国は事実ではなく逸話として情報を操作した。
だが今は13才の第一王子と11才の第三王子が見えている」
「13才と11才ね」
「ちなみに第二王子はすでに亡くなっている。
アリー嬢と年が近い上にあの靄を見える事によって婚約問題が絡みかねない。
そうでなくても聖女に仕立てて取り込もうとしかねないのがあの国の教会だ。
この国と違ってザルハードの教会は王家に対して影響を持っているだけでなく、過激な思考を持つ連中もいる。
裏では黒い教会とすら言われている。
ちなみに側室だが第三王子の母親が教会と繋がってる」
「なるほど。
最悪あっちの教会潰して王子連中とその仲間達を消してからアリーとこの国を出れば、問題は回避できるな」
「いや、ホントやめてくれ。
グレインビル家ならやりかねないし、できるのは分かってるけど、ホントそれは勘弁して」
「そんなにげっそりすることか?
1番手っ取り早いだろう」
「私達王族もちゃんとアリー嬢守るから、ホントやめてくれ」
「そもそも他人が俺の可愛い天使を守るとか不愉快きわまりない。
やっぱり消す方が万事解決だな」
「頼むから、アリー嬢からんだ時の毎度の短絡的思考やめてくれ」
「チッ」
「舌打ちならいくらしても良いから、な?」
何やら諭すような口調に変わるが、それはそれで苛つくぞ。
「まぁ、いい。
お前が全て話しているのかいないのか、まだわからない部分があるのかは知らないが、ひとまずその話は持ち帰る」
「····そうしてくれると有り難い。
それと私も他国の内部事情の全てを分かってるわけじゃない。
特に精霊に関することは曖昧な事も多いが、今話したのが私のわかる範囲での全てだ。
あの王子がやけに焦っているようだから、返事は早めに欲しい」
頷くのを見てやっとギディアスが出て行く。
アリーの闇の精霊の見解といささか食い違いがあるが、ギディアスもまた嘘はついていないと思いたい。
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