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87.にゃんにゃん語~レイヤードside
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『あにょにぇ、ほんとうにょいもうと、おもわにゃい、いいにょ。
わかってゆにょ。
ぼく、ぶんふしょうおう。
ぼく、にょぞんでにゃい、へいき』
はっきり言って物凄く聞き取りにくかった。
それくらい話すという行為そのものが早い年齢だから仕方ない。
でも頭の中で2才にもならない義妹の言葉を反芻して、意味を理解して、隠していた葛藤を言い当てられたんだと8才になろうかとしている僕は恐くなった。
きっと実の親に捨てられただろう可哀想な義妹。
ずっと死と隣り合わせになりながらも生きようとしている健気な義妹。
魔術師家系の養女にして魔力のない哀れな義妹。
それから、妹と同じように愛してあげなきゃいけない義妹。
わかっているのに、認められない心の醜い義兄。
最初は何も思わなかったんだ。
だから母上が養女にしたいと言った時も素直に頷けた。
アリアチェリーナと名づけたと聞いた時、きっと母上にとって義妹との出会いは必然だったと悟った。
だって物心つく頃から聞かされていたんだ。
『バル、レイ、もしも私の恩人が私の所に来てくれたら····』
そう、昔から繰り返し聞かされていた。
父上も母上と同じく何かを感じたからアリーを養女に迎えるのを許したんだろう。
だけど義妹と過ごす時間と共に、僕以外の家族が義妹を大切にしているのを見る度に、妹の顔がちらついた。
あの子は死んだのに、忘れちゃいけないのに、家族が妹を忘れていくようでつらかった。
その日も膝の上に座らせた義妹を撫でながらそう思っていたんだ。
そうしたら義妹は膝の上で僕の体で掴まり立ちして、僕がするようによしよしと頭を撫でながらそう言ってくれた。
呆然となされるがままを受け入れていたけど、まだ上手くバランスが取れなくて落ちそうになったのを慌てて抱えて膝に座らせ直す。
兄上は近くでマジマジと妹をのぞきこんでいた。
『ちゃりゃ、かあしゃま、ちゃしゅけちゃい。
しんぞう、びょうき。
こにょままは、しょうじょうでちゃりゃ、しにゅ。
ぼく、まりょく、ちゃいりょく、にゃい。
ばりゅとしゅしゃま、れいやあどしゃま、てちゅりゃって』
本当ににゃんにゃん語すぎて今度も何を言ってるのか理解するのに時間がかかった。
兄上は突然の妹のお喋りに「天才だ!」て感動して僕の膝からアリーをかっさらってぐるぐる回してた。
けど、先に内容を理解したのかピタリと動きを止めて妹を両手を伸ばしたまま宙ぶらりんにして凝視してたっけ。
宙ぶらりんのアリーがしばらく目を回してたのは今となっては笑い話だ。
でも直感で生きる兄上はすぐに信じたけど、僕はまだ2才にもならない幼児の言葉に半信半疑でたくさん質問した。
だから義妹の中身は僕達よりずっと大人で、とんでもない知識を持っているってわかった。
にゃんにゃん語で頑張って話してくれたせいか、その晩は熱を出してしまった。
多分、あれは知恵熱だったんじゃないかな。
その夜は申し訳なくて夜通し看病したけど、僕の指を小さい手で握って眠る義妹は素直に可愛いと思った。
ただ、その時の義妹は母上以外の人間に何も期待してなかった事に気づいたのもこの時だった。
母上の夫と息子だから、何かあれば母上が悲しむから、大事にする。
そんなシンプルな考え方しかしてなくて、だからこそ、そもそも自分が家族として受け入れられると期待すらしていなかった。
だから僕が義妹の事で葛藤したり罪悪感を感じたりしなくていいんだと僕が葛藤する度に周りの人が見ていない隙をついてにゃんにゃんと語りかける。
でもそんな事よりも当時の義妹は自分の感情自体がほとんど抜け落ちていて笑わない、怒らない、悲しまない。
何よりも、泣かない。
それが僕には気がかりで、気づけば葛藤なんて忘れて義妹を心配する事が多くなっていった。
母上の事は父上にも事情を話そうと思ったけど、当時は王都魔術師団団長とグレインビル侯爵家当主。
しかもその頃はまだグレインビル領も隣国との小競り合いや魔獣の被害もあって領民の生活も貧しかった。
それにこの頃の義妹は1年の大半を死と隣り合わせで過ごしていたから、不安定な体調に合わせながら母上の為に薬剤や器具を1から作って実験する時間なんて父上にはとても捻出できない。
それに母上にはまだ何の症状も現れてなかったから、申し訳ないけど義妹の気のせいって可能性も考えていた。
ちなみにどうして気づいたか聞くと、ほぼ毎日抱っこされていて時々心音が変わるのと脈の変化に気づいたって。
ね、信憑性に欠けるでしょう。
だから僕達3人で密かに動き始めたんだ。
義妹からはまさかのすでに習得していた魔力コントロールの方法から教えられた。
僕も兄上も同じ年代の中ではそれぞれトップクラスだったにも関わらずだ。
だけど全然ダメだと、グレインビル領は命のやり取りがある土地なのに同じ年代なんてくくりで図に乗るな、魔力を可視化させて針の穴に通せるようになって初めてコントロールできると言えと叱られた。
····にゃんにゃん語で。
叱られながら内容がすぐに入ってこないのが1番やりにくかった。
兄上は····半分感性で生きてる人だからすぐに妹の言葉を理解するようになった。
別に悔しくなんてない。
ないったらない。
ちなみに父上にできるか聞くとその場で可視化して簡単に針穴に通した上にハンカチに月とアリリアの花びらを刺繍して母上とアリーに簡易護符としてプレゼントしていた。
簡易護符をその場で作った事よりも、刺繍が手慣れている父上に愕然とした。
わかってゆにょ。
ぼく、ぶんふしょうおう。
ぼく、にょぞんでにゃい、へいき』
はっきり言って物凄く聞き取りにくかった。
それくらい話すという行為そのものが早い年齢だから仕方ない。
でも頭の中で2才にもならない義妹の言葉を反芻して、意味を理解して、隠していた葛藤を言い当てられたんだと8才になろうかとしている僕は恐くなった。
きっと実の親に捨てられただろう可哀想な義妹。
ずっと死と隣り合わせになりながらも生きようとしている健気な義妹。
魔術師家系の養女にして魔力のない哀れな義妹。
それから、妹と同じように愛してあげなきゃいけない義妹。
わかっているのに、認められない心の醜い義兄。
最初は何も思わなかったんだ。
だから母上が養女にしたいと言った時も素直に頷けた。
アリアチェリーナと名づけたと聞いた時、きっと母上にとって義妹との出会いは必然だったと悟った。
だって物心つく頃から聞かされていたんだ。
『バル、レイ、もしも私の恩人が私の所に来てくれたら····』
そう、昔から繰り返し聞かされていた。
父上も母上と同じく何かを感じたからアリーを養女に迎えるのを許したんだろう。
だけど義妹と過ごす時間と共に、僕以外の家族が義妹を大切にしているのを見る度に、妹の顔がちらついた。
あの子は死んだのに、忘れちゃいけないのに、家族が妹を忘れていくようでつらかった。
その日も膝の上に座らせた義妹を撫でながらそう思っていたんだ。
そうしたら義妹は膝の上で僕の体で掴まり立ちして、僕がするようによしよしと頭を撫でながらそう言ってくれた。
呆然となされるがままを受け入れていたけど、まだ上手くバランスが取れなくて落ちそうになったのを慌てて抱えて膝に座らせ直す。
兄上は近くでマジマジと妹をのぞきこんでいた。
『ちゃりゃ、かあしゃま、ちゃしゅけちゃい。
しんぞう、びょうき。
こにょままは、しょうじょうでちゃりゃ、しにゅ。
ぼく、まりょく、ちゃいりょく、にゃい。
ばりゅとしゅしゃま、れいやあどしゃま、てちゅりゃって』
本当ににゃんにゃん語すぎて今度も何を言ってるのか理解するのに時間がかかった。
兄上は突然の妹のお喋りに「天才だ!」て感動して僕の膝からアリーをかっさらってぐるぐる回してた。
けど、先に内容を理解したのかピタリと動きを止めて妹を両手を伸ばしたまま宙ぶらりんにして凝視してたっけ。
宙ぶらりんのアリーがしばらく目を回してたのは今となっては笑い話だ。
でも直感で生きる兄上はすぐに信じたけど、僕はまだ2才にもならない幼児の言葉に半信半疑でたくさん質問した。
だから義妹の中身は僕達よりずっと大人で、とんでもない知識を持っているってわかった。
にゃんにゃん語で頑張って話してくれたせいか、その晩は熱を出してしまった。
多分、あれは知恵熱だったんじゃないかな。
その夜は申し訳なくて夜通し看病したけど、僕の指を小さい手で握って眠る義妹は素直に可愛いと思った。
ただ、その時の義妹は母上以外の人間に何も期待してなかった事に気づいたのもこの時だった。
母上の夫と息子だから、何かあれば母上が悲しむから、大事にする。
そんなシンプルな考え方しかしてなくて、だからこそ、そもそも自分が家族として受け入れられると期待すらしていなかった。
だから僕が義妹の事で葛藤したり罪悪感を感じたりしなくていいんだと僕が葛藤する度に周りの人が見ていない隙をついてにゃんにゃんと語りかける。
でもそんな事よりも当時の義妹は自分の感情自体がほとんど抜け落ちていて笑わない、怒らない、悲しまない。
何よりも、泣かない。
それが僕には気がかりで、気づけば葛藤なんて忘れて義妹を心配する事が多くなっていった。
母上の事は父上にも事情を話そうと思ったけど、当時は王都魔術師団団長とグレインビル侯爵家当主。
しかもその頃はまだグレインビル領も隣国との小競り合いや魔獣の被害もあって領民の生活も貧しかった。
それにこの頃の義妹は1年の大半を死と隣り合わせで過ごしていたから、不安定な体調に合わせながら母上の為に薬剤や器具を1から作って実験する時間なんて父上にはとても捻出できない。
それに母上にはまだ何の症状も現れてなかったから、申し訳ないけど義妹の気のせいって可能性も考えていた。
ちなみにどうして気づいたか聞くと、ほぼ毎日抱っこされていて時々心音が変わるのと脈の変化に気づいたって。
ね、信憑性に欠けるでしょう。
だから僕達3人で密かに動き始めたんだ。
義妹からはまさかのすでに習得していた魔力コントロールの方法から教えられた。
僕も兄上も同じ年代の中ではそれぞれトップクラスだったにも関わらずだ。
だけど全然ダメだと、グレインビル領は命のやり取りがある土地なのに同じ年代なんてくくりで図に乗るな、魔力を可視化させて針の穴に通せるようになって初めてコントロールできると言えと叱られた。
····にゃんにゃん語で。
叱られながら内容がすぐに入ってこないのが1番やりにくかった。
兄上は····半分感性で生きてる人だからすぐに妹の言葉を理解するようになった。
別に悔しくなんてない。
ないったらない。
ちなみに父上にできるか聞くとその場で可視化して簡単に針穴に通した上にハンカチに月とアリリアの花びらを刺繍して母上とアリーに簡易護符としてプレゼントしていた。
簡易護符をその場で作った事よりも、刺繍が手慣れている父上に愕然とした。
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