88 / 491
5
87.にゃんにゃん語~レイヤードside
しおりを挟む
『あにょにぇ、ほんとうにょいもうと、おもわにゃい、いいにょ。
わかってゆにょ。
ぼく、ぶんふしょうおう。
ぼく、にょぞんでにゃい、へいき』
はっきり言って物凄く聞き取りにくかった。
それくらい話すという行為そのものが早い年齢だから仕方ない。
でも頭の中で2才にもならない義妹の言葉を反芻して、意味を理解して、隠していた葛藤を言い当てられたんだと8才になろうかとしている僕は恐くなった。
きっと実の親に捨てられただろう可哀想な義妹。
ずっと死と隣り合わせになりながらも生きようとしている健気な義妹。
魔術師家系の養女にして魔力のない哀れな義妹。
それから、妹と同じように愛してあげなきゃいけない義妹。
わかっているのに、認められない心の醜い義兄。
最初は何も思わなかったんだ。
だから母上が養女にしたいと言った時も素直に頷けた。
アリアチェリーナと名づけたと聞いた時、きっと母上にとって義妹との出会いは必然だったと悟った。
だって物心つく頃から聞かされていたんだ。
『バル、レイ、もしも私の恩人が私の所に来てくれたら····』
そう、昔から繰り返し聞かされていた。
父上も母上と同じく何かを感じたからアリーを養女に迎えるのを許したんだろう。
だけど義妹と過ごす時間と共に、僕以外の家族が義妹を大切にしているのを見る度に、妹の顔がちらついた。
あの子は死んだのに、忘れちゃいけないのに、家族が妹を忘れていくようでつらかった。
その日も膝の上に座らせた義妹を撫でながらそう思っていたんだ。
そうしたら義妹は膝の上で僕の体で掴まり立ちして、僕がするようによしよしと頭を撫でながらそう言ってくれた。
呆然となされるがままを受け入れていたけど、まだ上手くバランスが取れなくて落ちそうになったのを慌てて抱えて膝に座らせ直す。
兄上は近くでマジマジと妹をのぞきこんでいた。
『ちゃりゃ、かあしゃま、ちゃしゅけちゃい。
しんぞう、びょうき。
こにょままは、しょうじょうでちゃりゃ、しにゅ。
ぼく、まりょく、ちゃいりょく、にゃい。
ばりゅとしゅしゃま、れいやあどしゃま、てちゅりゃって』
本当ににゃんにゃん語すぎて今度も何を言ってるのか理解するのに時間がかかった。
兄上は突然の妹のお喋りに「天才だ!」て感動して僕の膝からアリーをかっさらってぐるぐる回してた。
けど、先に内容を理解したのかピタリと動きを止めて妹を両手を伸ばしたまま宙ぶらりんにして凝視してたっけ。
宙ぶらりんのアリーがしばらく目を回してたのは今となっては笑い話だ。
でも直感で生きる兄上はすぐに信じたけど、僕はまだ2才にもならない幼児の言葉に半信半疑でたくさん質問した。
だから義妹の中身は僕達よりずっと大人で、とんでもない知識を持っているってわかった。
にゃんにゃん語で頑張って話してくれたせいか、その晩は熱を出してしまった。
多分、あれは知恵熱だったんじゃないかな。
その夜は申し訳なくて夜通し看病したけど、僕の指を小さい手で握って眠る義妹は素直に可愛いと思った。
ただ、その時の義妹は母上以外の人間に何も期待してなかった事に気づいたのもこの時だった。
母上の夫と息子だから、何かあれば母上が悲しむから、大事にする。
そんなシンプルな考え方しかしてなくて、だからこそ、そもそも自分が家族として受け入れられると期待すらしていなかった。
だから僕が義妹の事で葛藤したり罪悪感を感じたりしなくていいんだと僕が葛藤する度に周りの人が見ていない隙をついてにゃんにゃんと語りかける。
でもそんな事よりも当時の義妹は自分の感情自体がほとんど抜け落ちていて笑わない、怒らない、悲しまない。
何よりも、泣かない。
それが僕には気がかりで、気づけば葛藤なんて忘れて義妹を心配する事が多くなっていった。
母上の事は父上にも事情を話そうと思ったけど、当時は王都魔術師団団長とグレインビル侯爵家当主。
しかもその頃はまだグレインビル領も隣国との小競り合いや魔獣の被害もあって領民の生活も貧しかった。
それにこの頃の義妹は1年の大半を死と隣り合わせで過ごしていたから、不安定な体調に合わせながら母上の為に薬剤や器具を1から作って実験する時間なんて父上にはとても捻出できない。
それに母上にはまだ何の症状も現れてなかったから、申し訳ないけど義妹の気のせいって可能性も考えていた。
ちなみにどうして気づいたか聞くと、ほぼ毎日抱っこされていて時々心音が変わるのと脈の変化に気づいたって。
ね、信憑性に欠けるでしょう。
だから僕達3人で密かに動き始めたんだ。
義妹からはまさかのすでに習得していた魔力コントロールの方法から教えられた。
僕も兄上も同じ年代の中ではそれぞれトップクラスだったにも関わらずだ。
だけど全然ダメだと、グレインビル領は命のやり取りがある土地なのに同じ年代なんてくくりで図に乗るな、魔力を可視化させて針の穴に通せるようになって初めてコントロールできると言えと叱られた。
····にゃんにゃん語で。
叱られながら内容がすぐに入ってこないのが1番やりにくかった。
兄上は····半分感性で生きてる人だからすぐに妹の言葉を理解するようになった。
別に悔しくなんてない。
ないったらない。
ちなみに父上にできるか聞くとその場で可視化して簡単に針穴に通した上にハンカチに月とアリリアの花びらを刺繍して母上とアリーに簡易護符としてプレゼントしていた。
簡易護符をその場で作った事よりも、刺繍が手慣れている父上に愕然とした。
わかってゆにょ。
ぼく、ぶんふしょうおう。
ぼく、にょぞんでにゃい、へいき』
はっきり言って物凄く聞き取りにくかった。
それくらい話すという行為そのものが早い年齢だから仕方ない。
でも頭の中で2才にもならない義妹の言葉を反芻して、意味を理解して、隠していた葛藤を言い当てられたんだと8才になろうかとしている僕は恐くなった。
きっと実の親に捨てられただろう可哀想な義妹。
ずっと死と隣り合わせになりながらも生きようとしている健気な義妹。
魔術師家系の養女にして魔力のない哀れな義妹。
それから、妹と同じように愛してあげなきゃいけない義妹。
わかっているのに、認められない心の醜い義兄。
最初は何も思わなかったんだ。
だから母上が養女にしたいと言った時も素直に頷けた。
アリアチェリーナと名づけたと聞いた時、きっと母上にとって義妹との出会いは必然だったと悟った。
だって物心つく頃から聞かされていたんだ。
『バル、レイ、もしも私の恩人が私の所に来てくれたら····』
そう、昔から繰り返し聞かされていた。
父上も母上と同じく何かを感じたからアリーを養女に迎えるのを許したんだろう。
だけど義妹と過ごす時間と共に、僕以外の家族が義妹を大切にしているのを見る度に、妹の顔がちらついた。
あの子は死んだのに、忘れちゃいけないのに、家族が妹を忘れていくようでつらかった。
その日も膝の上に座らせた義妹を撫でながらそう思っていたんだ。
そうしたら義妹は膝の上で僕の体で掴まり立ちして、僕がするようによしよしと頭を撫でながらそう言ってくれた。
呆然となされるがままを受け入れていたけど、まだ上手くバランスが取れなくて落ちそうになったのを慌てて抱えて膝に座らせ直す。
兄上は近くでマジマジと妹をのぞきこんでいた。
『ちゃりゃ、かあしゃま、ちゃしゅけちゃい。
しんぞう、びょうき。
こにょままは、しょうじょうでちゃりゃ、しにゅ。
ぼく、まりょく、ちゃいりょく、にゃい。
ばりゅとしゅしゃま、れいやあどしゃま、てちゅりゃって』
本当ににゃんにゃん語すぎて今度も何を言ってるのか理解するのに時間がかかった。
兄上は突然の妹のお喋りに「天才だ!」て感動して僕の膝からアリーをかっさらってぐるぐる回してた。
けど、先に内容を理解したのかピタリと動きを止めて妹を両手を伸ばしたまま宙ぶらりんにして凝視してたっけ。
宙ぶらりんのアリーがしばらく目を回してたのは今となっては笑い話だ。
でも直感で生きる兄上はすぐに信じたけど、僕はまだ2才にもならない幼児の言葉に半信半疑でたくさん質問した。
だから義妹の中身は僕達よりずっと大人で、とんでもない知識を持っているってわかった。
にゃんにゃん語で頑張って話してくれたせいか、その晩は熱を出してしまった。
多分、あれは知恵熱だったんじゃないかな。
その夜は申し訳なくて夜通し看病したけど、僕の指を小さい手で握って眠る義妹は素直に可愛いと思った。
ただ、その時の義妹は母上以外の人間に何も期待してなかった事に気づいたのもこの時だった。
母上の夫と息子だから、何かあれば母上が悲しむから、大事にする。
そんなシンプルな考え方しかしてなくて、だからこそ、そもそも自分が家族として受け入れられると期待すらしていなかった。
だから僕が義妹の事で葛藤したり罪悪感を感じたりしなくていいんだと僕が葛藤する度に周りの人が見ていない隙をついてにゃんにゃんと語りかける。
でもそんな事よりも当時の義妹は自分の感情自体がほとんど抜け落ちていて笑わない、怒らない、悲しまない。
何よりも、泣かない。
それが僕には気がかりで、気づけば葛藤なんて忘れて義妹を心配する事が多くなっていった。
母上の事は父上にも事情を話そうと思ったけど、当時は王都魔術師団団長とグレインビル侯爵家当主。
しかもその頃はまだグレインビル領も隣国との小競り合いや魔獣の被害もあって領民の生活も貧しかった。
それにこの頃の義妹は1年の大半を死と隣り合わせで過ごしていたから、不安定な体調に合わせながら母上の為に薬剤や器具を1から作って実験する時間なんて父上にはとても捻出できない。
それに母上にはまだ何の症状も現れてなかったから、申し訳ないけど義妹の気のせいって可能性も考えていた。
ちなみにどうして気づいたか聞くと、ほぼ毎日抱っこされていて時々心音が変わるのと脈の変化に気づいたって。
ね、信憑性に欠けるでしょう。
だから僕達3人で密かに動き始めたんだ。
義妹からはまさかのすでに習得していた魔力コントロールの方法から教えられた。
僕も兄上も同じ年代の中ではそれぞれトップクラスだったにも関わらずだ。
だけど全然ダメだと、グレインビル領は命のやり取りがある土地なのに同じ年代なんてくくりで図に乗るな、魔力を可視化させて針の穴に通せるようになって初めてコントロールできると言えと叱られた。
····にゃんにゃん語で。
叱られながら内容がすぐに入ってこないのが1番やりにくかった。
兄上は····半分感性で生きてる人だからすぐに妹の言葉を理解するようになった。
別に悔しくなんてない。
ないったらない。
ちなみに父上にできるか聞くとその場で可視化して簡単に針穴に通した上にハンカチに月とアリリアの花びらを刺繍して母上とアリーに簡易護符としてプレゼントしていた。
簡易護符をその場で作った事よりも、刺繍が手慣れている父上に愕然とした。
18
あなたにおすすめの小説
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
※他サイトでも掲載しています
※ちょいちょい手直ししていってます
2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる