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165.チラチラハラハラ~ギディアスside

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「何故白虎しろとらが一緒に周ろうとしてる」
「兄上、まずは凍らせて下さい。
それから雷撃····」
「「「いや、駄目だ!」」」

 再び慌てて王族3人で止めに入る。

 アリーはあれから少しして白虎と呼ばれているアボット商会会長と東のブースから出てきた。
やはり南の屋台や商会ブースを周ってから西の商会へ向かうのだろう····アリーお気に入りの白虎の耳と尻尾を持った会長と共に。

 歩き始めてもあの子が横目でチラチラ見てるのは耳と尻尾だ。
へにゃりと崩れた顔をはっとしてすました顔に整えてはまたへにゃりと崩す百面相をしている。

 今年は知っている耳と尻尾にも触らないと約束したらしく、東のブースの中でも今のところ触れていないようだった。
2年前と違い、私とレイヤードも風を使って盗ちょ····こほん。
耳をそばだてる事はできるようになっている。

 どうでもいいけどコアサ団子が個人的に気になる。
モチモチしてて口当たりがいい、コアサと甘い餡の風味というワードが耳から離れない。
それにミーを泡立てる?
獣人のアボット会長がほうじ茶ではなくミーを褒めていたのがとても気になるんだけど。

 それにしてもあの子の知識は本当に規格外だ。
精霊眼と魔眼の持ち主で人外の者達とただ交流できるから、という理由だけではないと感じている。
もちろん本人やグレインビルの者達の前では納得した風を装ってはいるけれど。

 恐らくただ話しているだけではないんじゃないかな。
話に興味を持てばそこから突っ込んで話を広げて更に見識を深く広くしていき、場合によっては他国の人外の者達とも交流を持って情報を仕入れているとか?
でもそれだけかな?
あの子にはまだ何か秘密があるように感じるんだよね。

 けれどその生まれとグレインビル家に引き取られた事でずっと狙われてきたのもあってか、グレインビル家はあの子に関する事は用心深い。
もちろん本人もだ。

 12才とは思えない程に人も周りもよく見ているし、些細な情報で要点を的確に把握する能力はあっぱれとしか言えない。
あの子が男だったら魔力のあるなしは関係なく側近にできるくらいの知略家だし、器だけなら王妃に匹敵する素養がある。

 流石に王妃は魔力0では務まらないと思うけど、ここ数年でグレインビル家でも隠せなくなったあの子のこの国や他国への貢献具合に国王として可能性を感じた結果が、巡り巡ってあの宰相の頭に繋がったと見ている。

 父上はお茶目な性格だが愚王ではないし、時々あのお茶目を国政に出しても許されるくらいには賢王だし、うまく使い分けているふしもある。
グレインビル侯爵が父上の愛娘へのやらかしにも断絶までしないのは、国王としての素養も影響しているはずだ····多分。

 まあ父上としては釣書の数を増やしてあの子の興味を引けたらラッキー、くらいの軽いノリだった可能性は十分あるけど。

 余談だが宰相の息子の釣書も一緒に送ったのは知らなかったらしく、内密に宰相へ1週間の頭皮ケア禁止を厳命していた。
王太子としての私を証人にして、そんな事でそんな事を厳命するのは今後控えて欲しい。
半分は親友に距離を取られた事への八つ当たりじゃないかな。
何の飛び火かな。

 ただあの子、いや、アリアチェリーナ=が魔眼だけでなく精霊眼まで兼ね備え、光の精霊王のお気に入りだと知られれば話は変わる。
下手をすれば隣国のザルハードどころか他国とも娶り合戦だ。
そうなれば幼いながらに国内外の交易への実績すらも持った今、私の婚約が解消されれば間違いなく私の王妃か側妃にと周りが望みかねない。

 これだけ年が開いてて、赤ん坊の頃から知ってて、バルトス親友がこよなく偏愛もしくは狂愛する天使だ。
正直なところ感覚は妹を通り越して娘に近い。
子供を持った事がないから実際のところはわからないけど。
可愛らしいと思うし、情もある。
あの子が寝込めば心配するし、笑っていれば心も和む。

 が、性的な魅力は感じないんだよね。

 父性ってこんな感じかなあと、ほのぼのしちゃうんだよ。
王妃や側妃なんかにしたら、絶対白い結婚生活にしかならないんだよ。

 それって私もあの子も不幸でしかないでしょ。
もう全力であの子の眼の事は隠すに決まってる。
それを本能的にも察知しているからバルトスだって未だに王宮魔術師団副団長なんかやってくれてて、こうして個人的な交流も許してくれてる····と、思いたい。

 だって義妹天使が関わるとバルトスは冷徹だからね。
私はアリーじゃなくてバルトス親友を側に置きたいんだ。

「兄上も何か言って下さい!」

 おっと、物思いにふけってた。

「ほら、バルトス。
アボット会長はアリーに万が一体調不良が起きた時の為にそれとなく用事を装ってかきいれ時の祭り3日目なのに自分のブースを留守にしてくれてるだろう?
今動けなくするのは得策じゃないよ」
「そうだ、レイ!
少なくともアボット会長へのお触りは我慢できてるし、意識は白虎の耳と尻尾に向いてる内は他の耳と尻尾に触る程の興味を示さないだろう?
このまま泳がせた方がずっといいと思うぞ!」
「あ、そろそろ南の屋台にさしかかったぞ!
バルトス殿、レイヤード殿、南の国々に多いカンガルー属もいるから、珍しい耳と尻尾に釣られないように追いかけた方がいいんじゃないか!」
「行くぞ」
「もちろんです」

 どうやら今回も事なきを得たようで何よりだ。
2国間の王族がこんなにも手を取り合って説得するってなかなかないよ、まったく。

 アリー、お願いだからこの2人の起爆スイッチを押さないでよ?
こんな時に例の留学生達と出くわしたり、万が一、億が一でも絡んだりしないでよ?

 そうこうしていると南の屋台エリアに到着した。
確かにこちらの国にはあまり見ない獣人達がいる。
カンガルー属とコアラ属が多いかな。
確か南の商会の代表がカンガルー属だったよね。

 アリーは早速何かに釣られて話してる。
アボット会長の知り合いみたいだ。
あ、変装について指摘されてショック受けた。
そういうところも可愛らしいんだよね。

 でも絶えずカンガルーと白虎の耳と尻尾をチラチラ見てて、こっちはハラハラするんだけど。
それとなく周りの温度が下がってないかな。
気のせいであって欲しいな。
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