秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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180.狼さんのブラッシング2

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「シル様、ブラシの力加減はいかがでしょう?」
「あ、ああ。
ちょうど良くて気持ちいいが、視線が····いや、気にしないでくれ」

 どこか戸惑った様子のシル様もいいね。
誰かにブラッシングしてもらうって、あんまり無い経験なのかな?
僕もシル様のブラッシングは初めてだしね。

「気持ちいい、だと?」
「バルトス、変な意味じゃないんだから、むしろそこは反応しない方がいいんじゃないかな」
「レイ、シルを射殺すような目で見るのは止めてくれ」
「何言ってるのかな、ルド?
僕はただ羨ましそうに見てるだけだよ?」

 ちらりと僕の頭をなでなでしてる義兄様を見れば、にこりと微笑む。
天使は義兄様の方じゃないかな?
凛々しさと可愛いらしさが混合されたスペシャルスマイルだね。

 僕も思わずにこっとして、なでなでしてくれてる義兄様の手に頭をすりすりしちゃうよ。

「くっ。
俺にも天使のすりすりが必要だ」
「ふふふ、バルトス義兄様も可愛らしいです」
(か、可愛らしい····)

 おくつろぎスポットの闇の精霊さんがひきつったお顔でこちらを見る。
なぜ?

 ····そっか!

 手の平サイズの闇の精霊さんももちろん可愛いよ!
優劣なんてつけてないから安心して!
なんて想いを込めてこくこくと頷いてみせる。
義兄様達も援護射撃とばかりにそっちを見たけど、ビクッとさせてしまったみたい。
義兄様達の可愛いが過ぎたのかな?

 そうして伸ばされたもう1つの手にも、もちろんすりすりだ。

 パチン。

「おい····」
「今はこの形の素晴らしく丸い頭は僕のですよ、兄上」
「ちっ」

 かなり小さい静電気がバルトス義兄様の手をはじいた。
義兄様達ってば僕の頭のマウント合戦するくらい髪の手触りを気に入ってくれてるんだね。

「今のって····」
「相変わらず魔力コントロールは目を見張るものがあるな」

 お、ちゃんと気づいた?
驚くゼスト様に感心するルド様。

 どでかく魔力を消費するような魔法を使える人って、普段から抱える魔力量が多いから逆にさっきみたいな小さな魔法を使うのが難しくなりがちなんだ。

 今のは一歩間違えば僕の頭に静電気が発生して髪が逆立ちかねないし、下手すると小さい落雷に僕の頭が焦がされちゃう。
もちろん僕の髪には何の影響もないし、レイヤード義兄様がそんなことするはずないよ。
本当に小さな静電気をピンポイントで発生させた高難度の魔法だって事が言いたいだけ。
多分静電気の威力も去年のあの浜辺の時より落としてるし、緻密さと正確さが上がってる。

 こういうのを難なくこなせるレイヤード義兄様ってかなり腕利き冒険者でもあり、魔術師でもあるんだよ。
使い所は間違ってるけど、お茶目な義兄様だから仕方ないよね。

 バルトス義兄様もある意味不服そうだけど、ある意味弟の成長に喜んでる····多分。
歯をギリギリしてるけど。

「君達兄弟も相変わらずだね。
それより師匠達に報告しなくていいのかな?」

 多分色々な意味で呆気に取られるゼスト様がギディ様に報告を促されると、ハッとした様子で続きを話し始めた。
それにしてもこんな事で呆気に取られるなんて、まだまだだよね。

 もちろん僕はそれを聞きながら今度はふわふわの魅力がアップした銀灰のふさふさなお尻尾様に敬意をもってもふもふしていく。

 く~、たまんない!

「祭りの後、師匠達と別れてからすぐに私は城へ向かった。
ギディアス殿に報告書の写しと映像を借りてすぐにザルハード国へ一時帰国し、まずは国王陛下と宰相に話をした。
翌日にはネルシス侯爵、ハンソン伯爵を呼び出し、留学してからのこれまでの件と共に祭りでの一件を報告した。
その上で国家間の問題となりつつある事を話して先に動くよう進言したのだ」

 なるほど?
確かにこちらに落ち度がある場合、先手必勝で交渉するのは悪くない手だね。
相手が我に返って何かしら上乗せ請求する前に動けば、少ない損失で誠意を示した事にも繋がるしね。

 さてさて、そろそろシル様のお尻尾様とお別れしようかな。
名残惜しいから最後に念入りにブラッシングしとこう。

「既に友好国であるこの国で何人もの通行人があの3人の暴挙を目撃している。
しかもアボット商会は獣人が多い国である事からザルハード国とは同盟を結びながらも、友好国とまでは言えない程度の交易しかできていないブランドゥール国を拠点にした西の諸国を代表する商会だ。
他国との外交や力関係を考えても当然だが揉み消しだけはさせるわけにはいかなかった」

 て事はやっぱり最初は揉み消そうとしたのかな?
だとしたらバカだよね。

 西の諸国は外交が上手くいくようになって資金的に潤ってるだけじゃないんだよ?
西と南の諸国は各国同士で友好国となってて繋がりが元々強固なんだ。
それもあるのか獣人さんの人口も多いし、アボット商会率いる西の商会のいくつかは今や北と東の諸国とも取り引きをしてる。
あまりに大々的に獣人差別するのは世界の約半分の国を敵に回しかねなくなるんだよ。

 それに当然だけどこの国もそこの差別には賛同しないだろうから、これ以上やり過ぎれば友好国を解消しかねない事態にだってなるんだ。

「まず内々にだが翌日にはアボット商会からも営業妨害と他国での差別発言、並びに懇意にするグレインビル侯爵家を公衆の面前で罵倒した事への抗議文が送られてきた。
ちょうど話し合っていた時だ。
何も音沙汰がないようなら正式な抗議をブランドゥール国を介して送るとも書かれてあった。
それに加えてあの映像もあったからな。
ザルハード国王子と婚約者、側近候補の見苦しいまでの獣人や孤児への差別的言動はザルハード国と言えども品位に欠けると国王陛下も判断された」

 そっかあ。
何があったのか具体的には聞いてなかったけど、ウィンスさんも抗議文送ってたんだね。
やらかしたのがザルハード国の留学生って立場だったから国の外交官か宰相宛にわざと直接送ったんだろうな。
ふふふ、狙いの物は手に入ったのかな?

 なんて思いつつ、お話しの邪魔をしないようにアン様に選手交代をお願いする眼差しを向ける。

 あ、気づいてくれた。

 シル様も僕達のやり取りに気づいて僕の方を振り返って頭をぽんぽんしてくれた。
僕の頭大人気だね。

 もちろんその間はレイヤード義兄様の手を握って静電気のパチパチ攻撃しないようにしておいたよ。
バルトス義兄様が僕の腰に回してる腕もぎゅっとしておこうっと。
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