秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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181.黒豹さんのブラッシング1

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「私が先に留学して特に大きな問題もなく過ごしている事や····」
「大きな問題もなく?」
「あ、いや、その、表向きは、だ」

 ゼスト様の発言にレイヤード義兄様が反応する。
あの大会の時の、闇の精霊さんが消滅しそうになった事を言ってるんだろうね。
精霊さんの消失なんて、そこそこ大きな問題だったはずだよ。

「俺の天使に迷惑かけた自覚はあるんだろうな?」
「も、もちろんだ!」

 バルトス義兄様ってば、妹想いで嬉しいな。
でも気温は下げないでね。

 なんて思ってるともふられ役を交代したアン様がシル様のいた場所に腰かける。
僕は再び立ち上がってアン様の背後に回り、さっと差し出されたブラシとシル様に使っていたブラシを交換する。

 差し出したのは少し前から部屋の角に侍女らしく控えていたニーアだよ。
いつの間にいたのかわからないけど、できる専属侍女がこっちに来たのならそろそろ商会長さん達のお話しも終わりそうなのかな?
僕の試作に付き合ってたニーアが1番作り方を知ってるし、コーヒー作りも上手かったからあっちに残って貰ってたんだ。

「うわあ、このブラシやっぱり気持ち良いね。
去年貰ってたあのブラシを改良したの?」
「はい!
気づいていただけましたか!」
「うん。
ブラシのこしが違う」
「以前はお馬の次女の鬣だけでしたが、長男と長女の夏の生え変わりの硬めの鬣も混ぜてブラシの毛の長さと植毛の際の向きも工夫してみました!」

 そう、これは現在の最高傑作のブラシなのだ!

「そうか、それで····」

 シル様がはっとしたお顔になる。
もちろんシル様のも改良してたブラシだよ。
気づいてないのかと思ってたけど、何かしらの違いは感じてくれてたんだね!

「ふふふ、お2人のお土産の中にも入れておきますね」
「ホント?!
嬉しいな。
毎日使ってたから今のはブラシの毛が少しくたってたんだ。
シルのも同じだったから、2人で市販の探してたけど、なかなかこれっていうのが見つからなくてさ」

 あれ、そんなに気に入ってもらえてたんだ。
シル様もロイヤル達の背後で頷いてる。

「ふふふ、そう言ってもらえて嬉しいです」
「販売はしないの?
他の獣人もたまに貸してあげたら病みつきになってたんだ」
「お馬の鬣なんであまり量産できないんです。
健康状態や過ごし方で鬣の質も微妙に変わるし、これはあくまで私の趣味のようなものなのでそれなりにこだわって作ってるんですよね。
販売するなら富裕層向けのオーダーメイドになると····」
「アリー、今は駄目だよ」
「そうだな。
俺の天使は1度集中して作り始めるとのめり込む。
体力がもっとつかない限りそれは駄目だ」

 僕の真後ろとアン様の隣にいる義兄様達から待ったがかかる。

「ということなんです」

 思わず過保護の義兄様達に苦笑しちゃうけど、もちろんブラシをニーアに預けた僕の黒豹さんのケモ耳をもふり始めた手は止めないよ。

 レイヤード義兄様のなでなでも今は気にしない。

「なるほど。
言ってみただけだし、こうやって時々会う獣人の俺達の事考えて作ってくれるだけで嬉しいから気にしないで」

 あちらでシル様もこくこく頷く。
その度に三角耳も前後に揺れて、いい!

「時々会うと王都のお菓子いただいたり、お耳と尻尾をこうしてもふもふさせていただくお礼です」

 どうせなら手触りの良いもふもふを堪能したいしね。

 にこにこと笑い合う僕達の間で和やかな空気が流れる。

 でも予想通りに邪魔されちゃう。

「すまない、話しを続けさせて欲しい」

 遠慮がちに邪魔するのはもちろんゼスト様だよ。
こっちは無視してくれていいのにね。
仕方ないから頷いておく。

「先に留学して既に数年経過している事、アボット商会会長とグレインビル侯爵家とも多少の顔合わせはできている事で話す機会を持ちやすいだろう私が交渉役として補償や慰謝料の算段をつけるようその場で勅命を受けたのだ。
話し合いの最中、ギディアス殿より問題の3人の留学中止の勧告を非公式だが受けた事も大きかった。
上手く算段をつければ将来的に西諸国との新たな取り引きの権限を一任されるし、結果を出せればさらに他の国々との取り引きの権限を与えられる事となった」

 なるほどね。
ギディ様も後押ししたんだろうね。
アボット商会もそうだけど、どっちも非公式ってあたりに策略感じちゃうね。

 ザルハード国としてはアボット商会にとっての将来的な取り引きのうまみを彼に持たせて非公式の場で手を打たせようとしたのかな?

 甘く考えるなら第3王子は多分ザルハード国内でも問題を起こしてたところに、今回の一件が国王的には止めになって王太子としては見限った、とか。
後見人の面で弱いゼスト様に自力で力をつけさせたい、とか。

 でも単なる口約束では何のカードにもならないよね。
ウィンスさんだってそこを踊らされたりするほどお人好しじゃないはず。

 それにザルハード国の教会はフェル情報ではかなり腐敗してるけど、勢力的には王家と二分してる。
というかザルハード国王自体の発言力ってどうなのかな?
あ、でも今回はゼスト様に現実的に味方して勅命出してるし、多分それなりにある?

 そういえば教会が後ろ楯の第3王子の母はどうしたんだろ?

 まあどっちに転んでもザルハード国王は対面を保てるようにしてる処遇なのには変わりないか。

「次は尻尾ですね」

 そして更に言えばお家騒動なんて僕には関係ない。
 
 うきうきとニーアに預けたブラシで最後に軽く乱れたお髪を整え、今度はアン様の隣に移動してやや斜めに座る。
アン様も僕の方に尻尾様が来るようにちゃんと斜めに座り直してくれたよ。
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