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214.晩餐が終わって3〜ルドルフside
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「それにしても、噂通りのご家族好きな方なのですね」
「アリー嬢か?」
「はい。
レイヤード様も相当なものでしたが、グレインビル嬢も同程度の方のようにお見受けしました」
紅茶を飲みながらジャスも幾らか今日の緊張は解れてきたようだ。
心の妹が家族を絶賛した時の光景を思い出したのだろう。
「ああ。
その通りだろうな」
「そのせいでしょうか?
ご子息のどなた様もご婚約者がいらっしゃらないのは」
「それは····そうかもしれんな。
夫となる者があそこまで妹にかまけるのは心穏やかではいられないだろう」
「いえ、そうではなく····」
「ん?
違うのか?」
少し口ごもるが、どうした?
「グレインビル嬢は血が繋がっておりません。
いずれはどちらかの義兄と婚姻される可能性もあるのでは、と····」
「は?!」
考えた事も無かった話に思わず間抜けな声を出してしまう。
「いえ、何となくそう思っただけです!
ですが前例がないわけではありませんし、優秀であっても魔力の全くない娘は本来なら貴族に嫁ぐ可能性は限りなく低いでしょう?
加えて優秀なご子息はどちらも婚約者はおろか恋人すらもいらっしゃらず、溺愛する異性は血の繋がらないご息女のみ。
となればその可能性も考えられるのではないか、と」
「いや、それは····だが、しかし····」
言われてみれば、その可能性はなくはない。
レイもバルトス殿も特に定めた女性もおらず、俺の心の妹も兄達以外に懐いてはいない。
手続きは煩雑になるが法の上での問題もなく、前例もそれなりにある····。
嘘、だろう?
待て、何故俺は今こんなに動揺しているんだ?!
え?!
レイやバルトス殿とアリー嬢が?!
「ま、まあグレインビル嬢はまだ13才と成人もしていらっしゃらない方ですからね。
アドライド国の貴族男性も20代真ん中あたりまであえて特定のお相手を作らない方も多いようですから、特定の婚約者がいなくとも問題ありませんよね。
それよりも、あの宰相閣下のご令嬢はどうなるのでしょうね?
レイヤード殿にあらかじめ教えていただいた通り、親子の関係は既に破綻していたようですが」
俺の混乱に気づいたからか、ジャスが取り繕うように話題を変える。
そうだよな、まだ俺の心の妹は子供だ。
内面の成熟は随分早い気がするが、体はまだまだ子供だった。
それに体も弱いし、本人も色恋沙汰にはとんと疎そうだから、気にしても仕方ないな。
1度大きく深呼吸をして気を持ち直してから答える。
「どうだろうな。
立場的には宰相の娘だが、それにしては娘に向けるような目や言動ではなかった」
今日初めて挨拶を交わしてからのあの宰相の娘への言動は、むしろ憎々しい感情を感じさせるものばかりだった。
だがジャスは謁見の間で挨拶をした後に通された応接室には、人払いを求められて入ってはいない。
同行を許されたのは護衛のシルだけだった為、あくまで船上でレイの宰相一家の話を共に聞いていただけだ。
「まだザルハード国でぎりぎり子爵令息だった頃です。
父親の金策に付き合わされていた頃に他国である噂を聞きました」
「噂?」
「はい。
クェベル国の元王女は美姫で周りの者にも美しさを求めた。
金遣いも荒くて我儘、気に入った奴隷を侍らすのも趣味で彼らは皆一様に見目が良かった。
どこぞの国の王太子とも密通していたが、それが父王にばれてしまい多額の結納金を持たせて嫁がせようとした。
しかし結局はその国の臣下に嫁いだ」
「····それでは、やはり····」
「この国の追放処分になった元王太子は金髪に茶色の目だったらしいですよ。
ちなみに元王女はクェベル国の王族に多い独特の赤茶色の髪に青緑の目だそうです」
「確かに宰相夫人だな」
「はい。
お茶会で殿下に娘をぐいぐいアピールする様を見て、遠い昔に聞いたその話を思い出しました」
「あれは強烈だった。
それにしても当時はまだ奴隷の規制はなかったのだろうが、時を経ても噂として残るほどの何かがあったのだろうな」
ふと元王太子と重鎮達の奴隷の闇オークションの話が頭を過る。
「今、何を考えたか当てましょうか?」
「やめてくれ」
ジャスのニヤリと笑う黒い笑顔に当てられた事を確信する。
しかしジャスはすぐに疲れたように苦笑した。
「どこの国も色々あるものですね」
「そうだな」
その色々で苦労してきたジャスの声が余計しみじみとしたものに聞こえてしまう。
俺もつられて苦笑した。
その声を聞いていると今日の昼間のエヴィン国王との応接室での話を思い出され、疲労感が増してしまったせいだ。
実はその後、娘とその取り巻きを従えた宰相婦人がこの国の高位貴族の令嬢達とも親交を深めて欲しいと茶会にも招かれたのだ。
今度は宰相夫人の名前で早朝に先ぶれが届き、エヴィン国王と宰相の許可も既に得ていた。
「アリー嬢か?」
「はい。
レイヤード様も相当なものでしたが、グレインビル嬢も同程度の方のようにお見受けしました」
紅茶を飲みながらジャスも幾らか今日の緊張は解れてきたようだ。
心の妹が家族を絶賛した時の光景を思い出したのだろう。
「ああ。
その通りだろうな」
「そのせいでしょうか?
ご子息のどなた様もご婚約者がいらっしゃらないのは」
「それは····そうかもしれんな。
夫となる者があそこまで妹にかまけるのは心穏やかではいられないだろう」
「いえ、そうではなく····」
「ん?
違うのか?」
少し口ごもるが、どうした?
「グレインビル嬢は血が繋がっておりません。
いずれはどちらかの義兄と婚姻される可能性もあるのでは、と····」
「は?!」
考えた事も無かった話に思わず間抜けな声を出してしまう。
「いえ、何となくそう思っただけです!
ですが前例がないわけではありませんし、優秀であっても魔力の全くない娘は本来なら貴族に嫁ぐ可能性は限りなく低いでしょう?
加えて優秀なご子息はどちらも婚約者はおろか恋人すらもいらっしゃらず、溺愛する異性は血の繋がらないご息女のみ。
となればその可能性も考えられるのではないか、と」
「いや、それは····だが、しかし····」
言われてみれば、その可能性はなくはない。
レイもバルトス殿も特に定めた女性もおらず、俺の心の妹も兄達以外に懐いてはいない。
手続きは煩雑になるが法の上での問題もなく、前例もそれなりにある····。
嘘、だろう?
待て、何故俺は今こんなに動揺しているんだ?!
え?!
レイやバルトス殿とアリー嬢が?!
「ま、まあグレインビル嬢はまだ13才と成人もしていらっしゃらない方ですからね。
アドライド国の貴族男性も20代真ん中あたりまであえて特定のお相手を作らない方も多いようですから、特定の婚約者がいなくとも問題ありませんよね。
それよりも、あの宰相閣下のご令嬢はどうなるのでしょうね?
レイヤード殿にあらかじめ教えていただいた通り、親子の関係は既に破綻していたようですが」
俺の混乱に気づいたからか、ジャスが取り繕うように話題を変える。
そうだよな、まだ俺の心の妹は子供だ。
内面の成熟は随分早い気がするが、体はまだまだ子供だった。
それに体も弱いし、本人も色恋沙汰にはとんと疎そうだから、気にしても仕方ないな。
1度大きく深呼吸をして気を持ち直してから答える。
「どうだろうな。
立場的には宰相の娘だが、それにしては娘に向けるような目や言動ではなかった」
今日初めて挨拶を交わしてからのあの宰相の娘への言動は、むしろ憎々しい感情を感じさせるものばかりだった。
だがジャスは謁見の間で挨拶をした後に通された応接室には、人払いを求められて入ってはいない。
同行を許されたのは護衛のシルだけだった為、あくまで船上でレイの宰相一家の話を共に聞いていただけだ。
「まだザルハード国でぎりぎり子爵令息だった頃です。
父親の金策に付き合わされていた頃に他国である噂を聞きました」
「噂?」
「はい。
クェベル国の元王女は美姫で周りの者にも美しさを求めた。
金遣いも荒くて我儘、気に入った奴隷を侍らすのも趣味で彼らは皆一様に見目が良かった。
どこぞの国の王太子とも密通していたが、それが父王にばれてしまい多額の結納金を持たせて嫁がせようとした。
しかし結局はその国の臣下に嫁いだ」
「····それでは、やはり····」
「この国の追放処分になった元王太子は金髪に茶色の目だったらしいですよ。
ちなみに元王女はクェベル国の王族に多い独特の赤茶色の髪に青緑の目だそうです」
「確かに宰相夫人だな」
「はい。
お茶会で殿下に娘をぐいぐいアピールする様を見て、遠い昔に聞いたその話を思い出しました」
「あれは強烈だった。
それにしても当時はまだ奴隷の規制はなかったのだろうが、時を経ても噂として残るほどの何かがあったのだろうな」
ふと元王太子と重鎮達の奴隷の闇オークションの話が頭を過る。
「今、何を考えたか当てましょうか?」
「やめてくれ」
ジャスのニヤリと笑う黒い笑顔に当てられた事を確信する。
しかしジャスはすぐに疲れたように苦笑した。
「どこの国も色々あるものですね」
「そうだな」
その色々で苦労してきたジャスの声が余計しみじみとしたものに聞こえてしまう。
俺もつられて苦笑した。
その声を聞いていると今日の昼間のエヴィン国王との応接室での話を思い出され、疲労感が増してしまったせいだ。
実はその後、娘とその取り巻きを従えた宰相婦人がこの国の高位貴族の令嬢達とも親交を深めて欲しいと茶会にも招かれたのだ。
今度は宰相夫人の名前で早朝に先ぶれが届き、エヴィン国王と宰相の許可も既に得ていた。
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