秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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228.疑問の解消は朗らかさと無縁な話〜ルドルフside

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「その、確認したいのだが、良いだろうか?」
「暇だし可愛いアリーが僕の声をご所望だからね。
好きにすればいいよ」
「かまわないよ、王子」

 一応この中ではそこそこの身分のはずの俺だが、何故かこの2人の方が堂々としているのは気のせいだろうか。

「その、グレインビル嬢は昔拐われて、その時エヴィン国王に見初められたのか?」
「正確には拐われそうになったのを当時のアリーの専属侍女が命と引き換えに防いだんだ」
「そう。
以来グレインビル嬢は私達を嫌っているんだ」

 やはり俺の予想は当たっていたようだ。
後ろの2人は気配を殺そうとしつつも、聞き入っているのは何となく気配で察する。
特にジャスは殺しきれていないから間違いない。

「大公も共に誘拐を?」
「いや、私は弟に理不尽な要求ばかりをする国王や王太子、その重鎮達を諌めずに捨て置いた卑怯者だ。
まあ正確には弟が王都へ帰ってこれるよう王子としての下地固めをしてたんだけど、それはフロルエラ領をどうにかして良くしようとしてたわけではないからね。
あくまで誰かと領主を交代させようとしていただけだ。
あの時のフロルエラ領は飢饉だけじゃなく、隣国のナビイマリ国の流民からもたらされた何かしらの伝染病の驚異に晒されていてね。
普段から国の援助と引き換えにグレインビル領を制圧しろって命令を出されていたんだけど、更にあの時は病の疑いのある者を見つけ次第フロルエラ領へ移送させるし、領も封鎖されて援助もしなくてね。
領民は毎日何かしらで死んでいって国への反発する力すら無くしてる有り様で末期症状だし、領主としてもどうしようもないところまで追い詰められていたんだ」

 確か双頭の獅子はその正義感で父である国王にたてつき、兄である王太子にも色々とはめられたんだったか。
大昔に双子が凶兆とされていたのを持ち出して弟王子だったエヴィン国王を辺境に追いやったのは有名な話だ。

「私も当時は王子としての予算や個人資産を弟の援助に回し切っていて余力もなくてね。
その上、王達を自分と弟の保身の為に諌める事も諦めていた。
当時の私はただ弟の安全の確保の為に辺境から呼び戻そうとしかしていなかったんだよ。
だからグレインビル嬢からすれば、先代国王や当時の重鎮達と同じ腐った人間の1人でしかないんだ」

 大公は過去の自分を恥じるかのように自嘲する。

「それで何故グレインビル嬢を拐おうとしたのだ?
生死の境を彷徨ったのはそのせいか?」
「先代国王は昔から煮え湯を飲ませてきたグレインビル領主を特に目の敵にしていてね。
領主が魔力のない病弱な子供を養子にして大事にしているのを聞きつけて興味を持ったらしい。
拐って身代金を要求したら帰さずに奴隷か実験材料用に売り飛ばそうとしてたんだ」
「なんだと?!
エヴィン国王は知ってて拐おうとしたのか?!」

 思わず声を荒らげて立ち上がる。

「····んぅ」

 俺の声に心の妹が可愛くくぐもった声を出すと、レイが優しい手つきで小さな頭を撫でて華奢な背中をトントンしてやれば、胸に頬をすり寄せて再び小さな寝息を立て始める。

「落ち着きなよ、

 レイはわざと俺の身分を口に出して冷静にさせる。

 わかっている。

 いくら好きに話そうと言っても、ここは他国で俺は親善の為にいるのだ。

 だが、アリー嬢は俺の心の妹だ。
聞き捨てならないに決まっている。

「さすがに奴隷や実験材料用にさせるつもりは弟にも無かったよ。
あくまで身代金と引き換えにして幾らかをちょろまかした金を国に渡し、援助をさせるのが目的だったんだ。
あの時のフロルエラ領は金より食料と医療がひっ迫してた」

 その言葉にひとまずは溜飲を下げる····努力はする。

「私達に向けて放たれた刺客というのは?」

 心の妹はまだ夢に戻りきれないのか、時々身じろぎしてはレイが背中をトントンとしてやっている。

 もしかしたら俺のささやかな殺気を感じているのだろうか。

 ジャスは少し鼻息が荒いぞ。
そういえばジャスからすれば心の妹は自分達兄妹の恩人だし、あの晩餐会でも随分打ち解けていたからな。

 シルは目を細めるくらいはしてそうだが、護衛に徹しているようだ。
そういえば、そろそろ他に連れて来た数名の護衛達とは交代の時間ではなかったか?
何をしているのだろうか。

 俺の知らない所でアドライド国から何かしらの命令を受けているような気がしないでもない。

「先代国王、つまり、私達の父親が向けた刺客だよ。
グレインビル嬢の誘拐に失敗した弟は起死回生を図ってね。
伝染病の防ぎ方と治療法を見つけて隣国と協定を結び、当時の重鎮や王太子の不正を暴いて先代国王に処分させて王都へ返り咲いた。
といっても領主と兼任はしてたけどね。
だからこそ父は驚異に感じたんだろう。
辺境の地だからこそ領主への軍事権が与えられていたんだから」

 父親が息子を恐れて刺客を向ける、か。
血生臭い王族や上位の貴族には馴染みのある話だ。

 特に王政が破綻していたり、戦乱の時代にはよくあった事は歴史が証明している。

 恐らくこの兄王子にも刺客は向けられていたはずだ。
その直後に隣国の王女と婚約を結んで隣国の後ろ盾を得た。

「でも全員を生け捕りにしてくれたからね。
先代国王を牽制して弟を立太子させるのに役立った」
「牽制、ねえ。
脅したの間違いじゃない?
国力、というよりも王の権威が落ちつつあるところに伝染病でまいりそうになった隣国を救った恩人王子達を害そうとしたんだ。
どうとでも使えるよね」

 レイが妹とは真逆の冷めた目で大公を見る。

「ま、否定はしないよ。
でもそれよりも普通に考えて国王が差し向ける程の実力を持った刺客をグレインビル家の使が生け捕りにするんだよ?
恐ろし過ぎない?
しかもある意味私達に協力してくれたパフォーマンスにもなるっていうオマケ付きだ。
私達からすれば嬉しい誤算だったよ」
「あえてそれを狙って来た癖に、よく言うよ。
心理的に君達が庇護を受けたような態度を取ったんじゃないの」

 相変わらず大公は朗らかだが、レイの反応はやはり冷たいが、グレインビル領主一家としてはそちらの方が都合が良かったんじゃないだろうか。

「倒れたというのは?
話の流れでは、内々に我が国にグレインビル侯爵家令嬢との婚約の打診をするのと同時にグレインビル家へも大公が打診した時のようだが?」
「そうなんだ。
元々大人になるにつれて心臓に痛みが走るようになってね。
徐々に悪くなっているんだけど、ここ何年かで悪化してる。
恐らくもうそんなに長くは生きられないだろうね」
「それは····さすがに俺が聞いても良いのか?」

 朗らかさとは無縁の内容だし、明け透けに話し過ぎじゃないのか?
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