秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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237.反逆者達の奇襲〜エヴィンside

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「陛下!」

 側近のヒルシュが鬼気迫る顔つきで飛び込んできて、あまりの惨状に絶句する。

 そりゃそうだろうな。

 部屋に仕掛てあった魔法や魔具は完全に壊滅状態だ。

 上を見上げる。

 この最北の国に相応しい豪雪を物ともしない頑丈な城の天井が抉れていた。

 部屋を見回す。

 いたる所に焼け焦げたような黒い煤がついちまってる。
それに壁にはめ込んでいた硝子ブロックも割れちまった。

 俺の愛しい化け物が国の職人達と試行錯誤しながら作ったお試し品という名の贈り物で、部屋の明かり取り用にしてたんだがな。

 そのどれもが轟音と共に俺を中心にして四方に走った雷の衝撃によるものだ。
おかげで現在進行形で体中に静電気が走っていて、動くとパチパチ鳴るくらいには地味に痛い。

 化け物の義兄に渡されたあのネーミングセンス0の魔具のせいだ。

 一応ここはこの国の国王である俺の居室。
つまり王城でも魔法や造りにかなりの強度をもたせた部屋なんだが・・・・これはさっさと補修しないと豪雪も含めて駄目になるやつだな。

 部屋を見回せば死屍累々に倒れる数十もの刺客達。
ぎりぎり生きてやがる。

 さすがにこの人数を生かしながら無効化すんのはかなり難しかった。
当然俺自身が今みたいに無傷ではいられなかっただろう。

 助かりはした。

 したんだが・・・・それにしたってなかなかの惨状だ。
それにその気がなかったのはわかっているが、あの化け物が初めてくれた硝子ブロック贈り物が割れてしまったのが地味に痛い。

 この部屋に続く回廊の方には俺と護衛達で切り捨てた刺客達が転がってるはずだが、果たしてどれくらい生きているだろうか。

 いや、刺客じゃねえな。

 彼奴らは何かしらの自己都合的な正義を抱えて謀反を起こした反逆者達だ。

 そんな反逆者達は夜明け前、突然に王の居室に続く城の回廊に現れた。

 親善外交の為に我が国に訪れたアドライド国第2王子達との内々の晩餐で、新たに追加された執務を終わらせた後の事だ。

 新たに追加された執務とはもちろん戸籍上では従妹であり、血縁上では姪にあたる愚かなコンプシャー嬢のやらかしに起因する。

 それを側近であるヒルシュや姪の戸籍上の父親である宰相と共に終わらせ、これまでに手に入れていた罪状や証拠と共に処罰を決めた。

 だが最低でも元王女にして宰相夫人が何らかの動きを見せるのは間違いないと踏んでいた。
昔から娘に執着しているから貴人用の牢とはいえ、娘が投獄されたとあれば騒ぎ立てないはずがない。

 特に明日には諸々の罪状を突きつけ、何らかの沙汰を言い渡すとわざと夫である宰相に伝えさせている。
その内の1つは国家転覆罪にもなりかねないと、かなり誇張させておいた。

 そのまま血縁上の父親と接触してくれれば目論見通りとなるだろうし、焦って実の父親共々動いてくれればこちらの思うつぼだ。

 ただでさえ姪の血縁上の父親は元王太子とはいえ罪人として広く周知し、国からの追放処分を受けている。
この上娘までもが罪人として処罰されれば、王位継承の正当性を主張できなくなるだろう。

 元王太子だけなら冤罪だったと偽証して武力的解決も視野に入れていただろうが、此度の件は有耶無耶にできない。

 各方面に影響力を持つアドライド国の王子と、同国の侯爵令嬢への暴挙だからだ。

 当然この件で処罰を正式決定すれば、無かった事にも冤罪にもできなくなる。

 宰相もこれからしばらくは城に留まらせる事にした。
夫人の何らかの行動を誘う為に、あえて接触しないのが狙いの1つだ。

 実はこれまで宰相は完全に俺達側の人間というわけじゃなかった。

 それは彼が王位継承権持ちだった事よりも、夫人との婚姻に際してこの国に大きな憎しみを持っていた事に起因する。

 宰相夫婦の婚姻は王女だった夫人が当時の王太子を見初め、彼女を溺愛する父親であり先々代のクェベル国王が金に物を言わせて嫁がせようとしたのが始まりだ。

 既に王太子は婚姻間近で諸国にも周知していた。
だから当時の国王達は交渉し、国1番の眉目秀麗で婚姻していない公爵家の令息、後の宰相を差し出した。

 代わりに王女は好きに登城し、仮に子ができても夫となる宰相は決して子には干渉しないというあり得ない誓約をそれぞれの国の国王達の間で交わし、宰相は相思相愛だった婚約者との縁を解消させられて王女を娶った。

 これが表向きの話だ。
もちろん全てが嘘ではないが、内実はかなり違う。

 王女は国同士が交流する場で当時公爵令息だった見目麗しい宰相を見初め、彼侍らせたがった。
ある意味では一目惚れだ。

 しかし宰相は婚約者を愛するが故に拒否し続けた。
父親である公爵家当主も息子が望まぬならと同じく拒否した。
臣下ではあるが、当主もまた王位継承権を持つ1人であり、何より金欲しさに非人道的な押しつけをしているのは当時の国王達だ。
無理強いもできなかった。

 ところが業を煮やした元王女がある城の夜会で元王太子と共謀し、卑劣にも宰相の婚約者を秘密裏に襲わせて辱めたのだ。
その後はその事実を使って婚約者を追い詰めていった。

 婚約者の生家は立場が弱く、何よりも奥ゆかしい貴族令嬢であった彼女は家族にも相談できなかった。
結果、1人でその現実を隠して苦しんだ末に自死した。

 宰相が全てを知ったのはその後。
死の前日に婚約者として宰相の部屋を訪れ、こっそり隠した遺書で知ったらしい。

 しかもそのタイミングが最悪だ。

 婚約者の葬儀を全て終え、元王女との婚姻を王家が周知した日だった。
 
 そしてその日、宰相は当時の国王や重鎮達が彼らの犯した罪を黙認していた事も知った。

 俺とラスティンは恥ずかしい事にその頃はまだ成人前の何も知らない少年王子で、のほほんと生きていた時だった。
宰相からすれば俺達も同罪だったのは言うまでもない。
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