秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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284.可愛すぎてうちの子、もう天使だろう〜ヘルトside

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「父上、大公と話すなら僕が可愛いアリーを抱っこしとくけど?」
「ふっ、気にするな。
長らく離れていた可愛い私の天使な娘がしがみついているのに、手放すような非道な父親になるはずがない。
レイヤードも久々だ。
私の片膝は空いているよ」
「遠慮しておきます」

 椅子に腰かけ、やっと手元に戻ってきた可愛い天使を撫でていた手を広げて迎えようとしたが、息子はつれないな。
まあ男の子だから仕方ないか。

 そう思って膝に乗せているうちの可愛い娘の背を再び幼子にするようにぽんぽんとしてやる。

 久々の再会と迫る小さい害獣を前に慌てて抱き上げると、驚いた顔はしつつもすぐに抱きついてきた。
その後は顔を上げずにずっとしがみついていたが、感極まって泣いていたのがバレないようにする為だったのだろう。

 いつも飄々として、にこにこと微笑んでいた娘がホームシックでずっと感情が不安定だと息子達からは聞いていた。
本当だったらしい。

 必死に引っついてくる娘が可愛すぎる。
うちの子、天使にしか見えない。

 今はこの国の王城からの移動もあってか私の膝の上で今はぐっすりと夢の中だ。

 あどけない顔で眠る娘が可愛すぎる。
うちの子、天使にしか見えない。

 会っていない間にほんの少し背が伸びたような気がしないでもないが、相変わらず同じ年頃の令嬢達よりも小さい。

 幼子のような娘が可愛すぎる。
うちの子、もう天使だろう。

 今も一般的には虚弱体質だが、昔は今とは比べ物にならないほど弱くてまともに食べ物を摂取できなかったせいもあるだろう。
それに····。

「痩せたな」

 ぽつりと洩らす。

「すみません、父上」

 これには責任を感じたのか可愛い息子も顔を曇らせた。

 そんなつもりはなかったがこの国に行かせる時、くれぐれも妹の体調と行動に気をつけるようにと言ってあった手前、責めているように思われたかもしれない。

「お前が悪いわけではないさ。
だが精進はしなさい。
ただ、拐われて怪我をした責任はこの国にある。
だろう?」

 目の前に座るこのヒュイルグ国王の弟にして、先代の国王の時代には長らくグレインビル領に小競り合いを仕掛けていた隣国の領の領主に問いかける。

 もちろん当時の領主は彼ではない。
今のこの国の国王エヴィン=ヒュイルグだ。

 私の可愛い娘の専属侍女を死に追いやっておきながら、変態ロリコンとなってこの子が3歳の頃から事ある毎に求婚し、私もまだ見せてもらっていないムササビのいたいけな体と裸で抱き合ったなどと。

 心底腹立たしい男だ。

 国同士の内情など無視して、あいつが辺境領主だった時にさっさと殺しておけば良かった。

「責任を持ってお預りすると約束して令嬢を招いたのに、言い訳のしようもない。
その通りだ。
グレインビル侯爵閣下、申し訳なかった」

 大公は素直に頭を下げる。
隣で座る夫人もまた同様に。

 娘を狙う小さな害獣は妹と別室にいる。

「それで?」
「まずは私が直接令嬢をそちらの領まで送れなかった事も合わせて謝罪する。
そして何より、令嬢のお陰でこうして妻と子供達に再び会えた事に心から感謝する」

 再び大公夫妻は頭を垂れた。

 それはどちらでも構わない。
可愛い娘を直接迎えに行くと言ったのは私だし、心臓を手術したいと言った娘の意志を後押ししたのも私だ。

『父様、ごめんなさい。
母様と大公は多分同じ病だ。
僕は母様をあの時助けられていないのに、大嫌いな大公を助けようとしてる。
····助けても、いい?』

 この国に行ってから誘拐されて倒れている間を除いて毎日通信はしていた。

 レイヤードからは日々報告を受けていたが、流石に戻って来た時の怪我の状況には気が気ではなかった。

 あの狸が宰相と転移して押しかけて来てまで直接泣きついて来なければ····。
奴らの頭を燃やして禿げ上がらせてもまだ足りない。

 だが····まあいい。
結局荒療治は成功したのだから。

 目覚めてすぐだっただろうに、可愛くも天使な娘は掠れた声で遠慮がちにそう聞いてきた。

 やろうと思えばとうにこの子は助けられていたのに、わざと助けなかったのは様々な葛藤があったからだ。

『どうして!
僕だけが助けられたかもしれないのに!
方法を知ってるのに!
この世界じゃなければ!
昔みたいな魔力があれば!
今の僕には助けられない!
探してもアレがどこにあるかわからない!
前も今も初めて僕にお母さんをしてくれた人なのに!
どうして!』

 ミレーネの死を前にした、あの時の娘の慟哭を思い出す。
恐らくアレに成り代わるのがあの懐中時計だったのだろうとは容易に想像がつく。

 この子があの時血の繋がらないミレーネ母親の為にどれほど身を粉にして動いていたかは既にわかっている。

 そしてそれ故私に許可を求めるのかも。

『アリアチェリーナ。
私とミレーネの可愛い娘。
お前が母親を助けようとずっと動いていたのを知っているよ。
私が彼女を諦めても、お前は最後まで諦めようとしなかった。
お前が今でも心から助けたいのが、助けたかったのがミレーネなのだとわかっている。
お前の体が問題ないのなら、助けてあげるといい』

 本心では、目の前の大公などどうでもいい。
もしそのせいで娘の健康が損なわれるならむしろ大公が死ねとしか思わない。

 しかし好きにしていいとは言わず、あえて助けてあげるといいと告げた。

 大公は娘のかつての専属侍女だったココの死に関わる者の1人だ。
まさかあの成人の儀でミレーネとバルトスを連れて王城に参列している間にそんな事になるとは思ってすらいなかった。

 自分を間者だと本人すらも忘れる暗示をかけ、長い時間をかけて使用人に紛れさせていたなどと。

 当時はアリアチェリーナをまだ実娘というよりは義娘という感覚だったにしても、不覚を取ったと今でも悔やむ。
もちろんもう1人の愛娘であるルナと比べた事は1度としてないが。




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