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333.パンの秘密と生まないの泉
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「うちの商品にもセウユとアジソみたいな発酵食品があるからね」
ドヤ顔な東の商会長のカイヤさん。
彼女の商会では醤油や味噌みたいな発酵食品も多く扱ってるから、当然だね。
まあそんなこんなでパンならまだしも、酵素ジュースを商品化するとなるとこの世界の技術力では品質管理が難しいんだ。
出来上がってから商品を買ってもらう間も発酵していくから、下手をするとお酒になっちゃうし、お酒になると販売するのに各国それぞれの法律に引っかかる事もあるだろうし、商人達の縄張り争いにもなりかねないもの。
この世界の冷蔵庫普及率がまだとっても低い分、管理はあっちの世界より難しいよ。
僕が自宅で消費したり、おすそ分けする程度なら自己責任でいいんだけどね。
うちにはレイヤード義兄様という天才魔具職人がいるから、冷蔵庫も冷凍庫も保冷用クーラーボックスも魔法瓶も常備してるし。
「それじゃあ、この果実水を小麦に混ぜたらあのパンができるってこと?」
「そうだよ、従兄様。
でも混ぜればすぐにできるわけじゃないんだけどね」
基本的にパンは2回発酵しなきゃいけないし、天然酵母はあちらの世界で一般的に使用されてるドライイーストみたいに膨らませるのに特化したイースト菌の寄せ集めじゃないから、その時の温度や湿度で発酵時間が変わっちゃう。
そういう意味ではうちの邸の料理人さん達こそこの世界ではパン職人のマスターレベルなんじゃないかな。
「パンと果実水の関係はわかったが、それならあの透明な水もそうなのか?」
王子の質問ににんまりと笑ってしまう。
あ、ちょっとテンションが上がったぞ。
「ふっふっふっ。
良い質問ですね、王子。
この水が本当の意味での本日の目玉です!」
まだ少し残っていた炭酸水の入ったコップを持ってドヤ、と前に突き出してえっへんと胸を張る。
コップがチャプンと揺れるけど、もちろん残りは少ないから溢れない。
僕のお顔はもちろんドヤ顔だよ。
だってこの世界の炭酸水を発表したのは僕が初めてのはずだもん。
「あらあら」
「楽しそうだね、アリー嬢」
何だか商会長さん達が微笑ましそうに僕を見てるね。
でもその目はギラギラだ。
『アリーのえっへん可愛いね。
ルドが見たら喜ぶ?』
「恐らく悶えるな」
どうしてルドルフ王子が出てくるんだろう?
喜んだり悶えたり、忙しいね?
この2人も微笑ましそうな目で僕を見てる。
「アリーがやけに得意気だ。
もしかして····あ、何か嫌な予感····」
従兄様だけ何だか不安そう?
どうしてだろう?
「失礼します。
お嬢様、こちらを」
そう言ったセバスチャンが僕の手からそっと受け取ったコップを置いてお膝に膝掛けを、ニーアが無言でさっと僕の肩にショールをかける。
「ありがとう?」
寒くないんだけど、どうしたのかな?
「アリー、少し落ち着いて話してくれるかい?
ね、お願い」
僕の隣の従兄様が僕の頭を優しく撫でて、あざとい角度で僕を見る。
くっ、義母様のお顔!
でも何だか心配そう?
僕、そんなに興奮してたのかな?
「アリー、私も後で可愛らしい頭を撫でさせてちょうだいね。
それからこの透明な弾けるお水、何か教えてくれる?」
ジェン様が和やかに話を元に戻す。
さすがスーパーモデル。
自分の欲求を伝えつつ、流れるように話を戻した。
「もちろん!
ファムント領のもう1つの源泉の近くの古井戸のお水です。
私のできる専属侍女、ニーアが汲んできてくれたんですよ」
そう、僕は事前にもう1つの源泉の情報を集めてたんだ。
「もう1つのって、源泉は1つよ?」
「いいえ、実はもう1つあったんです。
生まないの泉って言ったらわかりますか?」
「もしかしてあの湧き水の事?!
でもあの泉は冷たいし、独特の臭いがもっと強いわ」
ジェン様が驚くのも無理はない。
「アリーちゃん、生まないの泉って?」
「んふふ、カイヤさん、よくぞ聞いてくれました!
実はファムント領には火口付近の源泉の他に、もう1つの源泉があるんです!
ちょうどこちらの領の隣国ザルハード国側の山に温泉、二山越えた反対のお隣の領の山に生まずの泉と呼ばれる冷泉が湧いてます」
「冷泉。
そうか、だから把握してなかったんだね!」
「はい。
恐らくジェン様はじめ、この領の人達は臭いのある味もいまいちで生き物が住みつかない、何も生みださない、そこの地元民がこっそり知ってる程度の使えない小さい泉だと認識してたんだと思います」
「冷泉にはよくある話だね」
「でもアリーが今出してくれたこの弾けるお水からはあの泉のような香りがないわ」
「いえ。
注意して飲めば実はほのかには香ってるってわかるんです。
でも皆さんは先に果実水の方を飲まれたのと、アリリアの果汁を少し絞って入れていたので、香りがわかりにくくなってるだけです」
目配せすれば、うちの執事長とできる専属侍女がピッチャーに入れた常温で何の細工もしていない炭酸水をジェン様の空になったコップから注いでいく。
「言われてみれば、本当ね。
しかもこの香りは温泉と同じ・・・・」
「でも温泉の水よりよっぽど飲みやすい。
え、何でだろ?」
僕にとっては本日の主役のジェン様が真っ先に口をつけて感じたままに話せば、従兄様も驚きを口する。
ふふふ、他の人達もひとしきり口にして驚いてくれた。
でもカイヤさんは温泉に馴染みのある国の人だけあって、謎は解けてるみたいだね。
ドヤ顔な東の商会長のカイヤさん。
彼女の商会では醤油や味噌みたいな発酵食品も多く扱ってるから、当然だね。
まあそんなこんなでパンならまだしも、酵素ジュースを商品化するとなるとこの世界の技術力では品質管理が難しいんだ。
出来上がってから商品を買ってもらう間も発酵していくから、下手をするとお酒になっちゃうし、お酒になると販売するのに各国それぞれの法律に引っかかる事もあるだろうし、商人達の縄張り争いにもなりかねないもの。
この世界の冷蔵庫普及率がまだとっても低い分、管理はあっちの世界より難しいよ。
僕が自宅で消費したり、おすそ分けする程度なら自己責任でいいんだけどね。
うちにはレイヤード義兄様という天才魔具職人がいるから、冷蔵庫も冷凍庫も保冷用クーラーボックスも魔法瓶も常備してるし。
「それじゃあ、この果実水を小麦に混ぜたらあのパンができるってこと?」
「そうだよ、従兄様。
でも混ぜればすぐにできるわけじゃないんだけどね」
基本的にパンは2回発酵しなきゃいけないし、天然酵母はあちらの世界で一般的に使用されてるドライイーストみたいに膨らませるのに特化したイースト菌の寄せ集めじゃないから、その時の温度や湿度で発酵時間が変わっちゃう。
そういう意味ではうちの邸の料理人さん達こそこの世界ではパン職人のマスターレベルなんじゃないかな。
「パンと果実水の関係はわかったが、それならあの透明な水もそうなのか?」
王子の質問ににんまりと笑ってしまう。
あ、ちょっとテンションが上がったぞ。
「ふっふっふっ。
良い質問ですね、王子。
この水が本当の意味での本日の目玉です!」
まだ少し残っていた炭酸水の入ったコップを持ってドヤ、と前に突き出してえっへんと胸を張る。
コップがチャプンと揺れるけど、もちろん残りは少ないから溢れない。
僕のお顔はもちろんドヤ顔だよ。
だってこの世界の炭酸水を発表したのは僕が初めてのはずだもん。
「あらあら」
「楽しそうだね、アリー嬢」
何だか商会長さん達が微笑ましそうに僕を見てるね。
でもその目はギラギラだ。
『アリーのえっへん可愛いね。
ルドが見たら喜ぶ?』
「恐らく悶えるな」
どうしてルドルフ王子が出てくるんだろう?
喜んだり悶えたり、忙しいね?
この2人も微笑ましそうな目で僕を見てる。
「アリーがやけに得意気だ。
もしかして····あ、何か嫌な予感····」
従兄様だけ何だか不安そう?
どうしてだろう?
「失礼します。
お嬢様、こちらを」
そう言ったセバスチャンが僕の手からそっと受け取ったコップを置いてお膝に膝掛けを、ニーアが無言でさっと僕の肩にショールをかける。
「ありがとう?」
寒くないんだけど、どうしたのかな?
「アリー、少し落ち着いて話してくれるかい?
ね、お願い」
僕の隣の従兄様が僕の頭を優しく撫でて、あざとい角度で僕を見る。
くっ、義母様のお顔!
でも何だか心配そう?
僕、そんなに興奮してたのかな?
「アリー、私も後で可愛らしい頭を撫でさせてちょうだいね。
それからこの透明な弾けるお水、何か教えてくれる?」
ジェン様が和やかに話を元に戻す。
さすがスーパーモデル。
自分の欲求を伝えつつ、流れるように話を戻した。
「もちろん!
ファムント領のもう1つの源泉の近くの古井戸のお水です。
私のできる専属侍女、ニーアが汲んできてくれたんですよ」
そう、僕は事前にもう1つの源泉の情報を集めてたんだ。
「もう1つのって、源泉は1つよ?」
「いいえ、実はもう1つあったんです。
生まないの泉って言ったらわかりますか?」
「もしかしてあの湧き水の事?!
でもあの泉は冷たいし、独特の臭いがもっと強いわ」
ジェン様が驚くのも無理はない。
「アリーちゃん、生まないの泉って?」
「んふふ、カイヤさん、よくぞ聞いてくれました!
実はファムント領には火口付近の源泉の他に、もう1つの源泉があるんです!
ちょうどこちらの領の隣国ザルハード国側の山に温泉、二山越えた反対のお隣の領の山に生まずの泉と呼ばれる冷泉が湧いてます」
「冷泉。
そうか、だから把握してなかったんだね!」
「はい。
恐らくジェン様はじめ、この領の人達は臭いのある味もいまいちで生き物が住みつかない、何も生みださない、そこの地元民がこっそり知ってる程度の使えない小さい泉だと認識してたんだと思います」
「冷泉にはよくある話だね」
「でもアリーが今出してくれたこの弾けるお水からはあの泉のような香りがないわ」
「いえ。
注意して飲めば実はほのかには香ってるってわかるんです。
でも皆さんは先に果実水の方を飲まれたのと、アリリアの果汁を少し絞って入れていたので、香りがわかりにくくなってるだけです」
目配せすれば、うちの執事長とできる専属侍女がピッチャーに入れた常温で何の細工もしていない炭酸水をジェン様の空になったコップから注いでいく。
「言われてみれば、本当ね。
しかもこの香りは温泉と同じ・・・・」
「でも温泉の水よりよっぽど飲みやすい。
え、何でだろ?」
僕にとっては本日の主役のジェン様が真っ先に口をつけて感じたままに話せば、従兄様も驚きを口する。
ふふふ、他の人達もひとしきり口にして驚いてくれた。
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