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334.臭い泉と好奇心旺盛な義母様情報
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「冷泉····そんなものがうちの領にあったの····お金をドブに捨てそうになっていたなんて····不覚」
あ、あれ?
ジェン様が落ち込んでる?!
ジェン様は握りしめた両手をテーブルの上にそれぞれ置いてうつむきがちにぶつぶつ言ってる。
ちょっと怖い。
「えっと、確かに妙な臭いがして生き物が住みつかない小さな泉なんて使い道のない沼みたいなものです。
温泉と同じ効果があるなんて誰も考えもしないと思いますよ。
お水が温かければまだ温泉を疑うでしょうけど、冷たいお水だとわからないのは仕方ありませんよ」
ひとまず慰めよう。
温泉とか冷泉とか鉱泉とか、こちらの世界には明確な基準が多分ないし、温泉もこの国では少ないんだから仕方ないもの。
カイヤさんもこの国の人じゃないから言われなければ生まないの泉なんてマイナーなもの知らないのは当然だ。
気づかなければ気づかないままだっただろうし、ドブに捨てそうになってたわけじゃ····。
でも、あ、あれ?!
「慰めてくれるアリー····可愛いわ」
またスーパーモデルのほっぺが上気してる?!
もしかして、のぼせかな?!
温泉に入ってきたとか?
それなら僕も入りたかったな。
あれ、でも僕は男湯と女湯のどっちに入ればいいのかな?
入る気満々だったけど、初歩的な問題が僕の中で浮上したぞ?!
どっちの性別の裸も今更だけど、どっちに入っても気恥ずかしいかもしれない。
「それで、アリー嬢は何故その泉の事を知っていたのだ?
あまり知られているような泉ではないのだろう?」
『なんでなんで?』
はっ。
そうだった。
王子はともかく、彼の肩にちょこんと乗ってる手乗りサイズの闇の精霊さんの質問には答えてあげなくっちゃ。
「知っていたというよりも、まだ母様が元気だった頃にファムント領の温泉の話をしてたんです。
その時に母様がその泉のお話をしてくれて、2人でもしかしてって言ってたのを思い出しただけなので、たまたまです」
義母様が生まないの泉を知ってたのも、たまたまこの領で開催した狩猟祭からの帰りに立ち寄って聞いたらしい。
当時の狩猟祭はまだこの国に商業祭ができる前だったらしくて、辺境領での情勢によって春頃か秋頃のどちらかに開催してたんだ。
ちなみにその時は秋だったみたい。
今は毎年の秋の商業祭、5年に1度の春の狩猟祭っていう認識になってるけどね。
でもそろそろ狩猟祭は無くなってしまうかもしれない。
だって狩猟祭を行うのは辺境領が国境を守る領地で、もし辺境領が機能しなくなればこの国が戦争の脅威に曝されちゃうっていうのを国内の貴族達に知らしめつつ、国外には自国の王侯貴族は辺境にも目を光らせてるぞっていうアピールだからね。
他の理由としては辺境の山は魔獣がよく出るから、ついでに間引きしちゃう意図もあるかな。
ただ3つの辺境領のうち、グレインビル領もアビニシア領も領内の財政が潤い始めたし、領地に接するそれぞれの隣国との関係はその他の諸外国も絡めて比較的良好なんだ。
もちろん何かしら怪しい動きをする国はあるけど、その他の国々と良好な関係なら色々牽制にもなって表立った戦争なんかは起きにくいからね。
商業祭の規模も年々大きくなってるくらい、この国は離れた国々との交易も盛んになってて友好関係を結べていってると思う。
となると、後はこのファムント領の今後の温泉街計画が上手くいって領政が落ち着けば、もう狩猟祭を行う意味が無くなると思うんだ。
もちろんそこで肩に闇の精霊さんを乗せた王子の母国も、流民が出ないくらいには早く落ち着いてくれなきゃだろうけどね。
早くても10年に1度くらいの各辺境領持ち回りの狩猟祭なら街おこしイベントみたいになって観光客も増えるけど、このままだと毎回ファムント領が開催する事になって負担になっちゃうから大変だ。
狩猟祭の開催地は情勢の不安定な辺境領を優先的に選ぶもの。
まあそれも見越しての温泉街計画に力を入れてるんだろうけど。
話がちょっと脱線したね。
狩猟祭帰りのグレインビル家一行は観光がてら、ある町に立ち寄ったんだけど、ぶっちゃけ何もなさそうな町という名の集落だったんだって。
で、町の人達に何かないか聞いたら申し訳無さそうなお顔で、生まないの泉っていう臭い泉しかないんです、って。
臭い泉っていうのが当時の義母様のパワーワードになって、義父様に産まれて数ヶ月のレイヤード義兄様を預けて、お供にセバスチャンを伴ってバルトス義兄様の手を引いて山に入ったらしいんだ。
ちなみに僕はここ最近、セバスチャンが僕を抱っこして山を登れるくらい体を鍛えてるのは、義母様の時からの習慣じゃないかと睨んでる。
当時の泉までの道のりも、セバスチャンが義母様を抱えて登ったらしい。
セバスチャンに抱えられて少し登ったら、町の人が目印として教えてくれた汲める程の水かさにもなってない、枯れかけの井戸があって、そこから小道に入って山を登った所にその泉はあるんだって。
義母様が噂の臭い泉に好奇心に従って鼻を近づけたら、予想してたヘドロみたいな臭いじゃなく、何だか温泉特有の臭いだったらしいんだ。
でも泉に手を突っ込んでみたら、冬間近だったせいか凄く冷たいし、手には気泡が纏わりついて、思ってた温泉じゃないのだけはわかったって笑ってた。
バリーフェの事を知ったのも義母様との温泉話をしてた時で、自分が直接捕獲しようとしてたけど捕まえられなかったって言ってたんだ。
義母様ってば体は弱かったらしいけど、好奇心旺盛でちょっと落ち着きのないお茶目な大人だったんじゃないかと密かに思ってる。
そういう貴族の女性らしからぬ実体験をしてたからこそ、博識だったんだろうね。
この世界の僕の知識のいくつかは義母様情報だよ。
あ、あれ?
ジェン様が落ち込んでる?!
ジェン様は握りしめた両手をテーブルの上にそれぞれ置いてうつむきがちにぶつぶつ言ってる。
ちょっと怖い。
「えっと、確かに妙な臭いがして生き物が住みつかない小さな泉なんて使い道のない沼みたいなものです。
温泉と同じ効果があるなんて誰も考えもしないと思いますよ。
お水が温かければまだ温泉を疑うでしょうけど、冷たいお水だとわからないのは仕方ありませんよ」
ひとまず慰めよう。
温泉とか冷泉とか鉱泉とか、こちらの世界には明確な基準が多分ないし、温泉もこの国では少ないんだから仕方ないもの。
カイヤさんもこの国の人じゃないから言われなければ生まないの泉なんてマイナーなもの知らないのは当然だ。
気づかなければ気づかないままだっただろうし、ドブに捨てそうになってたわけじゃ····。
でも、あ、あれ?!
「慰めてくれるアリー····可愛いわ」
またスーパーモデルのほっぺが上気してる?!
もしかして、のぼせかな?!
温泉に入ってきたとか?
それなら僕も入りたかったな。
あれ、でも僕は男湯と女湯のどっちに入ればいいのかな?
入る気満々だったけど、初歩的な問題が僕の中で浮上したぞ?!
どっちの性別の裸も今更だけど、どっちに入っても気恥ずかしいかもしれない。
「それで、アリー嬢は何故その泉の事を知っていたのだ?
あまり知られているような泉ではないのだろう?」
『なんでなんで?』
はっ。
そうだった。
王子はともかく、彼の肩にちょこんと乗ってる手乗りサイズの闇の精霊さんの質問には答えてあげなくっちゃ。
「知っていたというよりも、まだ母様が元気だった頃にファムント領の温泉の話をしてたんです。
その時に母様がその泉のお話をしてくれて、2人でもしかしてって言ってたのを思い出しただけなので、たまたまです」
義母様が生まないの泉を知ってたのも、たまたまこの領で開催した狩猟祭からの帰りに立ち寄って聞いたらしい。
当時の狩猟祭はまだこの国に商業祭ができる前だったらしくて、辺境領での情勢によって春頃か秋頃のどちらかに開催してたんだ。
ちなみにその時は秋だったみたい。
今は毎年の秋の商業祭、5年に1度の春の狩猟祭っていう認識になってるけどね。
でもそろそろ狩猟祭は無くなってしまうかもしれない。
だって狩猟祭を行うのは辺境領が国境を守る領地で、もし辺境領が機能しなくなればこの国が戦争の脅威に曝されちゃうっていうのを国内の貴族達に知らしめつつ、国外には自国の王侯貴族は辺境にも目を光らせてるぞっていうアピールだからね。
他の理由としては辺境の山は魔獣がよく出るから、ついでに間引きしちゃう意図もあるかな。
ただ3つの辺境領のうち、グレインビル領もアビニシア領も領内の財政が潤い始めたし、領地に接するそれぞれの隣国との関係はその他の諸外国も絡めて比較的良好なんだ。
もちろん何かしら怪しい動きをする国はあるけど、その他の国々と良好な関係なら色々牽制にもなって表立った戦争なんかは起きにくいからね。
商業祭の規模も年々大きくなってるくらい、この国は離れた国々との交易も盛んになってて友好関係を結べていってると思う。
となると、後はこのファムント領の今後の温泉街計画が上手くいって領政が落ち着けば、もう狩猟祭を行う意味が無くなると思うんだ。
もちろんそこで肩に闇の精霊さんを乗せた王子の母国も、流民が出ないくらいには早く落ち着いてくれなきゃだろうけどね。
早くても10年に1度くらいの各辺境領持ち回りの狩猟祭なら街おこしイベントみたいになって観光客も増えるけど、このままだと毎回ファムント領が開催する事になって負担になっちゃうから大変だ。
狩猟祭の開催地は情勢の不安定な辺境領を優先的に選ぶもの。
まあそれも見越しての温泉街計画に力を入れてるんだろうけど。
話がちょっと脱線したね。
狩猟祭帰りのグレインビル家一行は観光がてら、ある町に立ち寄ったんだけど、ぶっちゃけ何もなさそうな町という名の集落だったんだって。
で、町の人達に何かないか聞いたら申し訳無さそうなお顔で、生まないの泉っていう臭い泉しかないんです、って。
臭い泉っていうのが当時の義母様のパワーワードになって、義父様に産まれて数ヶ月のレイヤード義兄様を預けて、お供にセバスチャンを伴ってバルトス義兄様の手を引いて山に入ったらしいんだ。
ちなみに僕はここ最近、セバスチャンが僕を抱っこして山を登れるくらい体を鍛えてるのは、義母様の時からの習慣じゃないかと睨んでる。
当時の泉までの道のりも、セバスチャンが義母様を抱えて登ったらしい。
セバスチャンに抱えられて少し登ったら、町の人が目印として教えてくれた汲める程の水かさにもなってない、枯れかけの井戸があって、そこから小道に入って山を登った所にその泉はあるんだって。
義母様が噂の臭い泉に好奇心に従って鼻を近づけたら、予想してたヘドロみたいな臭いじゃなく、何だか温泉特有の臭いだったらしいんだ。
でも泉に手を突っ込んでみたら、冬間近だったせいか凄く冷たいし、手には気泡が纏わりついて、思ってた温泉じゃないのだけはわかったって笑ってた。
バリーフェの事を知ったのも義母様との温泉話をしてた時で、自分が直接捕獲しようとしてたけど捕まえられなかったって言ってたんだ。
義母様ってば体は弱かったらしいけど、好奇心旺盛でちょっと落ち着きのないお茶目な大人だったんじゃないかと密かに思ってる。
そういう貴族の女性らしからぬ実体験をしてたからこそ、博識だったんだろうね。
この世界の僕の知識のいくつかは義母様情報だよ。
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