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351.ドMの心境と毎度あり
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「目指すのは国内の事業者や領主達がファムント領に、ひいてはジェン様にこそ仕事を任せたいと思われるようになる事です。
それがあってやっと領地経営がひとまず安定したと判断して良いでしょう」
「何だか壮大な話になってきたわ。
できるかしら?」
確かに壮大だ。
ずっと先まで考えているから、先も長い。
ジェン様の表情がほんのりと翳るのもわかる気はする。
でも事業を1から立て直す時こそ中長期目線で設備投資したり、人材教育にお金をかけたりするものだと僕は思ってる。
あちらの世界にいる時も医者を辞めて日本に帰った後、そうやって仕事をしてたから正直なところこれは当然だとしか言えない。
幸い今のファムント領の温泉街計画はこの国も好意的に支持している。
借り入れた資金の利子もかなり低く設定されて、返済猶予もその方法も優遇されてるから余程の事がない限り返済の目処はたっている。
働き口が無くて眠らせていた労働力そのものも、まあまあある。
人手不足の方で悩む事はないのもこの領のメリットだ。
ただね····。
「どうでしょう?
一過性の利益で良いのなら、規模を広げる必要はありません。
けれど数十年後までこの領地を発展させたいのなら、領民も含めて既存の考えややり方を維持するだけでは難しいかと。
実際、この領はもう10年くらいかけて利益は右肩下がり、最低でもここ5年は赤字領地経営だったのではありませんか?」
「それは····そうね」
僕のその言葉にジェン様は苦笑する。
そう、今まで通りに領民の意識改革もせず楽な方に流されるなら、この領地は恐らく一時的に景気が良くなっただけですぐに廃れる。
そもそもがこの温泉街建設自体が国からいくらか借金をしての、赤字スタートだから、借金が膨れ上がって最後は領地を国に返す事態もあり得るんだ。
僕はそっと目の前のアフタヌーンティーセットに触れる。
「従兄様がこれから流行らせて文化として定着させようとしているこのアフタヌーンティーと同じです。
この領地に見合った新しい文化やマナーを生み出して、定着させなければならない時代にファムント領は来ているんじゃないでしょうか。
それにはもちろんこのファムント領の領民の手で行ってこそ、観光客が自ら納得して足を運び、この領に喜んでお金を落とすようになるんだと思います」
僕の言葉にレイチェル様が微笑む。
「初めてあなたが私の反省文にお返事をくれた時の事を思い出すわ」
「ああ、あの噂の····」
え、噂?
噂になってるの?
ジェン様はどうして知ってるの?
噂の発生地な学園は王都だよ?
ここ、ファムント領。
辺境領地だよ?
反省文って、あのはた迷惑極まりない、僕をもの凄く美化して賛美歌でも作ってるのかと思うくらいに華美に、誇大に褒め称えるあの作文だよね?!
「ええ、その反省文ですわ。
あの時不眠不休で1週間かけて作っては、レイヤード様にダメ出しをいただき、また作ってはダメ出しをされてを繰り返しましたの。
その後アリーがお手紙で尋ねられた事を調べてはまたレイヤード様にダメ出しをされ、また調べ直してはまた。
時々あの冷たくニコリともしない冷たいお顔に励まされたのを懐かしくなる事もありますのよ」
もうそれ、ドMの心境····。
「コ、コホン。
とにかく、それが私からの提案です。
お酒に関してはうちの料理人達と弾ける果実水やシロップ、それと蒸留酒を使ったレシピを考案しているので、それを元にメニュー開発してみて下さい。
弾泉水を取り入れるのもありだと思います。
バーテンダーのパフォーマンスの原案も後で絵に描いてみますね」
「まあ、そんなにしてもらえるのね!
ありがたいわ!」
「もちろんです。
その代わり向こう何年かの蒸留酒の専属契約を父様と結ぶようにファムント侯爵とも話し合って下さい」
「ふふふ、商売上手なアリーも可愛らしいわ。
蒸留酒はグレインビルからしか今は買えないもの。
それだけでも売りになるから父も喜ぶはずよ」
こうしてまた1つうちの領の商談がまとまったね。
毎度あり。
「ところでアリー?
それだと第2の温泉街は貴族向けの保養地になるけれど、ジェン様はそれでよろしいの?」
「ああ、そうね。
そこは私も少し引っかかっているの。
多分領主である父もそうなるわ」
レイチェル様の言葉に困り顔になるジェン様。
もちろんこれは予測済みだよ。
「はい。
そこでもう1つのご提案です!」
僕はにんまり笑って次を提案した。
ぶっちゃけ僕のやりたい事はこっちだ。
この国では成人してても、あちらの世界ではまだ余裕の未成年。
ネイルや美容やお酒はちょっと早い。
何より今の虚弱体質な僕にとっては健康が1番大事だもの。
いかに整わせるかの方がずっと大事。
もちろんレイチェル様にとってのお得なお話も伝えたよ。
レイチェル様は大喜び。
もちろんジェン様も喜んでくれたよ。
でも実現させるのに動けるのは早くて数カ月跡くらいかな。
まずは元々の温泉街計画を成功させてからでもこの方法なら間に合うし、対費用効果も抜群だ。
んふふ、こっちのお話はまたその時にね。
※※※※※※※※※
後書き
※※※※※※※※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
お気に入り登録やいただいた感想にいつも励まされて更新ができております。
本日は日頃の感謝の意味をこめてこの後もう1話投稿します。
多分18時過ぎくらい?
よろしくお願いしますm(_ _)m
それがあってやっと領地経営がひとまず安定したと判断して良いでしょう」
「何だか壮大な話になってきたわ。
できるかしら?」
確かに壮大だ。
ずっと先まで考えているから、先も長い。
ジェン様の表情がほんのりと翳るのもわかる気はする。
でも事業を1から立て直す時こそ中長期目線で設備投資したり、人材教育にお金をかけたりするものだと僕は思ってる。
あちらの世界にいる時も医者を辞めて日本に帰った後、そうやって仕事をしてたから正直なところこれは当然だとしか言えない。
幸い今のファムント領の温泉街計画はこの国も好意的に支持している。
借り入れた資金の利子もかなり低く設定されて、返済猶予もその方法も優遇されてるから余程の事がない限り返済の目処はたっている。
働き口が無くて眠らせていた労働力そのものも、まあまあある。
人手不足の方で悩む事はないのもこの領のメリットだ。
ただね····。
「どうでしょう?
一過性の利益で良いのなら、規模を広げる必要はありません。
けれど数十年後までこの領地を発展させたいのなら、領民も含めて既存の考えややり方を維持するだけでは難しいかと。
実際、この領はもう10年くらいかけて利益は右肩下がり、最低でもここ5年は赤字領地経営だったのではありませんか?」
「それは····そうね」
僕のその言葉にジェン様は苦笑する。
そう、今まで通りに領民の意識改革もせず楽な方に流されるなら、この領地は恐らく一時的に景気が良くなっただけですぐに廃れる。
そもそもがこの温泉街建設自体が国からいくらか借金をしての、赤字スタートだから、借金が膨れ上がって最後は領地を国に返す事態もあり得るんだ。
僕はそっと目の前のアフタヌーンティーセットに触れる。
「従兄様がこれから流行らせて文化として定着させようとしているこのアフタヌーンティーと同じです。
この領地に見合った新しい文化やマナーを生み出して、定着させなければならない時代にファムント領は来ているんじゃないでしょうか。
それにはもちろんこのファムント領の領民の手で行ってこそ、観光客が自ら納得して足を運び、この領に喜んでお金を落とすようになるんだと思います」
僕の言葉にレイチェル様が微笑む。
「初めてあなたが私の反省文にお返事をくれた時の事を思い出すわ」
「ああ、あの噂の····」
え、噂?
噂になってるの?
ジェン様はどうして知ってるの?
噂の発生地な学園は王都だよ?
ここ、ファムント領。
辺境領地だよ?
反省文って、あのはた迷惑極まりない、僕をもの凄く美化して賛美歌でも作ってるのかと思うくらいに華美に、誇大に褒め称えるあの作文だよね?!
「ええ、その反省文ですわ。
あの時不眠不休で1週間かけて作っては、レイヤード様にダメ出しをいただき、また作ってはダメ出しをされてを繰り返しましたの。
その後アリーがお手紙で尋ねられた事を調べてはまたレイヤード様にダメ出しをされ、また調べ直してはまた。
時々あの冷たくニコリともしない冷たいお顔に励まされたのを懐かしくなる事もありますのよ」
もうそれ、ドMの心境····。
「コ、コホン。
とにかく、それが私からの提案です。
お酒に関してはうちの料理人達と弾ける果実水やシロップ、それと蒸留酒を使ったレシピを考案しているので、それを元にメニュー開発してみて下さい。
弾泉水を取り入れるのもありだと思います。
バーテンダーのパフォーマンスの原案も後で絵に描いてみますね」
「まあ、そんなにしてもらえるのね!
ありがたいわ!」
「もちろんです。
その代わり向こう何年かの蒸留酒の専属契約を父様と結ぶようにファムント侯爵とも話し合って下さい」
「ふふふ、商売上手なアリーも可愛らしいわ。
蒸留酒はグレインビルからしか今は買えないもの。
それだけでも売りになるから父も喜ぶはずよ」
こうしてまた1つうちの領の商談がまとまったね。
毎度あり。
「ところでアリー?
それだと第2の温泉街は貴族向けの保養地になるけれど、ジェン様はそれでよろしいの?」
「ああ、そうね。
そこは私も少し引っかかっているの。
多分領主である父もそうなるわ」
レイチェル様の言葉に困り顔になるジェン様。
もちろんこれは予測済みだよ。
「はい。
そこでもう1つのご提案です!」
僕はにんまり笑って次を提案した。
ぶっちゃけ僕のやりたい事はこっちだ。
この国では成人してても、あちらの世界ではまだ余裕の未成年。
ネイルや美容やお酒はちょっと早い。
何より今の虚弱体質な僕にとっては健康が1番大事だもの。
いかに整わせるかの方がずっと大事。
もちろんレイチェル様にとってのお得なお話も伝えたよ。
レイチェル様は大喜び。
もちろんジェン様も喜んでくれたよ。
でも実現させるのに動けるのは早くて数カ月跡くらいかな。
まずは元々の温泉街計画を成功させてからでもこの方法なら間に合うし、対費用効果も抜群だ。
んふふ、こっちのお話はまたその時にね。
※※※※※※※※※
後書き
※※※※※※※※※
いつもご覧いただきありがとうございます。
お気に入り登録やいただいた感想にいつも励まされて更新ができております。
本日は日頃の感謝の意味をこめてこの後もう1話投稿します。
多分18時過ぎくらい?
よろしくお願いしますm(_ _)m
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