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377.留学生3人の回収〜ルドルフside
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「これがアリー嬢のデザインした大浴場か、ゼスト」
「ああ。
以前彼女が描いたデザイン画を見せて貰った時も素晴らしいと思ったが、出来上がってみるとまた····圧巻だな」
見渡せば、趣きの違う浴槽がこちらとあちらに別れて配置されている。
俺達のいるこちら側は、大きくて一体何十人収容するんだと思うような広くて深い、黒を基調にした浴槽が3つ並び、更にその下の段にもここより広い浴槽が2つある。
溶岩でできた石を加工していて、アリー嬢が考案したと聞いた。
共に感嘆の声を出す隣国の第1王子の反応からして、先にそのデザイン画を見ていてもやはり実物は違うようだ。
俺達は昼頃に理由あって急きょこのファムント領へと訪れた。
突然の訪問だったが、この領に招かれていたガウディード=フォンデアスの計らいもあり、当主と次期当主2人との挨拶も終始和やかなものとなった。
そして今はちょうど完成したばかりの平民向け大浴場に案内されている。
きょろきょろと辺りを見回す彼とは、この春に留学生として学園を卒業してからは特にゼスト、ルドと呼び合う仲になった。
もちろん俺は今も学園で臨時講師として在籍している為、ゼストが学生の間はある程度の距離を保って付き合っていた。
ただ時々冒険者としてゼストと共に依頼を受けた事も何度かあり、依頼先で共に水浴びもした仲だ。
もうじきコード伯爵の方から裾の短いズボンのような形状の水着なるものがこの領に届くらしいが、今はまだ無い。
もちろん急きょ押しかけるようにして訪れた身だから文句などなく、こうして腰にタオルを巻いて入浴する事になっても俺達の貸し切りだ。
領主からもあらかじめ確認された上で俺達はこの格好だから問題ですらない。
ちなみに俺自身の護衛はつけてきていないが、ここまでは冒険者として最強クラスの実力者であるレイヤード=グレインビルと、セストの護衛であるリューイ殿と共に来た。
しかも一応俺はAクラス、ゼストはBクラスの冒険者認定も受けている。
何よりこの温泉の周りには防犯から警備も配置されていて、ほぼ出来上がりかけている温泉街の方にも定期的に時間をずらしつつ警邏が巡回している。
昨年の今頃からは想像もつかない徹底した治安の向上っぷりだし、そもそもこの時期に自国の王子が来るなんて誰も想像しないだろう。
俺も想像していなかった。
正直腰のタオルはあっても無くてもどちらでもいいが、立場的に今は内密にとはいえファムント領主とも挨拶を交わしてからの流れでここに来た。
俺もゼストも王族としての対面の為に身に着けているようなものだ。
半分は視察のような物となってしまったが、政治的な背景もあって温泉街計画の構想を知らされた当初から興味があったからちょうど良かったと言えば、確かに良いのかもしれない。
余談だが国王と王妃である両親からも特に温泉施設は隅々まで調べて来るようにと言われている。
これまで相手都合により、延びに延びたこの国の王太子である兄上の婚約並びに婚姻。
それが決まった事で、浮かれているのだ。
さっさと代を譲って夫婦でのんびり温泉に浸かるという野望がどうとかそれぞれ別々の場でぼやいていたが、そこは絶対兄上に知られてはならない。
何故ならじきにジャガンダ国の姫が正式な形で訪れ、婚約式が行われる。
その準備と普段からの公務もあって、あまりに多忙を極める今の兄上に聞かれたが最後、八つ当たりするかのように良い笑顔で俺に色々な難題を降らせてくる。
それが俺の兄上だ。
俺達は貴族向けの宿に今日は泊まるが、想い人も今夜はそこに兄のレイヤードと泊まるらしい。
兄妹とはいえ血は繋がっていないし、アリー嬢も既に成人した身だ。
寝室は流石に別だろうが····いや、あの兄妹なら共に1つのベッドで寝る事もあり得る。
一瞬そう考えて、まだ想い人だとすら告げる事の許されない身の上がもどかしい。
なのに俺の隣のゼストも最近はアリー嬢を気にかけている。
まだはっきりと意識はしていないようだが、俺には見えていない、いつもはどちらかの親指にはめている指輪の精霊石に宿る闇の精霊も、何かしらゼストを後押ししている気がする。
確信はないが····。
指輪は温泉成分で指輪が変色するかもしれないからと、向こうで待機しているリューイ殿に預けている。
だが彼は自国の王太子を、ひいては王となる事を目指している。
だからこそ、俺の方に分はある····と、思いたい。
少なくともアリー嬢は超がつく虚弱体質で、本人は表に出る事を著しく嫌う節があるからな。
俺自身も兄上が婚約を発表すると同時に臣籍降下するから、アリー嬢に何かしら行動を起こすとしても、その後だ。
ただ数日はこの領に泊まる事になる。
どこかのタイミングでアリー嬢と会えればと思っているが、レイがどう出るかだな。
妨害は絶対されるから、レイの目をかいくぐって接触しなければ····。
だがもう1つ問題がある。
急きょこの領に、兄上の婚約式を間近に控えたこのタイミングで内々に来たのは、例の問題ばかり起こす留学生3人の回収だ。
もちろんゼストにもその任務が課せられた。
何せ彼は自国の留学生に限り、お目付け役となっているからだ。
そしてそれは昨日、ガウディード=フォンデアスからグレインビル家に、そして某兄弟を経由して、こちらに怒りの連絡が入った事に端を発する。
事の経緯が余りにもひど過ぎて、国王と王太子直々の回収命令だった。
「ああ。
以前彼女が描いたデザイン画を見せて貰った時も素晴らしいと思ったが、出来上がってみるとまた····圧巻だな」
見渡せば、趣きの違う浴槽がこちらとあちらに別れて配置されている。
俺達のいるこちら側は、大きくて一体何十人収容するんだと思うような広くて深い、黒を基調にした浴槽が3つ並び、更にその下の段にもここより広い浴槽が2つある。
溶岩でできた石を加工していて、アリー嬢が考案したと聞いた。
共に感嘆の声を出す隣国の第1王子の反応からして、先にそのデザイン画を見ていてもやはり実物は違うようだ。
俺達は昼頃に理由あって急きょこのファムント領へと訪れた。
突然の訪問だったが、この領に招かれていたガウディード=フォンデアスの計らいもあり、当主と次期当主2人との挨拶も終始和やかなものとなった。
そして今はちょうど完成したばかりの平民向け大浴場に案内されている。
きょろきょろと辺りを見回す彼とは、この春に留学生として学園を卒業してからは特にゼスト、ルドと呼び合う仲になった。
もちろん俺は今も学園で臨時講師として在籍している為、ゼストが学生の間はある程度の距離を保って付き合っていた。
ただ時々冒険者としてゼストと共に依頼を受けた事も何度かあり、依頼先で共に水浴びもした仲だ。
もうじきコード伯爵の方から裾の短いズボンのような形状の水着なるものがこの領に届くらしいが、今はまだ無い。
もちろん急きょ押しかけるようにして訪れた身だから文句などなく、こうして腰にタオルを巻いて入浴する事になっても俺達の貸し切りだ。
領主からもあらかじめ確認された上で俺達はこの格好だから問題ですらない。
ちなみに俺自身の護衛はつけてきていないが、ここまでは冒険者として最強クラスの実力者であるレイヤード=グレインビルと、セストの護衛であるリューイ殿と共に来た。
しかも一応俺はAクラス、ゼストはBクラスの冒険者認定も受けている。
何よりこの温泉の周りには防犯から警備も配置されていて、ほぼ出来上がりかけている温泉街の方にも定期的に時間をずらしつつ警邏が巡回している。
昨年の今頃からは想像もつかない徹底した治安の向上っぷりだし、そもそもこの時期に自国の王子が来るなんて誰も想像しないだろう。
俺も想像していなかった。
正直腰のタオルはあっても無くてもどちらでもいいが、立場的に今は内密にとはいえファムント領主とも挨拶を交わしてからの流れでここに来た。
俺もゼストも王族としての対面の為に身に着けているようなものだ。
半分は視察のような物となってしまったが、政治的な背景もあって温泉街計画の構想を知らされた当初から興味があったからちょうど良かったと言えば、確かに良いのかもしれない。
余談だが国王と王妃である両親からも特に温泉施設は隅々まで調べて来るようにと言われている。
これまで相手都合により、延びに延びたこの国の王太子である兄上の婚約並びに婚姻。
それが決まった事で、浮かれているのだ。
さっさと代を譲って夫婦でのんびり温泉に浸かるという野望がどうとかそれぞれ別々の場でぼやいていたが、そこは絶対兄上に知られてはならない。
何故ならじきにジャガンダ国の姫が正式な形で訪れ、婚約式が行われる。
その準備と普段からの公務もあって、あまりに多忙を極める今の兄上に聞かれたが最後、八つ当たりするかのように良い笑顔で俺に色々な難題を降らせてくる。
それが俺の兄上だ。
俺達は貴族向けの宿に今日は泊まるが、想い人も今夜はそこに兄のレイヤードと泊まるらしい。
兄妹とはいえ血は繋がっていないし、アリー嬢も既に成人した身だ。
寝室は流石に別だろうが····いや、あの兄妹なら共に1つのベッドで寝る事もあり得る。
一瞬そう考えて、まだ想い人だとすら告げる事の許されない身の上がもどかしい。
なのに俺の隣のゼストも最近はアリー嬢を気にかけている。
まだはっきりと意識はしていないようだが、俺には見えていない、いつもはどちらかの親指にはめている指輪の精霊石に宿る闇の精霊も、何かしらゼストを後押ししている気がする。
確信はないが····。
指輪は温泉成分で指輪が変色するかもしれないからと、向こうで待機しているリューイ殿に預けている。
だが彼は自国の王太子を、ひいては王となる事を目指している。
だからこそ、俺の方に分はある····と、思いたい。
少なくともアリー嬢は超がつく虚弱体質で、本人は表に出る事を著しく嫌う節があるからな。
俺自身も兄上が婚約を発表すると同時に臣籍降下するから、アリー嬢に何かしら行動を起こすとしても、その後だ。
ただ数日はこの領に泊まる事になる。
どこかのタイミングでアリー嬢と会えればと思っているが、レイがどう出るかだな。
妨害は絶対されるから、レイの目をかいくぐって接触しなければ····。
だがもう1つ問題がある。
急きょこの領に、兄上の婚約式を間近に控えたこのタイミングで内々に来たのは、例の問題ばかり起こす留学生3人の回収だ。
もちろんゼストにもその任務が課せられた。
何せ彼は自国の留学生に限り、お目付け役となっているからだ。
そしてそれは昨日、ガウディード=フォンデアスからグレインビル家に、そして某兄弟を経由して、こちらに怒りの連絡が入った事に端を発する。
事の経緯が余りにもひど過ぎて、国王と王太子直々の回収命令だった。
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