秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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384.1人戻る〜ルドルフside

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「怒ってないよ。
ただね、僕の可愛いアリー。
ずっと会えなかったのに久々に会ったら水没してるし、今も熱がぶり返してふらふらしてるでしょ。
可愛いアリーが心配なんだ。
それとも会えなかった間に僕の事嫌いになっちゃった?
だとしたら····悲しいな」

 おい、よくそんなに哀愁漂う悲しそうな表情を作れたな。

 背筋が凍るぞ。

 だが俺の手にもたれていたイタチなアリー嬢はピク、と一瞬固まり····。

 なに?!
手からいなくなっただと?!

「そんな事ないよ!
兄様大好きだもの!」

 なんだと?!
まばたきする間に兄の胸に飛びこんでいるだと?!
いつの間に?!
まさか転移魔法が使えたのか?!

 いや、ちょっと残像が見えた気がしないでもないが····はっ、身体強化か?!

「兄様は私の事好き?」
「もちろん。
イタチでもムササビでも人間でもそれ以外でも愛しているよ」
「私もだよ!!」

 くっ、何だあれ!!
俺もイタチとほっぺスリスリしたい!!

 想い人じゃなくてもちょっとしたくなる可愛さだろう!!

 うっわ、レイのやつ!
俺を見て勝ち誇った顔したのがまたムカつく!!

「それで、僕の事が大好きな可愛いアリー?」

 あえて俺を見ながら自分を強調するとは····嫌らしくも俺にのみ正確にクリティカルヒットを与えるパンチだな!

「んふふ、なあに、兄様?」
「燃えたって何かな?」
「んふぇ?!」

 あ、イタチが変な鳴き声出した。

「誤魔化されたりはしないよ?」

 細長い両脇に手を入れて、悠然と微笑みながら自分の目の前でぷらんとさせる。
完全に逃げ場を防がれているな、あれ。

「····ハイ」

 どことなくカタコトで返事をしてから話し始めたその内容に驚く。

 そもそもアリー嬢は王女の顔を知らず、からまれた時も従兄の背に隠れていたせいで王女の顔は見ていなかったらしい。

 そしてこれはあの場に案内してくれた侍女から先に聞いていた事だが、洞窟に落ちたのはたまたまだった。

 ただ侍女と別れて勝手に探検を始めてしまってからは初耳だ。

 まずは岩壁に苔が生えているのに気づき、それが光っていたから観察していたと。

 そして洞窟の中は真っ暗で、足音が聞こえたから念の為夜目の利くムササビになったら、誰かが捕まえようと追いかけたと。
まあ結局その誰かはエリュシウェル第3王子とその側近候補だったわけだが。

 とはいえ暗がりの中で逃げていたから誰とまでは判別もできないまま、その2人への反撃に噛みついたらしい。

 その時に防犯用魔具の1つが作動して2人が急に倒れたが、今度はどこからか火球が飛んできて慌てて逃げたと。

「アリー嬢····どこからどうつっこめば良いのか····相変わらず引きが強いと言うべきか····」

 と思わず呟いていれば、レイの方は殺気立つ。

「なるほど?
それで危うく僕の可愛いアリーが焼きムササビになりかけたんだ?」
「····お、怒った?」

 自分への怒りの可能性も危ぶんだのか、おずおずと尋ねるイタチは何だかいじらしいな。

 だが恐らくこうなる事は予想して黙っていたんだろう。

「僕の可愛いアリーには怒ってないよ。
ムササビはしばらく禁止にしてあるしね」
「····むぅ」

 そう言ってむくれる妹を肩に引っかけて両手で抱きしめる。

「心配したんだよ、アリアチェリーナ。
魔具があったから良かったけど、無かったら大怪我か、悪ければ死んでたんだ。
元々体も万全じゃないままにこの領にも来てるって忘れてない?
少なくとも熱が引いてグレインビル領に戻るまでは、もう大人しくしてて。
それまでは僕も一緒にいるから。
ね?」
「え、兄様はルド様達と一緒に王都に戻らなくてもいいの?」

 どことなく嬉々としてないか?
ちょっと傷つくな。

「うん、もう予定してた仕事は終わらせてるんだ。
ルドもA級冒険者として依頼をこなすのに慣れたからね。
それに王太子の婚約式やお披露目にはグレインビル家から当主の父上と、仕事としてだけど兄上が参加するから誰も文句は言えないよ。
それにアリーもあの魔具と祝辞を贈ったって聞いてる。
グレインビル家としては十分のはずだ。
ね、ルド?」
「ああ、その通りだ」

 今回兄上と婚約を結んだジャガンダ国の姫に、わが国の明確な後ろ盾は存在していない。

 だが近年交易によって急激に国力をつけ始め、なおかつわが国との関係に後ろ暗い所が存在せず、婚姻という政略的結びつきによってイグドゥラシャ国のような、ある意味不穏な空気を醸し出す国を牽制できる1番最適な国はジャガンダ国をおいて他に無かった。

 そんなじきに婚約者となり、未来の国母となる姫に内々にとはいえ、グレインビルの至宝たるアリアチェリーナ=グレインビルが祝辞と国宝級の魔具を贈ったのだ。

 絶対ガード君(改)というふざけた命名はともかくとして。

 そして内々だったはずのその事は、この僅かな期間で既にすでに王都で囁かれ始めているらしい。

 どこで、どんな、誰の意図なのかは絡み合いすぎていてあえて考えるつもりはない。

 ただ少なくともグレインビル家は静観している。

「そのせいで今回旧式しか手元に無かったのはいただけないけどね」
「うっ····それは····」

 王族として申し訳ない気持ちもあるが、ぷらぷらしながら言葉に詰まる様はやっぱり可愛らしかった。

 そしてその後、熱が本格的にぶり返してふらふらになったアリー嬢からも王女の足取りが掴めないまま、ひとまず俺だけ翌日戻る事になった日。

「はい、ルド」

 ゼストと共に見送るレイから小さな袋を手渡された。
アリー嬢は残念ながらベッドの上だ。

 中を確認すれば····苔?

「城に戻ったら光る苔を持ち帰ったって、皆が聞いている所で話題にしてみて。
ちゃんと君の兄上にも伝えるんだよ。
もしかしたらあの王女もすぐに戻ってくるかも」
「どういう····」
「じゃ」

 言うが早いか、転移されてしまった。

 そして戻ってすぐに兄上に報告した後、兄上の一存で全て任せた。
どうやら思う所があるらしい。

 ほどなくして、ミシェリーヌ=イグドゥラシャは学生寮に戻ってきた。
あの2人とはファムント領ですぐに別れ、一人旅を満喫したと報告を受けた。
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