秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

文字の大きさ
390 / 491

389.サウナ、ロウリュウ、アウフグース!

しおりを挟む
「お嬢様、体調が悪くなりましたら必ず仰って下さいね」

 ジュワッ。

「もちろんだよ、ニーア」
「そうでしてよ、アリー。
やっと体調が落ち着いたのですもの。
無理は禁物よ」
「アリー、疲れたらいつでも膝枕するから、ここに横になるといいわ」

 艶女なレイチェル様が頷けば、スーパーモデルなジェンが僕を甘やかす。

 ジュワッ。

 タイミング良く僕のできる専属侍女は熱した石、サウナストーンを積んだその上に柄杓でアロマ水を掬ってゆっくりとかける。

 水蒸気が良い感じに部屋の温度と湿度を上昇させ、じんわりと汗がにじみ始めた。

 身につけた作務衣さむえの素材にはこだわっていて、汗を吸ってもカラッとしていてベタつかない。
コード伯爵と試行錯誤したから時間はかかったけど、満足だ。

「んふふ、これぞロウリュウ」

 アロマの天然由来の香りをまずは堪能する。

「初めて体験するけれど、このアロマ水の香りはとても良ろしくてよ」
「グレインビル領で育てているハーブは香りが良いって本当ね」
「はい。
職人さん達の日々の努力と品種改良効果ですの」

 領主の娘である僕は得意顔だ。
領民や特産品を褒められるのはとっても嬉しい。

「まあ、可愛い」
「はあ、食べたい」
「シュレジェンナ様」

 どうしたのかな?
レイチェル様のお声は警告してるみたいに少しだけ低い。

「わかっているわ。
また悪魔が降臨して強制送還されたらたまらないもの。
今回このサウナ施設ができたから発案者として視察して欲しいと言わなければ、アリーの耳にすら入れて貰えずに私達は一生引き離されていたに違いないもの」
「ならばよろしくてよ」

 何の事かわからないけど、ひとまず2人の美女の間で話はついたのかな?
ジェン様のお顔がとっても悲しそうなのが気になるけど。

 あ、よよよ、と泣き真似した。
2人共仲良くなったみたい。

 少し汗ばんだ艶女とスーパーモデルが絡む絵面をこんな間近で眺める僕って約得だね。

「それじゃあ、ニーア。
お願いします!」
「かしこまりました」
「「いよいよね!」」

 でも絵面よりも今の僕の関心はこっちにあるんだ。

 ニーアはバスタオルを横に持ち、まずは僕に向けてバサッ、バサッと仰ぐ。

 熱風が僕を直撃する!

「これこれ!
アウフグース!
あつ~い!」

 もちろん僕、大興奮!

「それでは」
「よろしくてよ!」

 次は艶女の番!

 バサッ、バサッ。

「ん~、熱い!
でも何かしら····爽快な熱さですわ!」

 艶女ご満悦!

「それでは」
「お願い!」

 バサッ、バサッ。

「ん~、くるぅ!
ああ····気持ちいい····」

 スーパーモデルもご満悦!

「「あ、暑くなってきたわ!」」
「んふふ、そうでしょう、そうでしょう!
このまま少し時間を置いたら、外の冷えたお部屋で涼みますの。
初心者なので、無理だけはしてはいけませんわ」
「「もちろんよ」」

 今世の僕の体も初心者だし虚弱体質だからね。

 少しの間暑さに耐えていれば····。

「お嬢様」

 額に汗をかいたニーアが早めに僕を促す。

「先に1度出ますわ」
「気をつけて動くのよ」
「私も行こう」

 レイチェル様を残して出ると、秋の紅葉が目に入る。

 義父様達と1度領に戻ってから、季節が1つ過ぎて今は秋真っ只中だ。

 僕達は汗を軽く拭いて、リクライニングチェアに座ってくつろぐ。

 このお部屋は常に風が循環する作りになっていて、魔具を使って室内温度を15度くらいに保っているんだ。

 基本的に魔法が使える貴族向けのサウナ施設だから、洗浄の魔法をかけて作務衣のまま水風呂に入って魔法で服を乾かしてからまたサウナに入るのもありだよ。

「アリー」

 ニーアに弾泉水をもらって喉を潤していると、改まったようにジェン様に呼びかけられる。
 
「はい、ジェン様」
「力になってくれて、ありがとう。
心からお礼を言うわ」
「大衆浴場も貴族用の温泉施設も盛況みたいで、良かったです」
「タイミングも良かったの。
王太子殿下の婚約式と披露目の夜会で各国の代表がこの国に訪れていたから」

 温泉施設がオープンするまでのスーパーモデルのお顔は、少しずつ緊張感を孕んでいった。

 でも数ヶ月経って、温泉街では観光客があふれ、平民向けの大衆浴場は今や整理番号制度を取り入れるほどの人気をはくし、貴族向けの温泉施設も予約が来年の春頃まで埋まってるんだって。

 オープンした時期がこの国の王太子殿下と、開国してまだミステリアスなイメージのあるジャガンダ国のお姫様の婚約イベント真っ最中だったのもあって、他国の代表者達も偵察がてらこの領に足を運んだんだ。

 もちろんこれは狙っての事だよ。

 だから急ピッチで整備して、ジェン様はもちろん、領民達も間に合わせようと頑張ったんだ。

 お陰で今では他国からの観光客もたくさん訪れるようになっていて、多分このままいけば負債も早く無くせるだろうし、雇用状況の改善に合わせて隣国ザルハード国の流民達の問題も解消できるんじゃないかな。

 ザルハード国のゼストゥウェル第1王子も自国の国王や大臣達と出稼ぎに関する法整備を整えたみたいだし。

 もちろん反対勢力からの妨害はあったみたいなんだけどね。
オープンぎりぎりまで問題行動を起こしまくってた小チンピラ王子のお陰であまり強く出られなくなったみたい。

 それまではどうしてだか彼の良くない噂、まあ実話なんだけど、それが隣国には出回ってなかったんだ。

 でも各国の代表が行き来したのもあったのかもね。
少なくとも皆はそう思ってるよ。

 突然の噂で実話が出回り始め、それがどうやらあちらの王都にまで到達したみたい。

 不思議だよね、風の噂って。

 で、時を同じくして王子の留学中止の旨を通達した後、婚約のお披露目の席で王子自らが王位継承権の放棄を宣言したんだって。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

強制力が無茶するせいで乙女ゲームから退場できない。こうなったら好きに生きて国外追放エンドを狙おう!処刑エンドだけは、ホント勘弁して下さい

リコピン
ファンタジー
某乙女ゲームの悪役令嬢に転生したナディア。子どもの頃に思い出した前世知識を生かして悪役令嬢回避を狙うが、強制力が無茶するせいで上手くいかない。ナディアの専属執事であるジェイクは、そんなナディアの奇行に振り回されることになる。 ※短編(10万字はいかない)予定です

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...