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389.サウナ、ロウリュウ、アウフグース!
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「お嬢様、体調が悪くなりましたら必ず仰って下さいね」
ジュワッ。
「もちろんだよ、ニーア」
「そうでしてよ、アリー。
やっと体調が落ち着いたのですもの。
無理は禁物よ」
「アリー、疲れたらいつでも膝枕するから、ここに横になるといいわ」
艶女なレイチェル様が頷けば、スーパーモデルなジェンが僕を甘やかす。
ジュワッ。
タイミング良く僕のできる専属侍女は熱した石、サウナストーンを積んだその上に柄杓でアロマ水を掬ってゆっくりとかける。
水蒸気が良い感じに部屋の温度と湿度を上昇させ、じんわりと汗がにじみ始めた。
身につけた作務衣の素材にはこだわっていて、汗を吸ってもカラッとしていてベタつかない。
コード伯爵と試行錯誤したから時間はかかったけど、満足だ。
「んふふ、これぞロウリュウ」
アロマの天然由来の香りをまずは堪能する。
「初めて体験するけれど、このアロマ水の香りはとても良ろしくてよ」
「グレインビル領で育てているハーブは香りが良いって本当ね」
「はい。
職人さん達の日々の努力と品種改良効果ですの」
領主の娘である僕は得意顔だ。
領民や特産品を褒められるのはとっても嬉しい。
「まあ、可愛い」
「はあ、食べたい」
「シュレジェンナ様」
どうしたのかな?
レイチェル様のお声は警告してるみたいに少しだけ低い。
「わかっているわ。
また悪魔が降臨して強制送還されたらたまらないもの。
今回このサウナ施設ができたから発案者として視察して欲しいと言わなければ、アリーの耳にすら入れて貰えずに私達は一生引き離されていたに違いないもの」
「ならばよろしくてよ」
何の事かわからないけど、ひとまず2人の美女の間で話はついたのかな?
ジェン様のお顔がとっても悲しそうなのが気になるけど。
あ、よよよ、と泣き真似した。
2人共仲良くなったみたい。
少し汗ばんだ艶女とスーパーモデルが絡む絵面をこんな間近で眺める僕って約得だね。
「それじゃあ、ニーア。
お願いします!」
「かしこまりました」
「「いよいよね!」」
でも絵面よりも今の僕の関心はこっちにあるんだ。
ニーアはバスタオルを横に持ち、まずは僕に向けてバサッ、バサッと仰ぐ。
熱風が僕を直撃する!
「これこれ!
アウフグース!
あつ~い!」
もちろん僕、大興奮!
「それでは」
「よろしくてよ!」
次は艶女の番!
バサッ、バサッ。
「ん~、熱い!
でも何かしら····爽快な熱さですわ!」
艶女ご満悦!
「それでは」
「お願い!」
バサッ、バサッ。
「ん~、くるぅ!
ああ····気持ちいい····」
スーパーモデルもご満悦!
「「あ、暑くなってきたわ!」」
「んふふ、そうでしょう、そうでしょう!
このまま少し時間を置いたら、外の冷えたお部屋で涼みますの。
初心者なので、無理だけはしてはいけませんわ」
「「もちろんよ」」
今世の僕の体も初心者だし虚弱体質だからね。
少しの間暑さに耐えていれば····。
「お嬢様」
額に汗をかいたニーアが早めに僕を促す。
「先に1度出ますわ」
「気をつけて動くのよ」
「私も行こう」
レイチェル様を残して出ると、秋の紅葉が目に入る。
義父様達と1度領に戻ってから、季節が1つ過ぎて今は秋真っ只中だ。
僕達は汗を軽く拭いて、リクライニングチェアに座ってくつろぐ。
このお部屋は常に風が循環する作りになっていて、魔具を使って室内温度を15度くらいに保っているんだ。
基本的に魔法が使える貴族向けのサウナ施設だから、洗浄の魔法をかけて作務衣のまま水風呂に入って魔法で服を乾かしてからまたサウナに入るのもありだよ。
「アリー」
ニーアに弾泉水をもらって喉を潤していると、改まったようにジェン様に呼びかけられる。
「はい、ジェン様」
「力になってくれて、ありがとう。
心からお礼を言うわ」
「大衆浴場も貴族用の温泉施設も盛況みたいで、良かったです」
「タイミングも良かったの。
王太子殿下の婚約式と披露目の夜会で各国の代表がこの国に訪れていたから」
温泉施設がオープンするまでのスーパーモデルのお顔は、少しずつ緊張感を孕んでいった。
でも数ヶ月経って、温泉街では観光客があふれ、平民向けの大衆浴場は今や整理番号制度を取り入れるほどの人気をはくし、貴族向けの温泉施設も予約が来年の春頃まで埋まってるんだって。
オープンした時期がこの国の王太子殿下と、開国してまだミステリアスなイメージのあるジャガンダ国のお姫様の婚約イベント真っ最中だったのもあって、他国の代表者達も偵察がてらこの領に足を運んだんだ。
もちろんこれは狙っての事だよ。
だから急ピッチで整備して、ジェン様はもちろん、領民達も間に合わせようと頑張ったんだ。
お陰で今では他国からの観光客もたくさん訪れるようになっていて、多分このままいけば負債も早く無くせるだろうし、雇用状況の改善に合わせて隣国ザルハード国の流民達の問題も解消できるんじゃないかな。
ザルハード国のゼストゥウェル第1王子も自国の国王や大臣達と出稼ぎに関する法整備を整えたみたいだし。
もちろん反対勢力からの妨害はあったみたいなんだけどね。
オープンぎりぎりまで問題行動を起こしまくってた小チンピラ王子のお陰であまり強く出られなくなったみたい。
それまではどうしてだか彼の良くない噂、まあ実話なんだけど、それが隣国には出回ってなかったんだ。
でも各国の代表が行き来したのもあったのかもね。
少なくとも皆はそう思ってるよ。
突然風の噂で実話が出回り始め、それがどうやらあちらの王都にまで到達したみたい。
不思議だよね、風の噂って。
で、時を同じくして王子の留学中止の旨を通達した後、婚約のお披露目の席で王子自らが王位継承権の放棄を宣言したんだって。
ジュワッ。
「もちろんだよ、ニーア」
「そうでしてよ、アリー。
やっと体調が落ち着いたのですもの。
無理は禁物よ」
「アリー、疲れたらいつでも膝枕するから、ここに横になるといいわ」
艶女なレイチェル様が頷けば、スーパーモデルなジェンが僕を甘やかす。
ジュワッ。
タイミング良く僕のできる専属侍女は熱した石、サウナストーンを積んだその上に柄杓でアロマ水を掬ってゆっくりとかける。
水蒸気が良い感じに部屋の温度と湿度を上昇させ、じんわりと汗がにじみ始めた。
身につけた作務衣の素材にはこだわっていて、汗を吸ってもカラッとしていてベタつかない。
コード伯爵と試行錯誤したから時間はかかったけど、満足だ。
「んふふ、これぞロウリュウ」
アロマの天然由来の香りをまずは堪能する。
「初めて体験するけれど、このアロマ水の香りはとても良ろしくてよ」
「グレインビル領で育てているハーブは香りが良いって本当ね」
「はい。
職人さん達の日々の努力と品種改良効果ですの」
領主の娘である僕は得意顔だ。
領民や特産品を褒められるのはとっても嬉しい。
「まあ、可愛い」
「はあ、食べたい」
「シュレジェンナ様」
どうしたのかな?
レイチェル様のお声は警告してるみたいに少しだけ低い。
「わかっているわ。
また悪魔が降臨して強制送還されたらたまらないもの。
今回このサウナ施設ができたから発案者として視察して欲しいと言わなければ、アリーの耳にすら入れて貰えずに私達は一生引き離されていたに違いないもの」
「ならばよろしくてよ」
何の事かわからないけど、ひとまず2人の美女の間で話はついたのかな?
ジェン様のお顔がとっても悲しそうなのが気になるけど。
あ、よよよ、と泣き真似した。
2人共仲良くなったみたい。
少し汗ばんだ艶女とスーパーモデルが絡む絵面をこんな間近で眺める僕って約得だね。
「それじゃあ、ニーア。
お願いします!」
「かしこまりました」
「「いよいよね!」」
でも絵面よりも今の僕の関心はこっちにあるんだ。
ニーアはバスタオルを横に持ち、まずは僕に向けてバサッ、バサッと仰ぐ。
熱風が僕を直撃する!
「これこれ!
アウフグース!
あつ~い!」
もちろん僕、大興奮!
「それでは」
「よろしくてよ!」
次は艶女の番!
バサッ、バサッ。
「ん~、熱い!
でも何かしら····爽快な熱さですわ!」
艶女ご満悦!
「それでは」
「お願い!」
バサッ、バサッ。
「ん~、くるぅ!
ああ····気持ちいい····」
スーパーモデルもご満悦!
「「あ、暑くなってきたわ!」」
「んふふ、そうでしょう、そうでしょう!
このまま少し時間を置いたら、外の冷えたお部屋で涼みますの。
初心者なので、無理だけはしてはいけませんわ」
「「もちろんよ」」
今世の僕の体も初心者だし虚弱体質だからね。
少しの間暑さに耐えていれば····。
「お嬢様」
額に汗をかいたニーアが早めに僕を促す。
「先に1度出ますわ」
「気をつけて動くのよ」
「私も行こう」
レイチェル様を残して出ると、秋の紅葉が目に入る。
義父様達と1度領に戻ってから、季節が1つ過ぎて今は秋真っ只中だ。
僕達は汗を軽く拭いて、リクライニングチェアに座ってくつろぐ。
このお部屋は常に風が循環する作りになっていて、魔具を使って室内温度を15度くらいに保っているんだ。
基本的に魔法が使える貴族向けのサウナ施設だから、洗浄の魔法をかけて作務衣のまま水風呂に入って魔法で服を乾かしてからまたサウナに入るのもありだよ。
「アリー」
ニーアに弾泉水をもらって喉を潤していると、改まったようにジェン様に呼びかけられる。
「はい、ジェン様」
「力になってくれて、ありがとう。
心からお礼を言うわ」
「大衆浴場も貴族用の温泉施設も盛況みたいで、良かったです」
「タイミングも良かったの。
王太子殿下の婚約式と披露目の夜会で各国の代表がこの国に訪れていたから」
温泉施設がオープンするまでのスーパーモデルのお顔は、少しずつ緊張感を孕んでいった。
でも数ヶ月経って、温泉街では観光客があふれ、平民向けの大衆浴場は今や整理番号制度を取り入れるほどの人気をはくし、貴族向けの温泉施設も予約が来年の春頃まで埋まってるんだって。
オープンした時期がこの国の王太子殿下と、開国してまだミステリアスなイメージのあるジャガンダ国のお姫様の婚約イベント真っ最中だったのもあって、他国の代表者達も偵察がてらこの領に足を運んだんだ。
もちろんこれは狙っての事だよ。
だから急ピッチで整備して、ジェン様はもちろん、領民達も間に合わせようと頑張ったんだ。
お陰で今では他国からの観光客もたくさん訪れるようになっていて、多分このままいけば負債も早く無くせるだろうし、雇用状況の改善に合わせて隣国ザルハード国の流民達の問題も解消できるんじゃないかな。
ザルハード国のゼストゥウェル第1王子も自国の国王や大臣達と出稼ぎに関する法整備を整えたみたいだし。
もちろん反対勢力からの妨害はあったみたいなんだけどね。
オープンぎりぎりまで問題行動を起こしまくってた小チンピラ王子のお陰であまり強く出られなくなったみたい。
それまではどうしてだか彼の良くない噂、まあ実話なんだけど、それが隣国には出回ってなかったんだ。
でも各国の代表が行き来したのもあったのかもね。
少なくとも皆はそう思ってるよ。
突然風の噂で実話が出回り始め、それがどうやらあちらの王都にまで到達したみたい。
不思議だよね、風の噂って。
で、時を同じくして王子の留学中止の旨を通達した後、婚約のお披露目の席で王子自らが王位継承権の放棄を宣言したんだって。
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