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391.囁きと噂
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「でもまさかあのザルハード国第3王子があのタイミングで王位継承権の放棄を口にするなんて。
てっきり王位に着くことに執着していると思っていたのに」
「私もでしてよ、シュレジェンナ様。
よりによって我が国の王太子殿下婚約披露パーティーの席で、ゼストゥウェル王子に宣言したのには驚きましたわ。
その後固く手を握り合って隣に立つ末王女にプロポーズまでしたところを目撃しましてよ」
さすがにザルハード国の正妃よりも後ろ盾が大きくなった側妃も、各国の貴賓の目がある場での異母兄への宣言は無かった事にできなかったみたい。
一応場所は来賓向けに開放していた庭園だったみたいだけど、人目はそれなりにあるよね。
でもどうしてかな?
魅了魔法は僕がほぼ解除したし、レイヤード義兄様からもあの後完全解除できたって聞いてたんだ。
アレに心から惚れてもいなかったように見えたんだけど····。
····わざと?
そういえば僕を庇おうとしてたけど····今はまだ判断材料が乏しくて何とも言えない。
「元々留学生の責任者となっている王太子殿下の留学生全員の中止勧告も間近と囁かれておりましたから、王女も含めて醜聞ですわね。
我が国に留まっていた第3王子のこれまでの実態までもがザルハード国の王都にまで広まった以上、もみ消しもできないのではなくて?」
「ええ、本当に。
何故これまでアドライド国内にのみ王子の醜聞が留まっていたのかは、あえて追求しない方が良いでしょうけれどね。
けれど噂が出回る速さが些か不自然にも感じるわ」
艶女とスーパーモデルの美女2人が怪訝なお顔で首をひねる中、それとなく心当たりのある僕はお顔が引きつりそうだ。
家族で帰宅して数日経ったある日、グレビル邸の自室で風を感じてお昼寝から目を覚ますと、透明感のある緑灰色の目とぶつかった。
『トゥリ?』
金緑色の短髪をしたワイルドな美形の名前を呟きながら体を起こせば、力強く抱きしめられる。
『んぐっ』
ガタイの良い筋肉質な体だから、潰されて変な声が出ちゃうのは仕方ないと思う。
『目が覚めたか!
報告だ!
俺の愛し子をわざと傷つけようとしたからな!
腹がたって闇と光が守護してきたあの国で少しばかり囁いてきたぞ!」
寝起きに耳元で大声は心臓に悪いし、僕の状況にはいつも気づいてもらえないのが玉に傷だ。
「あのチンピラ王子は阿呆で愚か者な癖に偉そうにしていて留学中、女にうつつを抜かして王の器などではないとな!
そうしたら俺の子らも囁き始めてしまったのだ!
はっはっは!
だが止める理由もないし愉快な事この上ないから放って来た!」
それは……明日には噂が国中に……というか、いつ囁いたんだろう?
精霊さん達と僕達人族とでは時間の感覚が違う。
既に広まりきってる可能性が高い。
「それよりそろそろいいか?
水の加護もある程度馴染んだだろう?
さあさあ、俺の愛し子よ!
風の加護を受け取るのだ!』
そう言って他の精霊王達と同じように額や頬に何回もキスして加護をくれた。
そのお陰でちょっと精神が落ち着いたみたい。
以来過呼吸は起こらなくなって、正直助かったんだけど····。
『アンタ人界に影響させ過ぎなのよ!
アンタの囁きは大通りのど真ん中で大音量で叫んでるのと一緒だから、程度を考えなさいっていつも言ってるでしょう!
理に触れるすれすれだったじゃないの!
私の愛し子に何かあったらどうしてくれんのよ!
つうか私の可愛いアリーから離れなさい!
この筋肉ムキムキセクハラ男!』
て言いながらフェルが乱入してきて、僕をトゥリから引き剥がした。
と思ったら、お顔が柔らかなお胸に埋もれた。
『何を言っている!
今が愛し子の一大事ではないか!
光の巨乳で窒息死だ!』
『黙んなさい!
このクソ風!
私が加護を与えたかったのに、アンタのせいでできなくなったじゃないの!
またね、私の可愛いアリー。
この騒がしいお祭り男は連れて行くから、ちゃんと休むのよ!』
言うが早いか彼の首根っこ引っ掴んで消えちゃった。
あの2人、他の精霊さん達から騒がしツートップって言われてるだけの事はあるなって、しばらく呆然としてたのを思い出す。
「どちらにしても辺境の地の次期領主としては、隣接した国の情勢は穏やかであって欲しいものよ」
ジェン様のお声は切実だ。
それには僕もコクコク頷く。
あれ、僕を見たジェン様の頬が赤く染まってうっとりした?
「はぁ、私だってプロポーズしたいわ」
え、唐突にどうしたの?!
ていうか誰に?!
スーパーモデルの逆プロポーズとか、気になる!!
「アリー、そっとしておきなさい。
シュレジェンナ様、くれぐれもおよしになってちょうだい。
色々引き上げてしまいましてよ?」
聞きたかったけど、それより早く艶女が制止する····何故?!。
「くっ····自制するわ」
あれ?!
結局やめちゃうの?!
····聞きたかったのに。
「はあ、そんな残念そうな顔をされると····未練と希望が····」
「シュレジェンナ様、それはありませんことよ」
「くっ····サウナで流してくるわ」
バッサリ切られたスーパーモデルは足早にサウナへ。
流すのは汗だけだろうか。
目元が既にウルウルしてたけど····失恋?
はっ、まさかお相手は従兄様?!
「アリー、違いましてよ。
何となくですけれど、違うのは間違いありませんわ」
どうして考えている事が····なのに生温かい目をする理由が、逆に僕にはさっぱりだ。
てっきり王位に着くことに執着していると思っていたのに」
「私もでしてよ、シュレジェンナ様。
よりによって我が国の王太子殿下婚約披露パーティーの席で、ゼストゥウェル王子に宣言したのには驚きましたわ。
その後固く手を握り合って隣に立つ末王女にプロポーズまでしたところを目撃しましてよ」
さすがにザルハード国の正妃よりも後ろ盾が大きくなった側妃も、各国の貴賓の目がある場での異母兄への宣言は無かった事にできなかったみたい。
一応場所は来賓向けに開放していた庭園だったみたいだけど、人目はそれなりにあるよね。
でもどうしてかな?
魅了魔法は僕がほぼ解除したし、レイヤード義兄様からもあの後完全解除できたって聞いてたんだ。
アレに心から惚れてもいなかったように見えたんだけど····。
····わざと?
そういえば僕を庇おうとしてたけど····今はまだ判断材料が乏しくて何とも言えない。
「元々留学生の責任者となっている王太子殿下の留学生全員の中止勧告も間近と囁かれておりましたから、王女も含めて醜聞ですわね。
我が国に留まっていた第3王子のこれまでの実態までもがザルハード国の王都にまで広まった以上、もみ消しもできないのではなくて?」
「ええ、本当に。
何故これまでアドライド国内にのみ王子の醜聞が留まっていたのかは、あえて追求しない方が良いでしょうけれどね。
けれど噂が出回る速さが些か不自然にも感じるわ」
艶女とスーパーモデルの美女2人が怪訝なお顔で首をひねる中、それとなく心当たりのある僕はお顔が引きつりそうだ。
家族で帰宅して数日経ったある日、グレビル邸の自室で風を感じてお昼寝から目を覚ますと、透明感のある緑灰色の目とぶつかった。
『トゥリ?』
金緑色の短髪をしたワイルドな美形の名前を呟きながら体を起こせば、力強く抱きしめられる。
『んぐっ』
ガタイの良い筋肉質な体だから、潰されて変な声が出ちゃうのは仕方ないと思う。
『目が覚めたか!
報告だ!
俺の愛し子をわざと傷つけようとしたからな!
腹がたって闇と光が守護してきたあの国で少しばかり囁いてきたぞ!」
寝起きに耳元で大声は心臓に悪いし、僕の状況にはいつも気づいてもらえないのが玉に傷だ。
「あのチンピラ王子は阿呆で愚か者な癖に偉そうにしていて留学中、女にうつつを抜かして王の器などではないとな!
そうしたら俺の子らも囁き始めてしまったのだ!
はっはっは!
だが止める理由もないし愉快な事この上ないから放って来た!」
それは……明日には噂が国中に……というか、いつ囁いたんだろう?
精霊さん達と僕達人族とでは時間の感覚が違う。
既に広まりきってる可能性が高い。
「それよりそろそろいいか?
水の加護もある程度馴染んだだろう?
さあさあ、俺の愛し子よ!
風の加護を受け取るのだ!』
そう言って他の精霊王達と同じように額や頬に何回もキスして加護をくれた。
そのお陰でちょっと精神が落ち着いたみたい。
以来過呼吸は起こらなくなって、正直助かったんだけど····。
『アンタ人界に影響させ過ぎなのよ!
アンタの囁きは大通りのど真ん中で大音量で叫んでるのと一緒だから、程度を考えなさいっていつも言ってるでしょう!
理に触れるすれすれだったじゃないの!
私の愛し子に何かあったらどうしてくれんのよ!
つうか私の可愛いアリーから離れなさい!
この筋肉ムキムキセクハラ男!』
て言いながらフェルが乱入してきて、僕をトゥリから引き剥がした。
と思ったら、お顔が柔らかなお胸に埋もれた。
『何を言っている!
今が愛し子の一大事ではないか!
光の巨乳で窒息死だ!』
『黙んなさい!
このクソ風!
私が加護を与えたかったのに、アンタのせいでできなくなったじゃないの!
またね、私の可愛いアリー。
この騒がしいお祭り男は連れて行くから、ちゃんと休むのよ!』
言うが早いか彼の首根っこ引っ掴んで消えちゃった。
あの2人、他の精霊さん達から騒がしツートップって言われてるだけの事はあるなって、しばらく呆然としてたのを思い出す。
「どちらにしても辺境の地の次期領主としては、隣接した国の情勢は穏やかであって欲しいものよ」
ジェン様のお声は切実だ。
それには僕もコクコク頷く。
あれ、僕を見たジェン様の頬が赤く染まってうっとりした?
「はぁ、私だってプロポーズしたいわ」
え、唐突にどうしたの?!
ていうか誰に?!
スーパーモデルの逆プロポーズとか、気になる!!
「アリー、そっとしておきなさい。
シュレジェンナ様、くれぐれもおよしになってちょうだい。
色々引き上げてしまいましてよ?」
聞きたかったけど、それより早く艶女が制止する····何故?!。
「くっ····自制するわ」
あれ?!
結局やめちゃうの?!
····聞きたかったのに。
「はあ、そんな残念そうな顔をされると····未練と希望が····」
「シュレジェンナ様、それはありませんことよ」
「くっ····サウナで流してくるわ」
バッサリ切られたスーパーモデルは足早にサウナへ。
流すのは汗だけだろうか。
目元が既にウルウルしてたけど····失恋?
はっ、まさかお相手は従兄様?!
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何となくですけれど、違うのは間違いありませんわ」
どうして考えている事が····なのに生温かい目をする理由が、逆に僕にはさっぱりだ。
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