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417.父は認めないぞ〜ヘルトside
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「俺の可愛い天使に?」
訝しげな声はバルトス=グレインビル。
いくつになっても可愛い、私の息子だ。
私の可愛い天使な娘、アリアチェリーナが先週、滞在していたファムント領から、専属侍女1人を連れていなくなった。
どうやら内部紛争中の隣国、ザルハード国へ赴いたらしい。
あちらの国のゴミカス第3王子が何かしら手引きしたようだ。
私に反対されるのは、わかりきっていたのだろう。
あちらに到着してから、そこにいる2人の息子達にもそれぞれに連絡が来た。
通信ではなく手紙だったのは、娘が今回の行動に後ろめたさを感じている事の現れだ。
ファムント領には、2度と行かせない。
天使な娘が動くと、何故かトラブルが発生するが、ファムント領の温泉地計画も軌道に乗った。
アドバイザーとなった天使な娘の力を、いつまでもアテにされては困る。
あそこの領主、というより表立って動いていた、天使な娘に惚れた次期領主になるのか。
彼女が気づくのが遅れたのは、天使な娘がしれっとアリバイ工作していたせいだ。
恐らく天使な娘に傾倒する精霊王のどれかが手を貸したに違いない。
そうでなければ性別を諸共せずに、正式な求婚書を送りつけてきた、あの次期領主気づくのに1週間もかからない。
ちなみにこの国は、同性婚を認めていない。
領主がそれをやると、後々問題が生まれるからだ。
事実婚なら、無くはない。
天使な娘の護衛兼専属侍女、ニーアが私達に連絡を寄越さなかったのは、何かしらの納得があってこそだと推察できる。
そもそもニーアの雇用主は、天使な娘だったりする。
父親の私に報告する義務は、厳密に言えば無い。
以前の専属侍女達、中でもココという侍女の凄惨な死があって以来、天使な娘はどこかでニーアを突き離していた。
それが連れて行ったなら、ヒュイルグ国での一件が天使な娘の内面に変化を与えたという事だ。
それ自体は、喜ばしい。
喜ばしいが、帰ってきたら、何かしらお仕置きだな。
ここだけの話、完全なる事後承諾でめまいがする。
よりによって隣国とは……。
何故そんな事をしでかしたのかは、わからない。
しかし連絡を寄越した以上、強制的に連れ戻すのは避けたい。
あの子には以前から探している者がいる。
突然このように動くなら、それはその者に関わる事だろうと、前々から告げられていたからでもある。
その者が娘の中で大きな存在となっているのは、ずっと見てきたのだから、言われるまでもない。
息子達もそれに気づいているからこそ、無理矢理な行動だけはせずにいる。
「ああ、そうだ。
君達の可愛い天使に呼ばれてね。
ザルハード国の聖ファルメシア教会支部まで、会いに行ってくるよ」
涼しい顔でそう答えたのは、成人した3人の息子がいるとは思えない、青髪に桃色の目をした中性的な印象を与える女性。
我が国の三大筆頭公爵家が1つを背負う、ロアン=リュドガミド前公爵だ。
先日、長男に家督を譲ったと公表した彼女が、突然ここに来た。
良くも悪くも、このタイミングには、眉を顰めるものがあり、こうして客間に通した。
しかし天使な娘が呼んだと言ったか?
何故だ?
娘との接点など……。
無いと断定しかけて、同じく次男のレイヤードの隣に座り、共に円卓を囲むルドルフ元第2王子に目をやる。
彼は既に臣籍降下した身だが、一応はまだ城預かりとなっている。
彼の兄、ギディアス王太子が正式に婚姻後、城から出て与えられた領地に行く予定だ。
コイツもまた、天使な娘を狙うハイエナだ。
ちょうどレイヤードが天使な娘からの知らせを受け取った時、たまたま側にいたらしい。
臨時講師を務めるかたわら、休みの度に可愛いうちの次男からの手ほどきを受けている。
恐らくこの第2王子共々誘拐された、あの狩猟祭の時だ。
あの時、王妃主催のお茶会で出会っている。
「何故リュドガミド前公爵が?!
そんな所にアリー嬢が行った理由を、ご存知なのか?!」
そう言って立ち上がりかけた元王子は、そもそも無理矢理ごねてこの場にいる。
だが、それを許したのは可愛い次男だ。
まさか天使な娘と添わせようなどと考えていないよな?
父は認めないぞ。
訝しげな声はバルトス=グレインビル。
いくつになっても可愛い、私の息子だ。
私の可愛い天使な娘、アリアチェリーナが先週、滞在していたファムント領から、専属侍女1人を連れていなくなった。
どうやら内部紛争中の隣国、ザルハード国へ赴いたらしい。
あちらの国のゴミカス第3王子が何かしら手引きしたようだ。
私に反対されるのは、わかりきっていたのだろう。
あちらに到着してから、そこにいる2人の息子達にもそれぞれに連絡が来た。
通信ではなく手紙だったのは、娘が今回の行動に後ろめたさを感じている事の現れだ。
ファムント領には、2度と行かせない。
天使な娘が動くと、何故かトラブルが発生するが、ファムント領の温泉地計画も軌道に乗った。
アドバイザーとなった天使な娘の力を、いつまでもアテにされては困る。
あそこの領主、というより表立って動いていた、天使な娘に惚れた次期領主になるのか。
彼女が気づくのが遅れたのは、天使な娘がしれっとアリバイ工作していたせいだ。
恐らく天使な娘に傾倒する精霊王のどれかが手を貸したに違いない。
そうでなければ性別を諸共せずに、正式な求婚書を送りつけてきた、あの次期領主気づくのに1週間もかからない。
ちなみにこの国は、同性婚を認めていない。
領主がそれをやると、後々問題が生まれるからだ。
事実婚なら、無くはない。
天使な娘の護衛兼専属侍女、ニーアが私達に連絡を寄越さなかったのは、何かしらの納得があってこそだと推察できる。
そもそもニーアの雇用主は、天使な娘だったりする。
父親の私に報告する義務は、厳密に言えば無い。
以前の専属侍女達、中でもココという侍女の凄惨な死があって以来、天使な娘はどこかでニーアを突き離していた。
それが連れて行ったなら、ヒュイルグ国での一件が天使な娘の内面に変化を与えたという事だ。
それ自体は、喜ばしい。
喜ばしいが、帰ってきたら、何かしらお仕置きだな。
ここだけの話、完全なる事後承諾でめまいがする。
よりによって隣国とは……。
何故そんな事をしでかしたのかは、わからない。
しかし連絡を寄越した以上、強制的に連れ戻すのは避けたい。
あの子には以前から探している者がいる。
突然このように動くなら、それはその者に関わる事だろうと、前々から告げられていたからでもある。
その者が娘の中で大きな存在となっているのは、ずっと見てきたのだから、言われるまでもない。
息子達もそれに気づいているからこそ、無理矢理な行動だけはせずにいる。
「ああ、そうだ。
君達の可愛い天使に呼ばれてね。
ザルハード国の聖ファルメシア教会支部まで、会いに行ってくるよ」
涼しい顔でそう答えたのは、成人した3人の息子がいるとは思えない、青髪に桃色の目をした中性的な印象を与える女性。
我が国の三大筆頭公爵家が1つを背負う、ロアン=リュドガミド前公爵だ。
先日、長男に家督を譲ったと公表した彼女が、突然ここに来た。
良くも悪くも、このタイミングには、眉を顰めるものがあり、こうして客間に通した。
しかし天使な娘が呼んだと言ったか?
何故だ?
娘との接点など……。
無いと断定しかけて、同じく次男のレイヤードの隣に座り、共に円卓を囲むルドルフ元第2王子に目をやる。
彼は既に臣籍降下した身だが、一応はまだ城預かりとなっている。
彼の兄、ギディアス王太子が正式に婚姻後、城から出て与えられた領地に行く予定だ。
コイツもまた、天使な娘を狙うハイエナだ。
ちょうどレイヤードが天使な娘からの知らせを受け取った時、たまたま側にいたらしい。
臨時講師を務めるかたわら、休みの度に可愛いうちの次男からの手ほどきを受けている。
恐らくこの第2王子共々誘拐された、あの狩猟祭の時だ。
あの時、王妃主催のお茶会で出会っている。
「何故リュドガミド前公爵が?!
そんな所にアリー嬢が行った理由を、ご存知なのか?!」
そう言って立ち上がりかけた元王子は、そもそも無理矢理ごねてこの場にいる。
だが、それを許したのは可愛い次男だ。
まさか天使な娘と添わせようなどと考えていないよな?
父は認めないぞ。
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