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418.そもそも何故〜ヘルトside
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「はぁ、ルド。
ひとまず落ち着きなよ。
僕の可愛いアリーは、ファムント領でザルハード国第3王子とそのお供数名に誘われて、それに乗っただけだと言ったはずだよ」
可愛い次男__レイヤードが元王子を諭す。
「まさか拐われたのか?!」
元王子は結局立ち上がったが、聞き間違いだ。
落ち着け、元王子。
「ルド、誘われたんだよ。
今は情勢が情勢だし、君はまだ城に居を構える準王族だ。
言葉に気をつけて」
「……さそわ……ああ……その、申し訳ない」
次男の言葉にハッとし、浮かした腰を再び椅子に沈めた。
だが他ならぬ可愛い次男も、いくらか魔力が身中で荒ぶっているのに気づいているだろうか。
弟子のような存在である元王子がいるからこそ、師匠として表向きは平静を保てているのだろう。
「ザルハード国王家には連絡をしてある。
もちろんゼストゥウェル第1王子にもだ。
2人共、落ち着け」
バルトスの言葉に、可愛い長男は冷静だったかと感心……いや、長男に出されたカップの表面が軽く凍っている。
可愛い長男よ、お前も落ち着け。
「それで、何故こちらへ来たのか教えて貰えるかな」
落ち着かない息子達を、明らかに面白そうな様子で見ていた前公爵に尋ねる。
すると今度は私を見て肩をすくめ、苦笑した。
「殺気を向けるのはやめて欲しいな、侯爵。
グレインビル嬢が私を呼んだのは、あの子の中で家族である君達より、私の存在が軽いからなのは明白だよ」
「おや、ついうっかり」
今度は私が肩をすくめた。
どうやら父親として、彼女へと密かなジェラシーを感じていた事に、気づかれてしまったか。
私も可愛い天使な娘に呼びつけられたいものだ。
ヒュイルグ国にいた時、父親の私ではなく、兄のバルトスに寂しいと泣きついた事を、未だに根に持っているんだぞ、天使な娘よ。
「本当はふらっと行くつもりだったんだよ?
でもグレインビル嬢は、今の家族だけは心から愛しているみたいだったから、後々誤解が生まれないように一応、一言断りは入れようかなと思ってね」
「今の?」
彼女の言葉に引っかかりを覚えれば、元王子もそうだったようだ。
聞き返す。
「違うのかい?」
「いや、アリー嬢がグレインビル家の面々を何よりも愛しているのは間違いない。
しかしその言い方だと、今ではない家族を公爵は知っているかのようではないか?」
「そうだね、知らないわけでは無いよ。
けど、あの子は何も話していなかったのかな?」
長男の言葉に、前公爵は、と首を傾げた。
「どういう……」
「知らなかったかな?
私は魔人属だ」
「…………は?!」
驚いたのは、元王子だけだ。
もちろんここにいる彼以外は、全員気づいていただろう。
「随分長く生きたからね。
あの子の存在だけは、知っていたんだ。
数年前のあの狩猟祭の時に、私の知る子供と、グレインビル嬢が同一人物だと気がついた」
「何故今になってそれを?」
今さらそこに驚きはしない。
あの子が霧の神殿のどこかで、恐らく長い間地獄の苦痛に苛まれながら生きてきた事は、あの過呼吸の症状からも推察できた。
だが1番わからないのは、何故今頃になって彼女がそれを私達に伝えるのかだ。
「そろそろ寿命でね。
先日無事、爵位も息子に引き継いだ。
そんな時、あの子に呼ばれれば、タイミングだと思って腹をくくるしかない。
あの子が私を呼ぶとしたら、思い当たるのは1つだけだからね」
自嘲気味に微笑むその瞳に浮かぶのは……後悔の色だろうか?
魔人属の寿命は最低でも数百年はある。
霧の神殿を人々が確認してから数百年は経っているのだから、それ以上生きている事になる。
彼女は一体どれくらい生きたのだろう。
しかし女性に実年齢を聞くのは、いくら私でもできない。
最愛の妻から生前約束させられた禁止事項でもあるからな。
「それは……」
「残念ながらそれは言えない」
突然の新事実に気がせっているのか?
元王子がややフライング気味に理由を尋ねようとして、前公爵に途中で拒否された。
そもそも何故、部外者の元王子が私の可愛い天使な娘の過去話を共に聞いているんだろうか。
今からつまみ出しても良いが、可愛い次男の手前、それもしづらいぞと悩む複雑な父心だ。
ひとまず落ち着きなよ。
僕の可愛いアリーは、ファムント領でザルハード国第3王子とそのお供数名に誘われて、それに乗っただけだと言ったはずだよ」
可愛い次男__レイヤードが元王子を諭す。
「まさか拐われたのか?!」
元王子は結局立ち上がったが、聞き間違いだ。
落ち着け、元王子。
「ルド、誘われたんだよ。
今は情勢が情勢だし、君はまだ城に居を構える準王族だ。
言葉に気をつけて」
「……さそわ……ああ……その、申し訳ない」
次男の言葉にハッとし、浮かした腰を再び椅子に沈めた。
だが他ならぬ可愛い次男も、いくらか魔力が身中で荒ぶっているのに気づいているだろうか。
弟子のような存在である元王子がいるからこそ、師匠として表向きは平静を保てているのだろう。
「ザルハード国王家には連絡をしてある。
もちろんゼストゥウェル第1王子にもだ。
2人共、落ち着け」
バルトスの言葉に、可愛い長男は冷静だったかと感心……いや、長男に出されたカップの表面が軽く凍っている。
可愛い長男よ、お前も落ち着け。
「それで、何故こちらへ来たのか教えて貰えるかな」
落ち着かない息子達を、明らかに面白そうな様子で見ていた前公爵に尋ねる。
すると今度は私を見て肩をすくめ、苦笑した。
「殺気を向けるのはやめて欲しいな、侯爵。
グレインビル嬢が私を呼んだのは、あの子の中で家族である君達より、私の存在が軽いからなのは明白だよ」
「おや、ついうっかり」
今度は私が肩をすくめた。
どうやら父親として、彼女へと密かなジェラシーを感じていた事に、気づかれてしまったか。
私も可愛い天使な娘に呼びつけられたいものだ。
ヒュイルグ国にいた時、父親の私ではなく、兄のバルトスに寂しいと泣きついた事を、未だに根に持っているんだぞ、天使な娘よ。
「本当はふらっと行くつもりだったんだよ?
でもグレインビル嬢は、今の家族だけは心から愛しているみたいだったから、後々誤解が生まれないように一応、一言断りは入れようかなと思ってね」
「今の?」
彼女の言葉に引っかかりを覚えれば、元王子もそうだったようだ。
聞き返す。
「違うのかい?」
「いや、アリー嬢がグレインビル家の面々を何よりも愛しているのは間違いない。
しかしその言い方だと、今ではない家族を公爵は知っているかのようではないか?」
「そうだね、知らないわけでは無いよ。
けど、あの子は何も話していなかったのかな?」
長男の言葉に、前公爵は、と首を傾げた。
「どういう……」
「知らなかったかな?
私は魔人属だ」
「…………は?!」
驚いたのは、元王子だけだ。
もちろんここにいる彼以外は、全員気づいていただろう。
「随分長く生きたからね。
あの子の存在だけは、知っていたんだ。
数年前のあの狩猟祭の時に、私の知る子供と、グレインビル嬢が同一人物だと気がついた」
「何故今になってそれを?」
今さらそこに驚きはしない。
あの子が霧の神殿のどこかで、恐らく長い間地獄の苦痛に苛まれながら生きてきた事は、あの過呼吸の症状からも推察できた。
だが1番わからないのは、何故今頃になって彼女がそれを私達に伝えるのかだ。
「そろそろ寿命でね。
先日無事、爵位も息子に引き継いだ。
そんな時、あの子に呼ばれれば、タイミングだと思って腹をくくるしかない。
あの子が私を呼ぶとしたら、思い当たるのは1つだけだからね」
自嘲気味に微笑むその瞳に浮かぶのは……後悔の色だろうか?
魔人属の寿命は最低でも数百年はある。
霧の神殿を人々が確認してから数百年は経っているのだから、それ以上生きている事になる。
彼女は一体どれくらい生きたのだろう。
しかし女性に実年齢を聞くのは、いくら私でもできない。
最愛の妻から生前約束させられた禁止事項でもあるからな。
「それは……」
「残念ながらそれは言えない」
突然の新事実に気がせっているのか?
元王子がややフライング気味に理由を尋ねようとして、前公爵に途中で拒否された。
そもそも何故、部外者の元王子が私の可愛い天使な娘の過去話を共に聞いているんだろうか。
今からつまみ出しても良いが、可愛い次男の手前、それもしづらいぞと悩む複雑な父心だ。
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