秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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432.【爺より愛をこめて】

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「食べるか?」
「キュイキュイ」
「……ねえ、グレインビル嬢はまだかしら?」

 王妃がお膝に乗せた僕の口元に、ケーキを小さくすくったフォークを差し出す。
もちろん僕はパクッとしちゃう。

 何だか僕の頭の更に上を見ながら、対面で座る2人の内の1人が雑音を漏らしたけど、無視でいっか。
お茶会と聞いていたけど、夜会に出るような場違いな格好だし、どこかの勘違いした貴族っぽい誰かが混ざったみたい。

 もう1人対面に座るエセ教皇や、そんな2人の後ろに侍る見慣れたエセ神官達、他にも侍女、聖騎士がザワザワしていて、ちょっと煩わしい。

「え?
次はマカロン?」
「キュイキュイ」
「……聞いてらして?」

 次はアレだと指差せば、ちゃんと取ってくれる。
今の僕には大きなサイズのマカロンだけど、器用なイタチハンドで上下に半分。

 あ、もちろん食べる前に手は綺麗にしてあるよ。

「ふふ、私にも?
美味しいね」
「キュイキュイ」
「……先程から、何故無視しているの」

 んふふ、1人分を半分こして食べるのも、何だか久しぶりで楽しいな。
王妃の口調が昨日と違うのは、この場にそういう立場で招待を受けたからだよ。

 にしても、相変わらず雑音が酷いね。

 僕達の後ろには美人騎士が1人と、今朝方目を覚ました僕の前に侍女として登場したニーア。

 昨日聞こえてきた2人の、怪しい女性っぽいお声の主達は、どこにいるんだろう?

 夢……ではないと思うんだ。

「ねえ、エリザベートさん?」

 何となく最初の頃と違って、苛々感が混じった雑音から、王妃のお名前が聞こえた気がするな。
けどこんなお城の外部の人間がたくさんいる場で、王妃をさん付けで呼ぶなんて、絶対あり得ないよね。

 きっと親が自国の王妃にあやかって付けられた、侍女あたりの名前を呼んだんだろうな。

「王妃殿下、マーガレット妃殿下がずっと話しかけておられます。
返事をなさってはいかがかな?」

 やれやれと言いたげに横槍を入れたのはエセ教皇だ。
相変わらず社会科の教科書の宣教師的登場人物風だね。

 ちなみにこの国で妃殿下と呼んでいいのは、王妃に対してだけ。
側妃を呼ぶ時には妃殿下ではなく、必ず側妃殿下と呼んで、違いをハッキリさせておかなければならない。

 やっぱり彼は真の教皇ではない。
エセな教皇だ。

 あと、僕をチラチラ横目で見ているけど、僕が白いイタチになったのまでは知らなかったのかな?

 一応僕、王妃、側妃で今日の昼過ぎにお茶会をするって、例によって第3王子とキティが窓から叫んでたから、ちゃんとこうして新しい着ぐるみに着替えて、出席してるんだよ?

 起きたらウサ耳付きのフードがついた着ぐるみをニーアが差し出した。
着替えようとしたら、【爺より愛をこめて】っていう小さなメッセージカードが服の間に挟まってて、心がほんわかしちゃったよ。

 でも、できる執事のセバスチャンの字だったけど、僕が一瞬確認した途端、ニーアがカードを燃やしてしまったんだ。
僕はこういうのは取り置きしておく方だけど、暫くイタチで過ごすつもりだったから、グレインビル侯爵令嬢として、あしがつかないようにしたんだと思う。

 僕がニーアを見てサンドウィッチを指差せば、ニーアはそれを小皿に取って王妃に差し出した。

「ん?
サンドウィッチ?
私に?」
「キュイキュイ」
「いつまで無視するつもり!」
 __バン。

 今度はテーブルを叩く雑音がしたね。

「……美味しいわ」
「キュイキュイ」

 ふっふっふ。
僕が厨房でお願いして作ってもらっていた、ドライカレーをサンドしてあるからね。
中には神の実って呼ばれているらしい、あっちの世界でいうディーツを刻んで入れてあるから、甘みも感じてお茶には合うはずだよ。

「エリザベート!」

 もう、煩いな。
王妃がいる場で王妃と同じ侍女の名前を呼び捨てで叫ぶのは、さすがにどうかと思うよ?

「マーガレット妃殿下、落ち着いて下さい。
あの侍女はグレインビル嬢の侍女であったはず。
そこのお前、ご令嬢はどちらにいる?
ご令嬢の提案を受け入れ、王妃殿下をお招きした聖フェルメシア教会を愚弄するかのような態度は許されんぞ」

 良く言うよ。
今度は人分しかデザートを用意していなかったくせに。

 僕か王妃、どっちの準備を怠ったんだろうね?

「猊下」

 その時、慌てた様子の神官が現れてエセ神官に耳打ちし、男性エセ神官がエセ教皇に背後から耳打ちした。
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