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439.知っている、けれど……〜ティキーside
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「お願いします、王女様!
コッへ様……ネルシス侯爵令息の所に行かせて下さい!」
ここに連れて来られてから、丸1日経ったけれど、私はずっとここから出してもらえない。
今のコッへ様は毎日朝昼晩、聖属性の回復魔法をかけ続けなければならない。
そうしないと、すぐに昏睡して、呼吸が弱くなっていく。
ただの怪我でない事は確かだけれど、原因がわからない。
階段から落ちたなんて間違いなく嘘よ!
まるで拷問されたような傷ばかりじゃない!
聖女にあるまじき事だとわかっていても、ずっとお慕いしていた婚約者の現状に、怒りがこみ上げる。
一昨日からようやく消え始めたところだったのに!
グレインビル嬢の侍女の力は借りられなかった。
それは仕方ないと納得しているわ。
無理を言って、隣国から来てくれただけでも有り難い。
何より、聞けばコッへ様はアドライド国に留学中、あの方へあまりにも無礼な態度を取り続けていたようだもの。
それに自分や自分の国の事だけしか考えられていなかった、知ろうとすらせず、当然のように縋っただけの私の話を、きちんと聞いてくれた。
その上で、そうする事の何が問題なのかを、わかりやすく教えてくれたわ。
平民で、この国の位置づけ的にはその中でも下の階層とされる獣人の私によ。
エリュシウェル様の反応からして、アドライド国においても、それを教えてくれた事は、きっとあの方の立場ならしなくても良かった事だったはずなの。
理解も納得もすぐにできなくて、怒らせたにも関わらず、これがこの国なら問答無用で殺されたって文句も言えないのに、よ。
同じ事で2度も怒らせてしまったのに、それでも決して無理矢理ではなく、理由を伝えてくれた。
恵まれていると、素直に感謝できたの。
だって私達下々の者は、知らされないのが当たり前。
特に獣人の聖女なんて、意志を持つ事すらおこがましいと言われ、死ぬまで教会の為にだけ力を使う事を当然とされているのに。
更にあの方は、非協力的どころか、むしろ治療させるなとの方針だった教皇様に口添えしてくれた。
お陰でこの教会支部の神官や聖女見習いの治癒魔法の練習とする事で、コッへ様は命を繋いでこれた。
私はもちろんだけど、他の皆も力を尽くしてくれた。
お陰でやっと、あそこまで回復してきたのに。
なのにどうして私はこんな所にいるの?!
気が狂いそう!
「ねえ、どうしてそんなに必死なの?
コッへはあなたの事なんて、ずっと興味を持っていなかったのよ?
ネルシス侯爵令息として、家の為に仕方なくあなたと婚約していただけ。
ずっと他の……何て言っていたかしら……リリ……うーん……まあどこかの勘違い聖女候補で、伯爵令嬢に入れこんだり、私と出会ってからは、私に夢中だったのよ?」
赤みの強いピンクの髪に灰色の瞳をした王女様の言葉に、心が軋む音がした。
知っているわ、そんなの。
コッへ様と一緒に、少しの間だけ留学していたのは、リリーシェ=ハンソン伯爵令嬢。
聖女の認定を受ける間近だった。
けれどあの方は留学を中止して、この国に戻ってきてしまった。
詳しい経緯は教えられていなかったけれど、アドライド国の王太子様のご不興を買ったとかで、留学を中止。
ザルハード国王家からも正式に婚約を破棄されて、心を痛め、聖女の力が消えてしまったと聞かされた。
半年程してからかしら。
静養先で自ら命を断ったと知った時には、立場から親しくはして貰えなかったけれど、同じ聖女候補として、胸が痛んだの。
私が聖女として教会から正式に認められたのは、その後。
コッへ様との婚約が正式に決まったのも、その頃。
コッへ様が私との婚約にずっと拒否的だったのも、会おうとすらなさらなかったのも……知っていたわ。
もちろんいつも私ではない誰かに心を奪われているのも、ずっと私の片想いだった事も……。
『君に愛情を持てるかわからない。
俺からすれば政略結婚だし、先日やっと自分の主や自分自身の憑き物が落ちたような、そんな感覚になれたばかりなんだ。
もし君が、こんな俺とは婚約したくないなら、その意志を尊重する。
君の立場からは破棄できないだろうから、俺の有責にして解消できるよう働きかける』
ある日突然、ここまで会いに来てくれた彼は、そう言ってから、言葉を続けたの。
コッへ様……ネルシス侯爵令息の所に行かせて下さい!」
ここに連れて来られてから、丸1日経ったけれど、私はずっとここから出してもらえない。
今のコッへ様は毎日朝昼晩、聖属性の回復魔法をかけ続けなければならない。
そうしないと、すぐに昏睡して、呼吸が弱くなっていく。
ただの怪我でない事は確かだけれど、原因がわからない。
階段から落ちたなんて間違いなく嘘よ!
まるで拷問されたような傷ばかりじゃない!
聖女にあるまじき事だとわかっていても、ずっとお慕いしていた婚約者の現状に、怒りがこみ上げる。
一昨日からようやく消え始めたところだったのに!
グレインビル嬢の侍女の力は借りられなかった。
それは仕方ないと納得しているわ。
無理を言って、隣国から来てくれただけでも有り難い。
何より、聞けばコッへ様はアドライド国に留学中、あの方へあまりにも無礼な態度を取り続けていたようだもの。
それに自分や自分の国の事だけしか考えられていなかった、知ろうとすらせず、当然のように縋っただけの私の話を、きちんと聞いてくれた。
その上で、そうする事の何が問題なのかを、わかりやすく教えてくれたわ。
平民で、この国の位置づけ的にはその中でも下の階層とされる獣人の私によ。
エリュシウェル様の反応からして、アドライド国においても、それを教えてくれた事は、きっとあの方の立場ならしなくても良かった事だったはずなの。
理解も納得もすぐにできなくて、怒らせたにも関わらず、これがこの国なら問答無用で殺されたって文句も言えないのに、よ。
同じ事で2度も怒らせてしまったのに、それでも決して無理矢理ではなく、理由を伝えてくれた。
恵まれていると、素直に感謝できたの。
だって私達下々の者は、知らされないのが当たり前。
特に獣人の聖女なんて、意志を持つ事すらおこがましいと言われ、死ぬまで教会の為にだけ力を使う事を当然とされているのに。
更にあの方は、非協力的どころか、むしろ治療させるなとの方針だった教皇様に口添えしてくれた。
お陰でこの教会支部の神官や聖女見習いの治癒魔法の練習とする事で、コッへ様は命を繋いでこれた。
私はもちろんだけど、他の皆も力を尽くしてくれた。
お陰でやっと、あそこまで回復してきたのに。
なのにどうして私はこんな所にいるの?!
気が狂いそう!
「ねえ、どうしてそんなに必死なの?
コッへはあなたの事なんて、ずっと興味を持っていなかったのよ?
ネルシス侯爵令息として、家の為に仕方なくあなたと婚約していただけ。
ずっと他の……何て言っていたかしら……リリ……うーん……まあどこかの勘違い聖女候補で、伯爵令嬢に入れこんだり、私と出会ってからは、私に夢中だったのよ?」
赤みの強いピンクの髪に灰色の瞳をした王女様の言葉に、心が軋む音がした。
知っているわ、そんなの。
コッへ様と一緒に、少しの間だけ留学していたのは、リリーシェ=ハンソン伯爵令嬢。
聖女の認定を受ける間近だった。
けれどあの方は留学を中止して、この国に戻ってきてしまった。
詳しい経緯は教えられていなかったけれど、アドライド国の王太子様のご不興を買ったとかで、留学を中止。
ザルハード国王家からも正式に婚約を破棄されて、心を痛め、聖女の力が消えてしまったと聞かされた。
半年程してからかしら。
静養先で自ら命を断ったと知った時には、立場から親しくはして貰えなかったけれど、同じ聖女候補として、胸が痛んだの。
私が聖女として教会から正式に認められたのは、その後。
コッへ様との婚約が正式に決まったのも、その頃。
コッへ様が私との婚約にずっと拒否的だったのも、会おうとすらなさらなかったのも……知っていたわ。
もちろんいつも私ではない誰かに心を奪われているのも、ずっと私の片想いだった事も……。
『君に愛情を持てるかわからない。
俺からすれば政略結婚だし、先日やっと自分の主や自分自身の憑き物が落ちたような、そんな感覚になれたばかりなんだ。
もし君が、こんな俺とは婚約したくないなら、その意志を尊重する。
君の立場からは破棄できないだろうから、俺の有責にして解消できるよう働きかける』
ある日突然、ここまで会いに来てくれた彼は、そう言ってから、言葉を続けたの。
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