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450.古王〜ニーアside
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『君は、僕の代になって初めて覚醒した古王だ。
できれば生きておいて欲しいけど、無理矢理生かされるのも、つらいでしょう』
淡々と話す幼いお嬢様に、あの時は敵意しか湧かなかった。
『ずっとその子と、耐えてきたんだよね?
僕にとってあの子がそうだったように、君にとってはその子が半身のような存在かな。
そんな存在が突然奪われて、絶望する気持ちは共感できる』
お嬢様の言うあの子が誰なのかは、未だにわからない。
この時は気にも止めなかった。
だって初めはまだ温かかった、自分と同じ顔の姉の体が……冷えてきっていくから。
放っておいても、きっと死んでしまったと思う。
それくらい、姉の傷は深かった。
けれど、あと少しだけなら生きられた。
そんな姉を殺したのは……私。
その事に絶望し、そんな全ての現実を打ち消そうと必死だった。
『理不尽に曝され続けた挙げ句、奪われた事もない、大事な人をその手にかけた事もない、良いところのお嬢様に、何がわかる?
共感?
ふざけるな』
もちろん今でも、お嬢様の過去に関わる全てを、教えられてはいない。
正直、聞こうと思った事もない。
現在のお嬢様しか、私は興味がないから。
ただ、今よりもずっと、何も知らなかったのは当然で。
だからお嬢様を見た目で判断して、助けてくれて、最期に姉を救ってもくれたのに、噛みついた。
姉は自分を1人残して逝ってしまう事を侘び、生きろと言って、こと切れた。
姉に理不尽に与えられた死。
私を置いて逝くくせに、自分に生きろだなどと、理不尽な願いを口にした姉。
置いて逝かれて感じる孤独と恐怖。
それら全てに対する怒りが……むしろ私に正気を保たせた。
苦しくて、気が狂いそうな程に苦しくて、なのに狂えない事が、苦しくて仕方なかった。
だから出来なかった。
呪縛が解けて、もう自由に行使できる魔力を練り、この平和ボケしてそうな、綺麗で可愛らしい貴族の幼女を魔法で苦しめてやりたいと、何度も何度も考えていても……。
『僕は見た目より、ずっと年を取っているよ。
幸せを願った大事な人が、突然亡くなった事もある。
長らく理不尽に曝され続けた事も、僕なんかを守って生きろと言いながら、自分達は死んで逝く沢山の人達を、ただ見届けるしか出来なかった事もある。
その時苦痛を共有して、励まし続けてくれた存在を、奪われた事もある。
でもその存在は、まだ生きてるって信じていられるから、君の気持ちを解るとまでは、言わないけど』
あの時お嬢様は冷や汗をかき、顔色は血の気を失い、青を通り越して真っ白。
そんな状況で、嘘を吐くとは、流石に思えなかった。
それでもやっぱり、そんな話を信じたくなくて、この場にいる自分と姉以外の存在も、許せなかった。
許せなかったけれど、どうしてか話すのを止める事もしたくない。
相反したかのような気持ちが生まれていて……無性に泣きたい衝動も出てきて、更に戸惑う。
どんな時も、殴られても蹴られても、泣きたいなんて思った事はなかったのに。
『古王とは、何だ?』
だからとお嬢様の話で、引っかかった言葉を尋ねた。
『古の王の事。
義務を負う代わりに、その気になれば一国の王になれるくらいには、魔力も強くなる。
実際、過去の古王の何人かは、王として玉座に就いていたから』
『はっ、強く?
玉座?』
思わず鼻で笑ってしまう。
『笑わせるな!』
そんな力があったなら、姉を喪わずに済んだ。
囚われる事自体、なかったはずだ。
『例えだよ。
それに君が古王として目覚めたのは、ついさっきだもの。
ただ君が望むと望むまいと、古王として目覚めたら、新たに生まれた孤王の力を循環し、調和させていく事を勝手に世界から紐づけされてしまうらしい』
『ふざけるな!』
怒りが膨れ、魔力も自然に体を駆け巡る。
体が……熱い。
『今更だ!
大事な家族を喪った後で、こんな力なんかいらない!
私は……私は……』
本当は、死にたい。
けれど……姉を手にかけ、その姉が自分の生を願って逝ってしまったら……言えない。
__ビュッ。
制御できない魔力のうねりが体から発生して、幼女を襲う。
頭のどこかで、いけないと思う。
それでも心からの静止にはなれなくて……。
__ザッ!
正面からそれを受けたお嬢様の体に、鋭い切創が幾筋もでき、血が流れ始めた。
できれば生きておいて欲しいけど、無理矢理生かされるのも、つらいでしょう』
淡々と話す幼いお嬢様に、あの時は敵意しか湧かなかった。
『ずっとその子と、耐えてきたんだよね?
僕にとってあの子がそうだったように、君にとってはその子が半身のような存在かな。
そんな存在が突然奪われて、絶望する気持ちは共感できる』
お嬢様の言うあの子が誰なのかは、未だにわからない。
この時は気にも止めなかった。
だって初めはまだ温かかった、自分と同じ顔の姉の体が……冷えてきっていくから。
放っておいても、きっと死んでしまったと思う。
それくらい、姉の傷は深かった。
けれど、あと少しだけなら生きられた。
そんな姉を殺したのは……私。
その事に絶望し、そんな全ての現実を打ち消そうと必死だった。
『理不尽に曝され続けた挙げ句、奪われた事もない、大事な人をその手にかけた事もない、良いところのお嬢様に、何がわかる?
共感?
ふざけるな』
もちろん今でも、お嬢様の過去に関わる全てを、教えられてはいない。
正直、聞こうと思った事もない。
現在のお嬢様しか、私は興味がないから。
ただ、今よりもずっと、何も知らなかったのは当然で。
だからお嬢様を見た目で判断して、助けてくれて、最期に姉を救ってもくれたのに、噛みついた。
姉は自分を1人残して逝ってしまう事を侘び、生きろと言って、こと切れた。
姉に理不尽に与えられた死。
私を置いて逝くくせに、自分に生きろだなどと、理不尽な願いを口にした姉。
置いて逝かれて感じる孤独と恐怖。
それら全てに対する怒りが……むしろ私に正気を保たせた。
苦しくて、気が狂いそうな程に苦しくて、なのに狂えない事が、苦しくて仕方なかった。
だから出来なかった。
呪縛が解けて、もう自由に行使できる魔力を練り、この平和ボケしてそうな、綺麗で可愛らしい貴族の幼女を魔法で苦しめてやりたいと、何度も何度も考えていても……。
『僕は見た目より、ずっと年を取っているよ。
幸せを願った大事な人が、突然亡くなった事もある。
長らく理不尽に曝され続けた事も、僕なんかを守って生きろと言いながら、自分達は死んで逝く沢山の人達を、ただ見届けるしか出来なかった事もある。
その時苦痛を共有して、励まし続けてくれた存在を、奪われた事もある。
でもその存在は、まだ生きてるって信じていられるから、君の気持ちを解るとまでは、言わないけど』
あの時お嬢様は冷や汗をかき、顔色は血の気を失い、青を通り越して真っ白。
そんな状況で、嘘を吐くとは、流石に思えなかった。
それでもやっぱり、そんな話を信じたくなくて、この場にいる自分と姉以外の存在も、許せなかった。
許せなかったけれど、どうしてか話すのを止める事もしたくない。
相反したかのような気持ちが生まれていて……無性に泣きたい衝動も出てきて、更に戸惑う。
どんな時も、殴られても蹴られても、泣きたいなんて思った事はなかったのに。
『古王とは、何だ?』
だからとお嬢様の話で、引っかかった言葉を尋ねた。
『古の王の事。
義務を負う代わりに、その気になれば一国の王になれるくらいには、魔力も強くなる。
実際、過去の古王の何人かは、王として玉座に就いていたから』
『はっ、強く?
玉座?』
思わず鼻で笑ってしまう。
『笑わせるな!』
そんな力があったなら、姉を喪わずに済んだ。
囚われる事自体、なかったはずだ。
『例えだよ。
それに君が古王として目覚めたのは、ついさっきだもの。
ただ君が望むと望むまいと、古王として目覚めたら、新たに生まれた孤王の力を循環し、調和させていく事を勝手に世界から紐づけされてしまうらしい』
『ふざけるな!』
怒りが膨れ、魔力も自然に体を駆け巡る。
体が……熱い。
『今更だ!
大事な家族を喪った後で、こんな力なんかいらない!
私は……私は……』
本当は、死にたい。
けれど……姉を手にかけ、その姉が自分の生を願って逝ってしまったら……言えない。
__ビュッ。
制御できない魔力のうねりが体から発生して、幼女を襲う。
頭のどこかで、いけないと思う。
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__ザッ!
正面からそれを受けたお嬢様の体に、鋭い切創が幾筋もでき、血が流れ始めた。
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