秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子

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483.500年前と300年前〜ジルコミアside

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「ハッ、にわかには信じられねえ話だ。
記憶を持ったまま転生?
転生って話自体、信憑性に欠けるのに、それを魔法で?」

 ベルヌの様子から、半信半疑だとわかる。
疑う事そのもの不敬だ。
でも私も話してくれたのが女王でなければ、正直信じられない。

 ベルヌからは私のように女王を崇拝する気持ちが感じられないものの、私達と女王との付き合いもそれなりに長くなってきている。
聡明な女王が、冗談でこんな事を口にする性格でない事くらいはベルヌも理解しているんだろう。

「そう言いながらも、半分は信じているみたいね」

 女王はクスリと微笑んでから、特に気にする様子もなくベルヌの横やりを無視して話を戻す。

500年前、ザルハード国は今よりずっと酷い貧困と飢餓に苛まれ、紛争が各地で勃発していた。
この国全体が瘴気で覆われ、人が魔獣のような、異形の何かに成り果てる奇病を発症していたわ。
そこに光の精霊王を引き連れた聖女が降臨した。
聖女はこの国の瘴気を浄化し、異形となる奇病を鎮めて人々を救い、聖女は光の精霊王にこの国を守るように伝え、いなくなった。
以来、フェルメシア教会は光の精霊王を祀る国教となり、国を立て直す一助となった。
そうよね?」
「は、はい!」

 突然話しかけられた教皇はビクリと飛び上がりかけ、ベルヌに押さえつけられたまま、首を縦に振る。

 女王が今話した内容と、私が知る歴史との相違はない。

 なのに女王は可笑しそうにクスクスと笑い始めた。

 私と女王を除いて、他の奴らは皆女王を不審な顔で見やる。

「本当に、私の王配は上手くやってくれたわ」

 女王はひとしきり笑ってからそう告げる。

「その聖女とやらが精霊王を引き連れてこの国を浄化したのは本当よ。
けれど実際は300年前。
そして当初引き連れていたのは、光の精霊王だけじゃないの。
闇の精霊王も共にいたわ」
「……へ?」
「随分と間抜けな声ね、マーガレット。
教皇は……そう。
闇の精霊王がいた話は知っていたようだけれど、その顔色では信じていなかったのね」

 見れば教皇は驚愕したように女王を凝視している。

「聖女は闇と光の精霊王の力を借り、全て元に戻したの。
瘴気が発生して目茶苦茶になる前の状態にね。
直後に闇の精霊王が消えたのは、寿命。
だから聖女がこの国を立て直すまで見守るように頼んだのは、必然的に光の精霊王となっただけ。
当時の私はまだ女王だったし、正直そんな力を持つ聖女の存在は統治に邪魔だったわ。
何せ聖女信仰が瞬く間に広がるくらい、カリスマ性に溢れていたのだもの」
「聖女信仰?
光の精霊王信仰じゃなくてか?」

 ベルヌ同様、私もそこは引っかかる。

「そうよ。
当初は聖女を信仰していたの。
けれど聖女はすぐに姿を消したから、ひとまず情報操作して光の精霊王が聖女を伴い、民を救った事にした」
「聖女を殺したのか」

 ベルヌの奴め。
あたかも断定したように女王を蔑んだ目で見るとは……だが、何でだ?
それを肯定しかける自分がいる?

「殺していないわ。
そんな事、できるはずがない。
だって聖女は私の娘として生まれたばかりの孤王だったのだもの」
「……何?」
「信じられない?
でもベルヌがそう感じるのもわかるわ。
私も生まれたばかりの赤子が精霊王と契約を済ませていただけでなく、魔法も当然のように使えるとは思っていなかったのだもの。
結局、孤王は赤子であっても孤王だったと言わざるを得ないわ」

 恐らく女王はわが子を思い出したのだろう。
苦笑する様は言う事をきかない子供に、お手上げだと微笑ましく諦める親のような顔。

 なのにどうしてだ?
声音と灰色の目に、嫉妬を孕んでいる気がしてならない。

「孤王は生後1週間した頃に数日、行方不明になっていたの。
それからほどなくして、気づいたら私の宮殿に戻ってきていた。
ザルハード国が持ち直したと私に報告がきたのはその後すぐだったわ。
幼い竜人の従者しか基本的に側に置いていなかったから、誘拐されたのかと思っていたけれど、違っていた」
「運良く……腐ってんな」
「だって孤王が存在しなければ、私も実験なんてする必要がなかったし、ザルハード国の民達もあれ以上苦しむ都合が良かったもの。
それでも一応わが子だから、幼いながらにもそこらの人属よりは優秀な竜人を従者にしてあげたのよ」

 実験……あれ以上苦しむ?

 女王の言葉に、どこか冷静な自分が首を傾げた。
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