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484.不純物と100年後〜ジルコミアside
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「ちょっと待て。
じゃあ昔のザルハード国に発生した瘴気や奇病っつうのは……」
ベルヌが、そして今度ばかりは教皇と側妃も同時に、ハッとしたように女王へと目を向けた。
「言ったでしょう、実験で不純物が生じたって」
可笑しそうに笑う女王。
そんな女王も悪くない。
心からそう思うのに、怒りがこみ上げる。
何に対しての怒りかわからない事に、戸惑う。
「場所的に、私の直接治める当時の王都から程良く良く離れていて、かつ監視ができる場所となると、ザルハード国が適切だったわ。
それに貧困から大して税金も納めていなかったから、滅んでも良かったもの。
私の代理でそこを治める者も、民も、代わりはいくらでもいたわ。
1度一新しておくのも、悪くないじゃない」
女王は睨みつけるベルヌが口を開く間を与えず、話す。
「結局最後は私の生後間もない娘が救ったのだから、良いじゃない。
それに戻ってきた娘が私の狙い通りに仕掛けの一部になれると実証できた。
貴重で有意義な犠牲じゃないかしら」
「ふざけるな。
子供、それも赤子に自分の尻拭いさせただけだろう」
ベルヌが嫌悪、いや、怒りを女王に向ける。
子供好きもあるからだろう。
あの白銀の髪をしたグレインビル嬢に肩入れしてきたのも、出会った時は幼い子供だったし、成人した今も見た目は子供だ。
以前、ヒュイルグ国で拐った時に着替えさせるのに裸を見たが、貧相でまだ未熟な子供体型だった。
病気がちで食事が喉を通らない時もあると聞いている。
そういえば、暫く姿を隠しているんだったか。
まさか体調を崩して動けなくなってないよな?
「ベルヌったら、いつまでつまらない正義感に支配されているの?」
自分がどんなに冷たくあしらっても作った料理を差し出してくる、可愛らしい少女を案じていれば、女王の声にハッとする。
わざとらしい苦笑いと、明らかに嘲る声音。
不快感が迫り上がり……私は、この女王は、おかしい、のか?
どうして私は女王を……いや、そもそも女王ではなく、王女で……。
頭の中で、ただ女王として崇拝しろと囁く何かに、疑問を覚える。
これまでの陶酔感が薄れていく。
……何だ?
自分の感情が相反するように2つ存在して、剥離していくような気持ち悪さが襲う。
「私は女王だったのよ。
つまり私こそが正しく、それに反する者は全て悪。
それに私が女王として統治していたから、この世界の大半の民が平和を享受できた。
だから誰も、民だって文句は言わなかった。
ザルハード国で生きる者達も、知らなければ問題ない。
むしろ私が与えた無償の支援物資に、泣いて喜んでいたわ」
「無償?
強制的な犠牲への、不十分な補償の間違いだろう」
そうな私の様子に気づく事なく、2人は話を続けていく。
「いいえ、十分。
だってそれから100年後に転生した私が見た時は、教会が王家と権力を二分するまでに成長していたのだもの。
けれどたった100年で上に立つ者としての知識も備えていない者達によって持ち直せば、歪んだ支配者も生じるわ。
そこにつけこんだ。
1度目の転生では予想通り、女王としての魔力がまだ半分は残っていたから、実力を示して聖女となるのも、取り入るのも簡単だった。
もちろん霧の神殿一帯に張った結界も張り直したのよ。
計画では次の100年後に再びこの教会に舞い戻り、この教会で聖女の再来として権勢を振るえるよう、その次で終わるはずだった最後の100年の為にも駒を揃え、下地を育てておこうとした。
下っ端だった神官に目をかけ、当時の教皇にも引き合わせて……それなのに……」
徐々に酷くなる顔色と体の震えに苛まれる教皇と側妃を王女は冷めた灰色の瞳で見やった。
「……た、助けて聖女様。
私はこの男に唆されて……」
「き、貴様!!」
教皇の焦りを滲ませた声を無視し、マーガレットは腰が抜けたまま、四つん這いになって女王の方へ這ってこようとした。
「ジルコ……ジルコ?
……ふぅん、効きが弱くなったみたいね。
ジルコミア、その女を押さえておきなさい」
「あ、ああ」
王女に名を呼ばれ、しかし自分の中の感情の揺れに意識を向けていたせいか、すぐに反応できずにいれば、何かを小さく呟いてから明確に命令される。
そこで我に返り、牢の中に入って側妃の首根っこを捕まえて留まらせた。
じゃあ昔のザルハード国に発生した瘴気や奇病っつうのは……」
ベルヌが、そして今度ばかりは教皇と側妃も同時に、ハッとしたように女王へと目を向けた。
「言ったでしょう、実験で不純物が生じたって」
可笑しそうに笑う女王。
そんな女王も悪くない。
心からそう思うのに、怒りがこみ上げる。
何に対しての怒りかわからない事に、戸惑う。
「場所的に、私の直接治める当時の王都から程良く良く離れていて、かつ監視ができる場所となると、ザルハード国が適切だったわ。
それに貧困から大して税金も納めていなかったから、滅んでも良かったもの。
私の代理でそこを治める者も、民も、代わりはいくらでもいたわ。
1度一新しておくのも、悪くないじゃない」
女王は睨みつけるベルヌが口を開く間を与えず、話す。
「結局最後は私の生後間もない娘が救ったのだから、良いじゃない。
それに戻ってきた娘が私の狙い通りに仕掛けの一部になれると実証できた。
貴重で有意義な犠牲じゃないかしら」
「ふざけるな。
子供、それも赤子に自分の尻拭いさせただけだろう」
ベルヌが嫌悪、いや、怒りを女王に向ける。
子供好きもあるからだろう。
あの白銀の髪をしたグレインビル嬢に肩入れしてきたのも、出会った時は幼い子供だったし、成人した今も見た目は子供だ。
以前、ヒュイルグ国で拐った時に着替えさせるのに裸を見たが、貧相でまだ未熟な子供体型だった。
病気がちで食事が喉を通らない時もあると聞いている。
そういえば、暫く姿を隠しているんだったか。
まさか体調を崩して動けなくなってないよな?
「ベルヌったら、いつまでつまらない正義感に支配されているの?」
自分がどんなに冷たくあしらっても作った料理を差し出してくる、可愛らしい少女を案じていれば、女王の声にハッとする。
わざとらしい苦笑いと、明らかに嘲る声音。
不快感が迫り上がり……私は、この女王は、おかしい、のか?
どうして私は女王を……いや、そもそも女王ではなく、王女で……。
頭の中で、ただ女王として崇拝しろと囁く何かに、疑問を覚える。
これまでの陶酔感が薄れていく。
……何だ?
自分の感情が相反するように2つ存在して、剥離していくような気持ち悪さが襲う。
「私は女王だったのよ。
つまり私こそが正しく、それに反する者は全て悪。
それに私が女王として統治していたから、この世界の大半の民が平和を享受できた。
だから誰も、民だって文句は言わなかった。
ザルハード国で生きる者達も、知らなければ問題ない。
むしろ私が与えた無償の支援物資に、泣いて喜んでいたわ」
「無償?
強制的な犠牲への、不十分な補償の間違いだろう」
そうな私の様子に気づく事なく、2人は話を続けていく。
「いいえ、十分。
だってそれから100年後に転生した私が見た時は、教会が王家と権力を二分するまでに成長していたのだもの。
けれどたった100年で上に立つ者としての知識も備えていない者達によって持ち直せば、歪んだ支配者も生じるわ。
そこにつけこんだ。
1度目の転生では予想通り、女王としての魔力がまだ半分は残っていたから、実力を示して聖女となるのも、取り入るのも簡単だった。
もちろん霧の神殿一帯に張った結界も張り直したのよ。
計画では次の100年後に再びこの教会に舞い戻り、この教会で聖女の再来として権勢を振るえるよう、その次で終わるはずだった最後の100年の為にも駒を揃え、下地を育てておこうとした。
下っ端だった神官に目をかけ、当時の教皇にも引き合わせて……それなのに……」
徐々に酷くなる顔色と体の震えに苛まれる教皇と側妃を王女は冷めた灰色の瞳で見やった。
「……た、助けて聖女様。
私はこの男に唆されて……」
「き、貴様!!」
教皇の焦りを滲ませた声を無視し、マーガレットは腰が抜けたまま、四つん這いになって女王の方へ這ってこようとした。
「ジルコ……ジルコ?
……ふぅん、効きが弱くなったみたいね。
ジルコミア、その女を押さえておきなさい」
「あ、ああ」
王女に名を呼ばれ、しかし自分の中の感情の揺れに意識を向けていたせいか、すぐに反応できずにいれば、何かを小さく呟いてから明確に命令される。
そこで我に返り、牢の中に入って側妃の首根っこを捕まえて留まらせた。
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