10 / 124
2.
10.色呆け皇帝〜暁嵐side
しおりを挟む
『我が国の陛下の醜聞たるお噂は辺境の地である我が領にも広く轟いております。
こと後宮の内情に関わる噂は、あまりに酷いもの』
くそ、耳が痛いな。
だが俺だって好きでやっているわけではない。
これでも純愛なんだよ、皇妃へのな。
正式な立場は皇貴妃だが、他人と区別したいのと、他国の一夫一妻制度の国の王妃や皇妃のつもりで呼んでいる。
俺にとっての妻は皇妃だけだ。
貴妃と違って皇妃は後宮内、皇宮内の統制を皇帝と共に統治する。
政にも参加する。
主に治水事業と外交が多いが。
貴妃達は各宮を個別に統括する。
だから事前調査録なんていつものごとく、まともに見ていなかった。
下手をすれば三嬪よりも後ろ盾は弱いからと侮った。
初夜がどうとか朝から丞相に言われ続けていたから、今日は貴妃が増えた日かとなんの感慨もなく、ただ認識しただけだったのだ。
もちろん初夜などに付き合ってやる理由もない。
俺からすれば、どうせ勝手に後宮に入りこむ他人なのだから。
政務を終えて幼馴染の顔になったあの者に、初夜へ向かえと蹴り飛ばされてこの場に来た。
しかしそれは、ここを突っ切れば最短で最愛の妻の住む宮へ辿り着くからだ。
南宮にいる妻の元には北宮に当たるここを突っ切るのが1番早い。
大体、まさかこんな廃宮の物入れに貴妃なんかいるとか思うか?!
まあここは流石に手違いだろうが……手違い、だよな?
俺にだって良心くらいはあるのだ。
そもそもそこは、昔いじめに耐えかねて下女が首をくくり、その後にここの主が病没して縁起が悪いからと宮ごと廃宮になった、その元凶の小屋だぞ。
女のいじめ怖いな。
まさか幼馴染でもあるあの丞相が俺の行動を予測して……いや、それでも自殺現場の物入れは無いだろう……多分……腹黒にだって良心くらいはあると信じたい。
一応あの小娘は貴妃だし。
貴妃は皇貴妃に次ぐ高位の妃だ。
その下に嬪と続く。
昔は更に貴人やら常在やらがいたが、先々々代くらいから徐々に減らして廃止させていった。
国庫食い過ぎなんだよ。
特に当時は入宮に際して持参金も献金も無かったらしい。
何代か前の皇帝が海向こうの国の制度を取り入れた。
三国統一した7代前の皇帝が色呆けで、征服した国やら同盟国やら手当たり次第に女を後宮に入れていき、最大数百人規模にまで膨れ上がっていた。
それに仕える者達を足せば、数千人規模の後宮だったのだから、恐ろしい。
三国といってもそれぞれの国には属国も含めた小国も点在していたから、統一させた初代皇帝は尊敬している。
小さいものから大きなものまで各国で紛争が多発して、当時は三国全土が疲弊していたのだ。
大海を挟んだり挟まなかったりする、明らかなに異文化な国々からは当然狙われる事になる。
統一する事で侵略に限って言えば、民が怯える事は無くなった。
その為に政略としてあちこちの国々から妃やら妃っぽいのやらを後宮に入宮させまくったのも……まあ……わからなくもない。
それ以降何代かの皇帝がそういう政策は取っていたが、それにしたって数百人はやり過ぎだ。
一夜に十数人を相手にしたとかいう逸話もあるが、概ね真実らしい。
そんな初代皇帝が国王時代、実は唯一望んだ女人がいたとかいう逸話があるが、絶対嘘だ。
色呆け皇帝を払拭する為の作り話だと俺は信じている。
「くそ、ユー。
許せ」
俺が唯一操をたてる至宝の玉、皇妃玉翠に謝り、踵を返す。
早く俺達の間にこそ世継ぎを作らねばならぬのにと焦るものの、俺の魔力とユーの魔力の差があり過ぎるようでなかなか出来ない。
この10年程で3度出来たが、すぐに流れてしまった。
俺の魔力が高過ぎるのが問題だ。
恐らく他の貴妃や嬪とて同じ事。
「なのにあの古狸共がっ」
怒りで魔力が漏れて勝手に覇気が出たが、誰も見ていないからどうでも良かろう。
『やはり皇貴妃1人では荷が重いのでしょうな。
初代皇帝もあれ程の規模の後宮を抱えながら、出産までできたのは4人。
無事に1年を迎えた御子は3人ですぞ?』
帝都の軍事を司る長、燕峰雲大尉がそう言い出した。
蘭花宮の主の父親だ。
こと後宮の内情に関わる噂は、あまりに酷いもの』
くそ、耳が痛いな。
だが俺だって好きでやっているわけではない。
これでも純愛なんだよ、皇妃へのな。
正式な立場は皇貴妃だが、他人と区別したいのと、他国の一夫一妻制度の国の王妃や皇妃のつもりで呼んでいる。
俺にとっての妻は皇妃だけだ。
貴妃と違って皇妃は後宮内、皇宮内の統制を皇帝と共に統治する。
政にも参加する。
主に治水事業と外交が多いが。
貴妃達は各宮を個別に統括する。
だから事前調査録なんていつものごとく、まともに見ていなかった。
下手をすれば三嬪よりも後ろ盾は弱いからと侮った。
初夜がどうとか朝から丞相に言われ続けていたから、今日は貴妃が増えた日かとなんの感慨もなく、ただ認識しただけだったのだ。
もちろん初夜などに付き合ってやる理由もない。
俺からすれば、どうせ勝手に後宮に入りこむ他人なのだから。
政務を終えて幼馴染の顔になったあの者に、初夜へ向かえと蹴り飛ばされてこの場に来た。
しかしそれは、ここを突っ切れば最短で最愛の妻の住む宮へ辿り着くからだ。
南宮にいる妻の元には北宮に当たるここを突っ切るのが1番早い。
大体、まさかこんな廃宮の物入れに貴妃なんかいるとか思うか?!
まあここは流石に手違いだろうが……手違い、だよな?
俺にだって良心くらいはあるのだ。
そもそもそこは、昔いじめに耐えかねて下女が首をくくり、その後にここの主が病没して縁起が悪いからと宮ごと廃宮になった、その元凶の小屋だぞ。
女のいじめ怖いな。
まさか幼馴染でもあるあの丞相が俺の行動を予測して……いや、それでも自殺現場の物入れは無いだろう……多分……腹黒にだって良心くらいはあると信じたい。
一応あの小娘は貴妃だし。
貴妃は皇貴妃に次ぐ高位の妃だ。
その下に嬪と続く。
昔は更に貴人やら常在やらがいたが、先々々代くらいから徐々に減らして廃止させていった。
国庫食い過ぎなんだよ。
特に当時は入宮に際して持参金も献金も無かったらしい。
何代か前の皇帝が海向こうの国の制度を取り入れた。
三国統一した7代前の皇帝が色呆けで、征服した国やら同盟国やら手当たり次第に女を後宮に入れていき、最大数百人規模にまで膨れ上がっていた。
それに仕える者達を足せば、数千人規模の後宮だったのだから、恐ろしい。
三国といってもそれぞれの国には属国も含めた小国も点在していたから、統一させた初代皇帝は尊敬している。
小さいものから大きなものまで各国で紛争が多発して、当時は三国全土が疲弊していたのだ。
大海を挟んだり挟まなかったりする、明らかなに異文化な国々からは当然狙われる事になる。
統一する事で侵略に限って言えば、民が怯える事は無くなった。
その為に政略としてあちこちの国々から妃やら妃っぽいのやらを後宮に入宮させまくったのも……まあ……わからなくもない。
それ以降何代かの皇帝がそういう政策は取っていたが、それにしたって数百人はやり過ぎだ。
一夜に十数人を相手にしたとかいう逸話もあるが、概ね真実らしい。
そんな初代皇帝が国王時代、実は唯一望んだ女人がいたとかいう逸話があるが、絶対嘘だ。
色呆け皇帝を払拭する為の作り話だと俺は信じている。
「くそ、ユー。
許せ」
俺が唯一操をたてる至宝の玉、皇妃玉翠に謝り、踵を返す。
早く俺達の間にこそ世継ぎを作らねばならぬのにと焦るものの、俺の魔力とユーの魔力の差があり過ぎるようでなかなか出来ない。
この10年程で3度出来たが、すぐに流れてしまった。
俺の魔力が高過ぎるのが問題だ。
恐らく他の貴妃や嬪とて同じ事。
「なのにあの古狸共がっ」
怒りで魔力が漏れて勝手に覇気が出たが、誰も見ていないからどうでも良かろう。
『やはり皇貴妃1人では荷が重いのでしょうな。
初代皇帝もあれ程の規模の後宮を抱えながら、出産までできたのは4人。
無事に1年を迎えた御子は3人ですぞ?』
帝都の軍事を司る長、燕峰雲大尉がそう言い出した。
蘭花宮の主の父親だ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
24
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる