太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

文字の大きさ
21 / 124
3.

21.同列の妻

しおりを挟む
「ついでにこの宮への人の出入り権限もございます?
ああ、証文は?」
「ありますよ。
貴女の信を失した事への責任は後宮の責任者お2人の落ち度ですし、他の重鎮にも貴女からの持参金や現状については話を通して異例ですが認めていただきました。
この宮での裁量は従来より主たる貴妃の物。
それに加えて本来の後宮に認められる最低限の人員は外から雇い入れる事を正式に了承しております。
ただしその場合、その者達の責は貴女が負い、当然に正規の近衛や女官達からの不満は出るでしょう。
それをふまえてお考え下さい」
「…………確かに」

 丞相の静かな声を聞き流しながら証文の内容を確認して首筋に手をやり、かさぶたをカリ、と引っ掻いて血をつけます。
その指で印を押して、魔力をこめて定着させます。

「普通は指の血ではないか」

 破落戸を近衛兵に預けた陛下は憮然としてらっしゃいますね。

「必要なのは血と魔力。
何事も有効利用ですし、首も薄皮一枚とはいえ不快な痛みはございますもの。
指まで切りたくはございませんし、今の私の宮は不衛生ですから、傷を増やすのは悪手では?」
「……」

 にっこり微笑みましたが、無言になられてしまいました。
流石に今は皇帝陛下のお顔をあまり崩されませんね。

「そうそう、後ろの方々でもし出処のわからぬ貴金属をお持ちでしたり、そのような物をお持ちの方を見かけておりましたらお声掛かの上、明日の正午の鐘がなる前にまとめてここへお持ちになって下さいましね。
まとめて持ってくるなら、個別にどなたがどこでどのような経緯で手に入れたかを追跡調査するのは面倒になりますもの。
もし破損や紛失しているようなら、弁済の金子を入れておいてくださいな。
もちろん返却の際には、誤って手にした事についての謝罪を金子に乗せて頂き、一筆したためていただければ、私の気持ちもその方に対してだけはいくらか平穏になりましょう。
貴妃の金品を盗んだ罪に問われるよりはマシかと思います。
私はそれで不問に致します」
「待て、後宮での盗難であろう。
何故そなたが裁量する」

 まあ、責任を果たされていないのに、権利を主張なさるのね。

「私は構わないと申しましたが、後宮の責任者方がどのように判断なさるかまで言及はしておりませんよ?
それにそもそもが私が入宮する前に送ったのですから、監督不行き届きの責任者が残りを弁済されるのが本来は筋というものでは?」
「口が過ぎるぞ」

 あら、覇気がちらほらお体から出ておりますね?
後ろの女官達の顔色が悪くなりましたよ?
皇貴妃は……堪えるように表情が硬くなりました。

 これは……色々と難儀しそうですね。
しかし契約を結んだ以上、コレも解決事項の1つと覚えておかねばなりませんね。

「法に則ったお話しで、何故なにゆえ法をもって時に裁きを下す尊き御方が憤るのかわかりかねます。
これに関してはどなたが責任者か存じ上げませんが、調べた方がよろしいのかしら?
その場合、本格的に刑罰としての証拠も提出する必要が出てまいりますが?」
「いい加減になさい!
ディーシャ!」

 皇貴妃が美しい顔を赤く色づかせて叫びますが、何故なにゆえ彼女が興奮なさるのでしょう?
それに名を呼び捨てる仲になった覚えはありません。

「いかがなさいました、玉翠ユースイ殿?」

 あえて名前を呼び返せば、我に返ったようでようございました。
美女に睨まれるのも慣れておりますから気に致しません。
そもそも皇貴妃と貴妃の立場は後宮においては同じですもの。
微笑むのみです。

「そもそもその方々の負担を幾らかでも減らそうとしただけの事ですが、この後宮並びに国に責任ある方々が全て弁済下さるならそれでもよろしいのですよ?
もちろん本来なら責任ある者がそうすべきであるという道理の元に私を諭してらっしゃるのでしたら、新参者の貴妃ではありますが皇貴妃と同列の陛下の妻。
法ではなく、道理にそいましょう」

 まあ、ぎゅっと下唇を噛んでは傷がつきますよ?
後ろの方々も、厳しい眼光は私ではなく今、正に御身に傷がつきそうな主に向けなくてよろしいのかしら?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在 唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話 中山加恋(20歳) 二十歳でトオルの妻になる 何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛 中山トオル(32歳) 17歳の加恋に一目ぼれ 加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する 加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる 会社では群を抜くほどの超エリートが、 愛してやまない加恋ちゃんに 振り回されたり落ち込まされたり… そんなイケメンエリートの ちょっと切なくて笑えるお話

処理中です...