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22.この宮の主
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「どなたを信用すべきかはわかりませんから、こちらから直接参るか、今いらっしゃる者達の中から皇貴妃が選んで遣わすかを希望致します」
まあ、微笑んではおりますけれど、翡翠に宿る光が冷えた気が致しますね?
まだご自分の周りを見回してらっしゃらないのですから、仕方ありません。
長らく陛下の寵愛によって立場を与えられ、傷つく事があっても真綿で中途半端に包まれて過ごしてらっしゃったせいでしよう。
詰めが甘い。
皇貴妃が後ろに控える妙齢の女官へ目配せすれば、すっと一歩前に。
年齢的にも身に着けている装飾品からも、長らく仕えてきたようです。
「あの者が参ります」
「正午の鐘が鳴るまでに取りにいらして。
来られなければ物見遊山がてらそちらの宮に直接持参致しますね」
「その必要は……」
女官はグッと1度口を固く結んでから、小さな声で呟きますが、やはり主が1番の権力者の寵を得ているからこその慢心が見て取れますね。
不承不承なのはともかく、そろそろ立場を明確にすべきでしょう。
不遜なのも度が過ぎますし、なによりこの者は最適。
「ねえ、貴女は私の立場が何だとお思い?
ああ、お話してよろしいわ」
皇貴妃のお付き達はざわつき、陛下のお付きは動じず、むしろ冷めた目をそちらに向けております。
ふむ、やはりこの者こそ最適なようです。
「貴妃……でございます」
「そうね?
ねえ、貴妃とはこの後宮において貴女達女官より立場が低いの?」
敬語は止めて、柔らかな声で語りかけます。
「いえ、皇貴妃に続く……お立場……」
「あら、そんなに青いお顔になってどうしたの?
体調が悪いなら、折角の皇貴妃から直々の指名だけれど、辞退しておく?」
「……いえ」
「そう。
私はこれから人を雇い入れる者達の責任を負うと、はっきり夫となる皇帝陛下に宣言した。
お前の何かしらの責任は、誰が負うの?」
後ろで何かを言おうとしたり、睨んだりと忙しいご夫婦は無視です。
それとなく丞相が止めていますね。
良き働きです。
向こうから睨む女官達を見やり、少し圧をかけながら微笑みます。
魔力は使いませんよ。
元太夫で傾国の娼妓の存在感というやつです。
微笑み1つであらゆる者を圧倒し、魅了するのがナンバーワンの魅せどころなのです。
「またあの顔……どこで……」
何でしょう?
陛下がボソッと何かを呟いておりますね?
「そろそろこの場にいる私を睨む女官達も理解しておくべきではない?
少なくとも先ほどの破落戸のようになれば、お前達自身が危なくなると何故想像できないのかしら?
特にお前は皇貴妃に長らく仕える、皇貴妃が信を置く女官では?
破落戸の時と違い、ここはもう私の宮なのよ?」
最後に青くなっていたこの女官には困ったように微笑めば、やっと両膝をついて謝罪を示す所作を取った。
「申し訳ございません、滴雫貴妃」
「「「申し訳ございません」」」
睨んだ女官達も膝をつく。
「主になって初めての失礼記念に許して差し上げるわ。
よろしいかしら、皇貴妃?」
ハッとし、悔しげな顔も一瞬のこと。
さすがです。
微笑み返してきましたね。
「ええ、礼を申します、貴妃」
やっと気づいたようですね。
首の血を使う下りであまり頭に入って無かったのでしょうか。
今はこの宮の主は私。
この宮で何かしらがあれば私の采配でご自分の臣下の首が飛ぶのだと。
流石に貴妃に大して不敬が過ぎたのだと。
「代わりにですが、理由はともかく、現状手土産もお持ちできない身の上です。
他の宮の貴妃にも皇貴妃よりご了承下さいと皇貴妃としてお伝え頂けますかしら?」
「……ええ」
あら、せっかくの微笑みが消えましたね。
もちろんこの事に触れるなら皇貴妃としての責任能力が無いと伝えるのと同義となりますものね。
ですがそれと引き換えの不問ですし、臣下の監督不行き届きどころか、目の前の不敬を諌めなかったご自身の責任ですよ。
あら、陛下からは完全に覇気が……。
丞相はこの言葉になにやら感心したようなお顔、からの周りの様子に気づいてやれやれと首を左右に振りました。
まあ、微笑んではおりますけれど、翡翠に宿る光が冷えた気が致しますね?
まだご自分の周りを見回してらっしゃらないのですから、仕方ありません。
長らく陛下の寵愛によって立場を与えられ、傷つく事があっても真綿で中途半端に包まれて過ごしてらっしゃったせいでしよう。
詰めが甘い。
皇貴妃が後ろに控える妙齢の女官へ目配せすれば、すっと一歩前に。
年齢的にも身に着けている装飾品からも、長らく仕えてきたようです。
「あの者が参ります」
「正午の鐘が鳴るまでに取りにいらして。
来られなければ物見遊山がてらそちらの宮に直接持参致しますね」
「その必要は……」
女官はグッと1度口を固く結んでから、小さな声で呟きますが、やはり主が1番の権力者の寵を得ているからこその慢心が見て取れますね。
不承不承なのはともかく、そろそろ立場を明確にすべきでしょう。
不遜なのも度が過ぎますし、なによりこの者は最適。
「ねえ、貴女は私の立場が何だとお思い?
ああ、お話してよろしいわ」
皇貴妃のお付き達はざわつき、陛下のお付きは動じず、むしろ冷めた目をそちらに向けております。
ふむ、やはりこの者こそ最適なようです。
「貴妃……でございます」
「そうね?
ねえ、貴妃とはこの後宮において貴女達女官より立場が低いの?」
敬語は止めて、柔らかな声で語りかけます。
「いえ、皇貴妃に続く……お立場……」
「あら、そんなに青いお顔になってどうしたの?
体調が悪いなら、折角の皇貴妃から直々の指名だけれど、辞退しておく?」
「……いえ」
「そう。
私はこれから人を雇い入れる者達の責任を負うと、はっきり夫となる皇帝陛下に宣言した。
お前の何かしらの責任は、誰が負うの?」
後ろで何かを言おうとしたり、睨んだりと忙しいご夫婦は無視です。
それとなく丞相が止めていますね。
良き働きです。
向こうから睨む女官達を見やり、少し圧をかけながら微笑みます。
魔力は使いませんよ。
元太夫で傾国の娼妓の存在感というやつです。
微笑み1つであらゆる者を圧倒し、魅了するのがナンバーワンの魅せどころなのです。
「またあの顔……どこで……」
何でしょう?
陛下がボソッと何かを呟いておりますね?
「そろそろこの場にいる私を睨む女官達も理解しておくべきではない?
少なくとも先ほどの破落戸のようになれば、お前達自身が危なくなると何故想像できないのかしら?
特にお前は皇貴妃に長らく仕える、皇貴妃が信を置く女官では?
破落戸の時と違い、ここはもう私の宮なのよ?」
最後に青くなっていたこの女官には困ったように微笑めば、やっと両膝をついて謝罪を示す所作を取った。
「申し訳ございません、滴雫貴妃」
「「「申し訳ございません」」」
睨んだ女官達も膝をつく。
「主になって初めての失礼記念に許して差し上げるわ。
よろしいかしら、皇貴妃?」
ハッとし、悔しげな顔も一瞬のこと。
さすがです。
微笑み返してきましたね。
「ええ、礼を申します、貴妃」
やっと気づいたようですね。
首の血を使う下りであまり頭に入って無かったのでしょうか。
今はこの宮の主は私。
この宮で何かしらがあれば私の采配でご自分の臣下の首が飛ぶのだと。
流石に貴妃に大して不敬が過ぎたのだと。
「代わりにですが、理由はともかく、現状手土産もお持ちできない身の上です。
他の宮の貴妃にも皇貴妃よりご了承下さいと皇貴妃としてお伝え頂けますかしら?」
「……ええ」
あら、せっかくの微笑みが消えましたね。
もちろんこの事に触れるなら皇貴妃としての責任能力が無いと伝えるのと同義となりますものね。
ですがそれと引き換えの不問ですし、臣下の監督不行き届きどころか、目の前の不敬を諌めなかったご自身の責任ですよ。
あら、陛下からは完全に覇気が……。
丞相はこの言葉になにやら感心したようなお顔、からの周りの様子に気づいてやれやれと首を左右に振りました。
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