27 / 124
3.
27.金の延べ棒
しおりを挟む
「………………手伝ってやるから話を聞かせろ」
消えてくれませんでしたね。
大分間がございましたが。
昨夜といい今といい、お付きの方はどうされたのでしょう?
間違いなくこっそり忍びこんでますよね?
はた迷惑です。
腰には例の剣を帯剣しておりますが、私が暗殺者だったらどうなさるおつもりでしょう。
もちろん名実共に貴妃に間違いございませんが。
「ではまず首チョンパしてお腹を切って血抜きをなさっていて下さいな。
私は鍋に水を……」
「鳥と鍋を寄こせ……待て、これは花瓶だろう」
しかも普通に手伝ってくれそうな勢いです。
皇帝が鳥を捌いて鍋に水を満たしてくれるのでしょうか?
「食材入れたら鍋です」
「しかも埃まみれであろうが」
そう言うと魔法で水を出してザバッと洗ってから水で満たしてくれました。
「火は?」
「いつでも火をつけられるようにしてありますが、下処理をしてからと……」
「案内しろ」
風除けになりそうな岩の間に案内すれば、用意していた石と木を組み合わせて簡易的に作ってあった即席焜炉に鍋を置いて火を魔法で起こしてしまいます。
魔力量が多い方はこういう時に重宝して便利ですよね。
一家に1人欲しいものです。
木陰に行って懐に忍ばせていた小刀でさっと首を切ってしまいました。
用意していた紐を取り出して近づけばそれを受け取り木に逆さ吊りし、血抜きの準備も完了です。
手際の良い殿方はどのような方でも素敵に見えるものですね。
しかし皇帝なのに随手慣れておりますこと。
まあ生い立ちが生粋の皇子とは些か違ってらしたからこそなのでしょう。
「それで、そなたは何を目的に入宮した?」
「丞相としっかり報連相なさればよろしいのでは?」
水が沸くまで暫し時間がかかりますからね。
焜炉を挟んで互いに岩に腰かければ陛下が私の入宮について根本的な動機を尋ねます。
丞相と話をしたのではないのでしょうか?
目的も何も、その腹黒の強制でしたが。
「そなたに聞けと」
「割り増し料金をいただきたいくらいですね」
「これをやる」
そう言って陛下は懐をゴソゴソと……。
なんと!
話すだけで金の延べ棒が?!
さすがは天下の皇帝陛下!
太っ腹!
もちろんにっこり微笑んで臆することなく受け取り、懐へ。
ああ、このひんやり感……癒やされますね。
「まあ。
それで何を聞きたいのです?」
「あの腹黒の言う通りだな。
しかしゲンキン過ぎでは?」
「お金は大事です」
腹黒は間違いなく丞相の事でしょう。
「あの腹黒はお前が餌だと言っていた」
「左様です。
このように陛下が他の貴妃達にはなさらない事をされたとわかれば、それぞれの手の者達に狙われる事となりましょう。
さっそく慰謝料と共に毒入りの菓子折りもございましたもの」
「はあ?!」
やれやれ、驚く事ですか?
ここは後宮なのです。
それに私の調度品や金品は皇貴妃の宮だけではなく、他の宮の女官だか下女だか破落戸だかにも渡っていると考えて然るべきでしょうに。
「どこの誰の差し金か、それが貴妃なのか皇貴妃の手の者なのかは調べなければわかりませんよ」
「皇貴妃では……」
「これまでの皇貴妃の言動で女官達の統制が取れていないのですよ。
私の調度品の紛失然り、毒もまた然り。
それだけ皇貴妃の立場が揺らいでいるという事です。
原因は既におわかりかと推察します。
だからこその私の入宮なのですよ?」
「それは……すまない」
ふむふむ、やはりわざわざここに来たのは皇貴妃の本心に触れたからのようですね。
愛妻家なのは良き事かと思いますが、立場ある者だからこそ与えねばならぬ偽りの愛もあったでしょうに。
勿論それにかこつけて図に乗った一部の重鎮方々もいらっしゃるのでしょうが。
「ご心配なく。
諸事情と趣味で毒には体を慣らしておりますし、多少の毒や媚薬は効きません」
「び、媚薬だと?!
そなたはまだ14と幼いであろう!
というか趣味って何だ?!」
何故毒より媚薬に反応なさるのでしょうか?
ほんのり頬を赤くされるとは……さてはムッツリ助平というやつですね。
消えてくれませんでしたね。
大分間がございましたが。
昨夜といい今といい、お付きの方はどうされたのでしょう?
間違いなくこっそり忍びこんでますよね?
はた迷惑です。
腰には例の剣を帯剣しておりますが、私が暗殺者だったらどうなさるおつもりでしょう。
もちろん名実共に貴妃に間違いございませんが。
「ではまず首チョンパしてお腹を切って血抜きをなさっていて下さいな。
私は鍋に水を……」
「鳥と鍋を寄こせ……待て、これは花瓶だろう」
しかも普通に手伝ってくれそうな勢いです。
皇帝が鳥を捌いて鍋に水を満たしてくれるのでしょうか?
「食材入れたら鍋です」
「しかも埃まみれであろうが」
そう言うと魔法で水を出してザバッと洗ってから水で満たしてくれました。
「火は?」
「いつでも火をつけられるようにしてありますが、下処理をしてからと……」
「案内しろ」
風除けになりそうな岩の間に案内すれば、用意していた石と木を組み合わせて簡易的に作ってあった即席焜炉に鍋を置いて火を魔法で起こしてしまいます。
魔力量が多い方はこういう時に重宝して便利ですよね。
一家に1人欲しいものです。
木陰に行って懐に忍ばせていた小刀でさっと首を切ってしまいました。
用意していた紐を取り出して近づけばそれを受け取り木に逆さ吊りし、血抜きの準備も完了です。
手際の良い殿方はどのような方でも素敵に見えるものですね。
しかし皇帝なのに随手慣れておりますこと。
まあ生い立ちが生粋の皇子とは些か違ってらしたからこそなのでしょう。
「それで、そなたは何を目的に入宮した?」
「丞相としっかり報連相なさればよろしいのでは?」
水が沸くまで暫し時間がかかりますからね。
焜炉を挟んで互いに岩に腰かければ陛下が私の入宮について根本的な動機を尋ねます。
丞相と話をしたのではないのでしょうか?
目的も何も、その腹黒の強制でしたが。
「そなたに聞けと」
「割り増し料金をいただきたいくらいですね」
「これをやる」
そう言って陛下は懐をゴソゴソと……。
なんと!
話すだけで金の延べ棒が?!
さすがは天下の皇帝陛下!
太っ腹!
もちろんにっこり微笑んで臆することなく受け取り、懐へ。
ああ、このひんやり感……癒やされますね。
「まあ。
それで何を聞きたいのです?」
「あの腹黒の言う通りだな。
しかしゲンキン過ぎでは?」
「お金は大事です」
腹黒は間違いなく丞相の事でしょう。
「あの腹黒はお前が餌だと言っていた」
「左様です。
このように陛下が他の貴妃達にはなさらない事をされたとわかれば、それぞれの手の者達に狙われる事となりましょう。
さっそく慰謝料と共に毒入りの菓子折りもございましたもの」
「はあ?!」
やれやれ、驚く事ですか?
ここは後宮なのです。
それに私の調度品や金品は皇貴妃の宮だけではなく、他の宮の女官だか下女だか破落戸だかにも渡っていると考えて然るべきでしょうに。
「どこの誰の差し金か、それが貴妃なのか皇貴妃の手の者なのかは調べなければわかりませんよ」
「皇貴妃では……」
「これまでの皇貴妃の言動で女官達の統制が取れていないのですよ。
私の調度品の紛失然り、毒もまた然り。
それだけ皇貴妃の立場が揺らいでいるという事です。
原因は既におわかりかと推察します。
だからこその私の入宮なのですよ?」
「それは……すまない」
ふむふむ、やはりわざわざここに来たのは皇貴妃の本心に触れたからのようですね。
愛妻家なのは良き事かと思いますが、立場ある者だからこそ与えねばならぬ偽りの愛もあったでしょうに。
勿論それにかこつけて図に乗った一部の重鎮方々もいらっしゃるのでしょうが。
「ご心配なく。
諸事情と趣味で毒には体を慣らしておりますし、多少の毒や媚薬は効きません」
「び、媚薬だと?!
そなたはまだ14と幼いであろう!
というか趣味って何だ?!」
何故毒より媚薬に反応なさるのでしょうか?
ほんのり頬を赤くされるとは……さてはムッツリ助平というやつですね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
男子取扱説明書がバレて、私の青春が大炎上してるんですけど!?
月下花音
キャラ文芸
「ねえ、男子ってさ――実は全部"動物"なんだよ?」
私、桜井こころが密かに作っていた『男子取扱説明書(動物分類版)』。
犬系・猫系・ヤンデレ蛇系・ハムスター系……
12タイプの男子を完全分析したこのノートが、学校中にバレた!!
「これ、お前が書いたの?」
「俺のこと、そんなに見てくれてたんだ」
「……今から実践してくれる?」
説明書通りに行動したら、本当に落とせるのか?
いや待って、なんで全員から告白されてるの!?
これは研究です!恋愛感情はありません!(大嘘)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる