太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

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3.

29.宿題

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「左様かもしれませんね。
ですがそもそもがお門違い……うーん……方向性が間違っておりませんか?」

 冷静になれば、言い方が悪かったのだろうと気づいて言い直します。

「……何故そう思う。
どのような意味で申しておる?」

 やはり根本的に話が食い違っていたようですね。

「何故初代皇帝は後宮に四夫人を据えて大きな宮を4つ、四嬪を据えて半分規模の宮を4つの計8つにしたと?
そのようにお考えになった事はおありで?」
「宮の数?
それは……ないが……」

 思いっきり怪訝なお顔です。

 はて?
お子を授かりたいのは本心ですよね?
初代とその次か更に次くらいまでの皇帝は子孫繁栄の為に後宮をまことの意味で使用していたかと思うのですが?

 以降の代の皇帝ならともかく、先祖返りよろしく内包する魔力が一際強い今代の皇帝こそ正しく使用せねば、自身のお子など得られないとわかっていてこの宮を復活させたのではないのでしょうか?

「この宮が何故廃されたかご存知で?」

 そう、この宮を廃するならばいつかの未来で此度のような事が起こる事などわかりきった事。

「下女がここで亡くなっているからだ。
そなたが今寝床にしているあの小屋でな」
「……下女?
それを示す正式な書類はございまして?
直接確認されましたか?
死因は?
皇貴妃もそのようにお考えで?」

 あの小屋の先人はそのような事を仰ってはおりませんでしたが……。

「いや、その話は有名で……そなた何を知っておる?」

 陛下の瞳には私への疑心の色が現れます。
本当に失礼な法律上の夫ですね。

 この国、大丈夫なのでしょうか……。
後宮の事に関してはポンコツ、それ以外はできる皇帝と噂にはございましたが……。

 しかしこれは……なかなかの大事ではないでしょうか?
まともに気づく者もいなかったようですが、いつからこのような国家転覆とも考えられる謀りを、一体誰が?

 とはいえ一介の生家の爵位の低い新参貴妃が積極的に関わるには、なかなか荷の重い……。
加えて今はその時ではありませんね。
私は自分の命を大事にする主義ですから。

「ならばここでこのように……そもそも何故そのようにテキパキと皇帝が鳥の羽根をむしっておられるのですか」

 実は話しながらも鍋を火から外し、吊るした鳥を湯につけ、羽根をむしっては火に焚べてくれておりました。
恐らく魔力を使ってそれとなく血抜きの時間を早めていたのでしょうが、陛下こそ替え玉ですか?!
正体は料理人では?!

「そなたが手伝えと言うたのであろうが!」

 怒りだした陛下は無視ですね。
もう羽根も全てむしっていただいて用もありませんし、このお肉は私の獲物です。
お腹空いてますし、つれない怒りん坊な法律上だけの夫には差し上げません。

「お帰りを。
善は急げと申します。
お肉は私が美味しくいただきますからご安心下さいな。
皇貴妃と共にやるべき事をなさいませ。
ほらほらほらほら」

 陛下の背後に回り、ぐいぐいと背中を押してここから遠ざけます。
皇貴妃がどう陛下にお話しなさったかなど既に興味はございません。
そもそも今聞く必要もないですし。

 何より2日ぶりのお肉は絶対誰にも差し上げませんからね!
何ならそれで明日の分も賄うんですから!

「おい、待て!
押すでない!
皇帝を押して追い出す貴妃など聞いた事がないぞ!
不敬だぞ、お、おい、聞かぬか!」
「初夜に妻の首を剣で切るような不敬な夫に説得力はございません!
さあさあさあさあ!
お帰り下さいませ!」
「くっ!
反論できぬ事を言うでない!
待て待て、力強くないか?!」
「女子にそのように仰るとは恥をお知りなさいませ!」

 そうして小屋が見える辺りまでぐいぐい追いやります。

「それでは、お見送りはここまでです。
次にいらっしゃる時には宿題の答えをお持ち下さいな」
「いつから宿題になったのだ!
って、おい!
聞けー!」

 無視無視、お腹空きました。
育ち盛りなんですよ、私。
育ちきって老いゆくだけの陛下と違って成長期なんですからね。

 さあさ、早く捌いて美味しく鳥をいただきましょう。

「………………」

 と意気揚々と戻ってみれば……うっかり無言に。
目が……合ってしまいました。
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