65 / 124
4.
65.闘茶を提案
しおりを挟む
「……何故こうもそなたの淹れた茶は味が違うのだ」
「まあ、お口に合いませんでしたか?」
「……いや、何故か美味い」
どこか憮然とした顔の夫は銀の茶杯を軽く眺めてからゆっくりと口に含んで味を確かめた後、コクリと喉に通しました。
思わずでしょうが感心したように言葉を紡ぎます。
ゆっくりと飲むのは毒の混入があれば気づくようにする習慣の為です。
私が毒を入れたか疑っているわけではない……はず。
素直に褒めてくれれば良いのに、私の夫はへそ曲がりですね。
「ふふふ、嬉しゅうございます。
真心をたっぷりこめましたから」
ですが気にせず再び無垢に微笑み、私より少し年上の嬪に流し目をしてからの、笑みを深めれば……ふふふ。
やはりそうですか。
しっかりと睨みを効かせて下さいましたが、その目には嫉妬の炎がメラメラと。
あら、どうやら皇貴妃も気づいたようですね。
しかしあの表情はどこか疲労感を感じさせるもの。
そして…………諦め?
恋を封印した娼妓が良くする顔を何故に?
気になりますね。
「ほう、それならば儂も是非陛下の寵愛する貴妃に淹れて頂きたいが、いかがですかな」
それとなくそちらに注意を払っていれば、1番上座に近い黒髪の燕峰雲大尉が愉快そうに顎髭を触りながら提案されてしまいました。
「まあ、でしたら先日皆様から頂いたお詫びの品々の中に茶葉がございました。
頂いた品を共に楽しむのも一興ではございませんか?
もちろん後宮という場所ですもの。
医官と薬官の立ち会いの元に受け取り、開封した後は保管をお願いしておりました」
「な?!
贈った品を贈り主に返すなどと、失礼では?!」
「左様でしてよ!」
まあ、突然慌てて腰を上げた春花宮の主、梳巧玲とそれに賛同する夏花宮の主、呉静雲。
その2人の筆頭女官はもちろんの事、よく見れば西方のお2人以外の貴妃と嬪の筆頭女官全員が目配せやら目を大きくやらしておりますが、これ、いかに?
皇貴妃は怪訝そうに、西のお2人はただ微笑みを浮かべたまま相変わらずの無、東の貴妃はそれとなく口元を隠してほくそ笑みましたか?
殿方達は静観しておりますが、茶髪の林傑明司空は南の嬪を見て検分するかのように目を細めました。
「まあ、返すのではなく共に楽しむ時間に充てるのは受け取り主として当然ではありませんか?
それに此度の物はあくまで誤って私の私物を持ち去ってしまった女官達の責任者としての詫びの品。
贈ったと揶揄する物ではございませんでしょう?」
「そ、それは……」
口ごもる薄水色の衣と悔しそうに顔を歪める薄朱色の衣を纏う女子達。
「それをこの場で使うという事は、詫びを受け取ったと同意する事になります。
もちろん新参者の私も先に後宮に在られた皆様へのご挨拶の品々をやっとお持ちできましたの。
お贈りするというのなら、先に私が贈るべきですものね。
色々と手違いがあったせいでご挨拶が送れてしまいましたから、このような席を設けて頂けた事を心より喜んでおりますのよ。
小雪」
後ろの専属侍女に声をかければ、皆が入ってきたこの部屋の重厚な扉を守る陛下の近衛に無言で開けさせる。
すると外に控えていた者が盆を抱えて2人の殿方が中に歩を進めました。
2人共に白の衣を身に着けていますが、1人は作務衣風の官服姿。
医官と薬官で、作務衣姿は薬官です。
盆の上には高給そうな4つの白と黒の陶器の壷が。
「あら?
お顔の色が優れませんが、どうかなさいましたか?」
「「いえ」」
「それは良うございました。
でしたらお掛けになって。
そうだわ!」
腰を浮かせっぱなしの嬪達には座っていただき、本日2度目の両手でパチン。
「折角ですもの。
本日皇貴妃が用意された茶葉と、私がご用意した茶葉を使って闘茶はいかがかしら?」
初代の頃には利き茶や回茶、茶歌舞伎などとも呼んでおりましたが、茶を飲んで香りや味から茶の品種や産地などを当てるお遊びです。
こちらでは闘茶と申します。
「わ、私は……お、お姉……あの、皇貴妃……」
まるで止めてくれと言わんばかりの泣きそうな声を皇貴妃に投げますが、どうしたのでしょうね?
「まあ、お口に合いませんでしたか?」
「……いや、何故か美味い」
どこか憮然とした顔の夫は銀の茶杯を軽く眺めてからゆっくりと口に含んで味を確かめた後、コクリと喉に通しました。
思わずでしょうが感心したように言葉を紡ぎます。
ゆっくりと飲むのは毒の混入があれば気づくようにする習慣の為です。
私が毒を入れたか疑っているわけではない……はず。
素直に褒めてくれれば良いのに、私の夫はへそ曲がりですね。
「ふふふ、嬉しゅうございます。
真心をたっぷりこめましたから」
ですが気にせず再び無垢に微笑み、私より少し年上の嬪に流し目をしてからの、笑みを深めれば……ふふふ。
やはりそうですか。
しっかりと睨みを効かせて下さいましたが、その目には嫉妬の炎がメラメラと。
あら、どうやら皇貴妃も気づいたようですね。
しかしあの表情はどこか疲労感を感じさせるもの。
そして…………諦め?
恋を封印した娼妓が良くする顔を何故に?
気になりますね。
「ほう、それならば儂も是非陛下の寵愛する貴妃に淹れて頂きたいが、いかがですかな」
それとなくそちらに注意を払っていれば、1番上座に近い黒髪の燕峰雲大尉が愉快そうに顎髭を触りながら提案されてしまいました。
「まあ、でしたら先日皆様から頂いたお詫びの品々の中に茶葉がございました。
頂いた品を共に楽しむのも一興ではございませんか?
もちろん後宮という場所ですもの。
医官と薬官の立ち会いの元に受け取り、開封した後は保管をお願いしておりました」
「な?!
贈った品を贈り主に返すなどと、失礼では?!」
「左様でしてよ!」
まあ、突然慌てて腰を上げた春花宮の主、梳巧玲とそれに賛同する夏花宮の主、呉静雲。
その2人の筆頭女官はもちろんの事、よく見れば西方のお2人以外の貴妃と嬪の筆頭女官全員が目配せやら目を大きくやらしておりますが、これ、いかに?
皇貴妃は怪訝そうに、西のお2人はただ微笑みを浮かべたまま相変わらずの無、東の貴妃はそれとなく口元を隠してほくそ笑みましたか?
殿方達は静観しておりますが、茶髪の林傑明司空は南の嬪を見て検分するかのように目を細めました。
「まあ、返すのではなく共に楽しむ時間に充てるのは受け取り主として当然ではありませんか?
それに此度の物はあくまで誤って私の私物を持ち去ってしまった女官達の責任者としての詫びの品。
贈ったと揶揄する物ではございませんでしょう?」
「そ、それは……」
口ごもる薄水色の衣と悔しそうに顔を歪める薄朱色の衣を纏う女子達。
「それをこの場で使うという事は、詫びを受け取ったと同意する事になります。
もちろん新参者の私も先に後宮に在られた皆様へのご挨拶の品々をやっとお持ちできましたの。
お贈りするというのなら、先に私が贈るべきですものね。
色々と手違いがあったせいでご挨拶が送れてしまいましたから、このような席を設けて頂けた事を心より喜んでおりますのよ。
小雪」
後ろの専属侍女に声をかければ、皆が入ってきたこの部屋の重厚な扉を守る陛下の近衛に無言で開けさせる。
すると外に控えていた者が盆を抱えて2人の殿方が中に歩を進めました。
2人共に白の衣を身に着けていますが、1人は作務衣風の官服姿。
医官と薬官で、作務衣姿は薬官です。
盆の上には高給そうな4つの白と黒の陶器の壷が。
「あら?
お顔の色が優れませんが、どうかなさいましたか?」
「「いえ」」
「それは良うございました。
でしたらお掛けになって。
そうだわ!」
腰を浮かせっぱなしの嬪達には座っていただき、本日2度目の両手でパチン。
「折角ですもの。
本日皇貴妃が用意された茶葉と、私がご用意した茶葉を使って闘茶はいかがかしら?」
初代の頃には利き茶や回茶、茶歌舞伎などとも呼んでおりましたが、茶を飲んで香りや味から茶の品種や産地などを当てるお遊びです。
こちらでは闘茶と申します。
「わ、私は……お、お姉……あの、皇貴妃……」
まるで止めてくれと言わんばかりの泣きそうな声を皇貴妃に投げますが、どうしたのでしょうね?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)
星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。
団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。
副団長「彼女のご飯は軍事物資です」
私「えっ重い」
胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!?
ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。
(月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる