太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

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4.

65.闘茶を提案

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「……何故こうもそなたの淹れた茶は味が違うのだ」
「まあ、お口に合いませんでしたか?」
「……いや、何故か美味い」

 どこか憮然とした顔の夫は銀の茶杯を軽く眺めてからゆっくりと口に含んで味を確かめた後、コクリと喉に通しました。
思わずでしょうが感心したように言葉を紡ぎます。

 ゆっくりと飲むのは毒の混入があれば気づくようにする習慣の為です。
私が毒を入れたか疑っているわけではない……はず。

 素直に褒めてくれれば良いのに、私の夫はへそ曲がりですね。

「ふふふ、嬉しゅうございます。
真心をたっぷりこめましたから」

 ですが気にせず再び無垢に微笑み、私より少し年上の嬪に流し目をしてからの、笑みを深めれば……ふふふ。

 やはりですか。

 しっかりと睨みを効かせて下さいましたが、その目には嫉妬の炎がメラメラと。

 あら、どうやら皇貴妃も気づいたようですね。

 しかしあの表情はどこか疲労感を感じさせるもの。
そして…………諦め?
恋を封印した娼妓が良くする顔を何故なにゆえに?

 気になりますね。

「ほう、それならば儂も是非陛下の寵愛する貴妃に淹れて頂きたいが、いかがですかな」

 それとなくそちらに注意を払っていれば、1番上座に近い黒髪の燕峰雲エン フォンウン大尉が愉快そうに顎髭を触りながら提案されてしまいました。

「まあ、でしたら先日皆様から頂いたお詫びの品々の中に茶葉がございました。
頂いた品を共に楽しむのも一興ではございませんか?
もちろん後宮という場所ですもの。
医官と薬官の立ち会いの元に受け取り、開封した後は保管をお願いしておりました」
「な?!
贈った品を贈り主に返すなどと、失礼では?!」
「左様でしてよ!」

 まあ、突然慌てて腰を上げた春花宮の主、梳巧玲シュー チャオリンとそれに賛同する夏花宮の主、呉静雲ウー ジンユン

 その2人の筆頭女官はもちろんの事、よく見れば西方のお2人以外の貴妃と嬪の筆頭女官全員が目配せやら目を大きくやらしておりますが、これ、いかに?

 皇貴妃は怪訝そうに、西のお2人はただ微笑みを浮かべたまま相変わらずの無、東の貴妃はそれとなく口元を隠してほくそ笑みましたか?

 殿方達は静観しておりますが、茶髪の林傑明リン ジェミン司空は南の嬪を見て検分するかのように目を細めました。

「まあ、返すのではなく共に楽しむ時間に充てるのは受け取り主として当然ではありませんか?
それに此度の物はあくまで私の私物を持ち去ってしまった女官達の責任者としての詫びの品。
贈ったと揶揄する物ではございませんでしょう?」
「そ、それは……」

 口ごもる薄水色の衣と悔しそうに顔を歪める薄朱色の衣を纏う女子達。

「それをこの場で使うという事は、詫びを受け取ったと同意する事になります。
もちろん新参者のわたくしも先に後宮に在られた皆様へのご挨拶の品々をやっとお持ちできましたの。
お贈りするというのなら、先に私が贈るべきですものね。
色々と手違いがあったせいでご挨拶が送れてしまいましたから、このような席を設けて頂けた事を心より喜んでおりますのよ。
小雪シャオシュエ

 後ろの専属侍女に声をかければ、皆が入ってきたこの部屋の重厚な扉を守る陛下の近衛に無言で開けさせる。

 すると外に控えていた者が盆を抱えて2人の殿方が中に歩を進めました。

 2人共に白の衣を身に着けていますが、1人は作務衣風の官服姿。
医官と薬官で、作務衣姿は薬官です。

 盆の上には高給そうな4つの白と黒の陶器の壷が。

「あら?
お顔の色が優れませんが、どうかなさいましたか?」
「「いえ」」
「それは良うございました。
でしたらお掛けになって。
そうだわ!」

 腰を浮かせっぱなしの嬪達には座っていただき、本日2度目の両手でパチン。

「折角ですもの。
本日皇貴妃が用意された茶葉と、私がご用意した茶葉を使って闘茶とうちゃはいかがかしら?」

 初代の頃には利き茶や回茶、茶歌舞伎などとも呼んでおりましたが、茶を飲んで香りや味から茶の品種や産地などを当てるお遊びです。
こちらでは闘茶と申します。

「わ、私は……お、お姉……あの、皇貴妃……」

 まるで止めてくれと言わんばかりの泣きそうな声を皇貴妃に投げますが、どうしたのでしょうね?
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