太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

文字の大きさ
74 / 124
4.

74.性悪と癇癪女〜巧玲side

しおりを挟む
「そう、上手くやったのね」
「はい、シュー嬪」

 あの役立たずの筆頭女官を追放した後、このファンとかいう女官を筆頭女官に据えた私の判断は正しかったみたい。

 椅子に腰かけて床に伏して報告するのは、文すらまともに届けられない、生家があの性悪貴妃と同じ爵位と気に障る格下女官。

 そんな替えのきく者を筆頭女官に据えたのは、もちろんわざと。
私の世話を直接する女官達は、幼い頃から教育を施された、高位貴族ですもの。
彼女達を煽り、この者に無体を強いる場を提供しましたの。

 ほら、あの元筆頭女官のように察しの悪い女官が多くて、時々だけれど癇癪を起こしてますでしょう。

 時にはこうして生贄を用意し、私への鬱憤を晴らさせてあげておりますわ。
良い主でしょう。
宮の力の均衡を保つ秘訣でしてよ。

 あの目の上の瘤、凜汐リンシー貴妃の世話を、幼い頃からして学んだ処世術。
私の癇癪など、あの女と比べればよっぽどマシ。
あの女はこれまでに癇癪を起こして、下女や下級女官を何人か消してますもの。

 丞相……晨光チャンガン様だって昔は石をぶつけられたりして、それはお可哀想でしたわ。
そんなおあの方をお慰めするのが私の役割。

 氷の麗人たる、冷たさを感じる笑みしか向けられなかったけれど、あんな素敵な方をお慰めできる事は密かな楽しみ。
少なくとも義妹となったあの女より、私には弛んだ微笑みでしたのよ。

 いつしかあの女まで横恋慕してきたのは、義妹とはいえ同じ邸で寝食を共にしている以上に腹立たしかったわ。
石をぶつけたり、傲慢に命令ばかりしていたのに、本当に勝手で傲慢な女。

 とはいえ腐ってもフォン家の令嬢。
皇帝陛下に嫁がされるのは決定事項。
それに義妹ですもの。
お兄様に嫁げるはずもない。

 何よりずっとお慰めしていた、侯爵令嬢の私は、あの女よりも、この世のどんな令嬢よりもお兄様に相応しい。
いつかお兄様に嫁ぐ為だけに、あの女とも友好な関係を保ちましたのに……なのに!

 私を嬪に推したのはあの女!
推挙したなんてふざけてますわ!
私がお兄様に嫁ぐつもりなのが気に入らなかった?!
お兄様に歯牙にもかけられていないのに、勘違いしている私が哀れだから?!

 あの方に想われていた私が気に入らなかっただけ!!
陛下に相手にされない自分を認めたくなくて、私を同じ立場に、いえ、貴妃より格下の嬪に据えて馬鹿にする事で慰めたかっただけ!

『いつか陛下に下賜される可能性は……あるのでしょうか?
晨光チャンガン様がそう願えば、陛下は叶えて下さいますか?』

 入宮した日、私は挨拶を終えて部屋から出ようとしたお兄様の背に、泣き縋りながら尋ねましたわ。

『過去にそうした例はあります。
陛下は皇貴妃以外に興味は持たれませんが、そうですね……。
貴女が陛下のいくらかの恩恵を得、私が他の官吏達が認める何らかの手柄をもってして望めば、下賜される可能性はあるでしょう』

 お兄様は縋りつく私の手を慰めるようにぽんぽんとしてから、優しく外して振り向く事なく出ていかれました。

 以来、私はあの方が手柄をたてられるよう、後宮の情報を流しながら、陛下の目に止まるよう努力してまいりましたわ。

 そして性悪を使っ癇癪女を貶めて追放か、上手くいけば公に処断する方法を考えつきましたの。

 とはいえ気晴らし用の女官が、あの性悪に取り入れるとも思ってなかったのだけど。

 生家の爵位が同じだった事に加え、身の安全がかかっていた分、真に迫った泣き落としでもしたのでしょう。
手ぶらで戻れば他の女官達がどうするかわかっていたはずですもの。

 あの性悪は私達と違い、謀られない処世術や人の使い方を知らないよう。
歴史の浅い伯家ですもの。
当然ですわね。

「渡してあげて。
褒美でしてよ。
お望み通り、筆頭女官からも外してあげますわ」

 戸の近くに立っていた女官に命令し、手にしていた風呂敷包みを伏したままの下級女官の前に置かせる。

 そろそろと顔を上げ、包みを開ければ、あの性悪の装飾品の数々と、この者が失った給金分の銀。

 卑しい下級女官に相応しい笑いを浮かべ、媚びた視線を向けてきたわ。
 
 この者は給金の大半をあの性悪に奪われ、金に困ってましたものね。
下級の者は痛い目に合わせた上で、こうやって金で釣って言う事をきかせるものですわ。

「ほら、相応しい場に戻りなさいな」

 久々に満足した気持ちで優しく声をかけてやる。
罠にかかった性悪と癇癪女を想像しながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...