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79.思いがけない陛下夫妻の登場〜晨光《チャンガン》side
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「き、危険です、丞相!」
「梳嬪?!
離しなさい!」
守銭奴娘が煽りに煽った義妹__元義妹は、飛びかかってあの細首を両手で締めながら押し倒した。
随分と手慣れているように感じる。
元義妹の周辺を洗い出した時、何らかの粗相があったとして後宮から追放処分とした女官達が、少なからず消息不明となっていた。
激しい癇癪持ちの義妹で後宮に入ってからかなりの年数が経過し、女官の入れ替わりも激しく、実際に後宮の外に放逐した者達もかなりの数居た。
それに1度外に出てしまえば足取りを追うのにも時間がかかる。
仮にその手にかけたとして、遺体がどこにあるのかわからなかったのも、調査の邪魔をした。
身分が貴妃であった為、確実に言い逃れできない証拠を押さえなければ、まともに捜査もできなかったのだ。
今この場を押さえれば、同じ立場の貴妃への殺害未遂で捕らえられる。
それにどこか現実を甘く見ている、守銭奴娘に灸をすえるつもりで、数十秒置いてから動こうとした。
しかし背後から私の腰に絡みついた女に邪魔される。
「嫌です!
あのような者の所に行って、丞相に万が一があってはなりません!
人を呼びましょう!
それまでは離しません!」
「死ね!
性悪め!」
私達の攻防など気づく素振りもなく、義妹は縁ある嬪の声に被せるように、半狂乱になって守銭奴娘の細首を締め上げていく。
思わず周囲を見回すが、あの者の姿はどこにもない。
どこに行ったんだ?!
近くにいろと……。
「ふっ、ふふふ……あははは!
やったわ!
お前も動かなくなった!」
義妹の声にハッとし、抵抗していた手が、いつの間にか力無く地面に投げ出されてしまっているのを確認する。
その瞬間、なりふり構わず邪魔な女を突き飛ばした。
「ぎゃっ」
「小娘!」
短い悲鳴と尻もちをつく音が背後から聞こえたが、知った事ではない。
その時だ。
「ぎゃあ!
ひぃっ、や、矢が、ひ、ひぃぃぃ!
いた、痛い、痛いぃぃぃぃぃ!」
ヒュン、という音がして、突如義妹が地面に転がり、腕を押さえて悶絶し始めた。
右肩に矢が突き刺さっている?!
途端、幾つか火が燃え上がり、それが松明だと気づく。
どこに潜んでいたのか、屈強な男達が日が沈み、暗闇となった周囲を明々と照らしながら、朽ちかけた古い井戸の女人2人を10名程が取り囲む。
見覚えのある彼らは、陛下の近衛達だった。
そうしてその間から現れたのは、陛下夫妻。
「そこまでだ、凜汐貴妃。
其奴に縄をかけよ!」
「「「はっ」」」
陛下の命に2人の近衛が前に出て、転がる義妹を無理矢理起こし、後ろ手にして縄で体を拘束した。
「ひぃっ、痛い!
何をする!
離さぬか!
私は貴妃なのよ!
風家の私にこの様な仕打ち、許されるはずがない!」
暴れる元義妹は全力で抵抗するが、鍛えた男達の力に叶うはずもない。
すぐに守銭奴娘の近くに移動しようとするも、近衛に阻まれてしまう。
特に介抱するでもなく、倒れた娘を取り囲むだけの状況。
退けと言葉が喉元まで出かかった時、元義妹と目が合った。
「何してんのよ!
助けなさい!
私の兄でしょう!」
「……残念だが、私とフォン家とは既に何の繋がりもない」
「……は?!
何言ってるのよ?!」
私の言葉に、元義妹はポカンとし、しかしすぐに怒鳴りつけるも、一瞬後には私が使えないと悟ったようだ。
諦め悪く陛下夫妻にかなり高圧的に縋り始めた。
「陛下!
私は貴方様の妻なのです!
皇貴妃!
同じ妻として助けるべきでしょう!」
「は、そなたが妻。
笑わせるでない!」
もちろん陛下が相手にするでもなく、むしろ皇貴妃への態度に怒りを煽った。
紫紺の瞳がカッと見開かれ、かなり本気の覇気を当てられてしまう。
「んぐっ……はっ、はっ、ひっ、おやめ……ぅぐぇ、へ、陛下、おやめ……助けて……」
全力の覇気を当てられた元義妹は、力なく地面に突っ伏し、苦しみながら懇願する。
ややもすると、取り押さえていた近衛達の顔色も悪くなってきた。
しかし慣れたもので、捕縛した体に巻きつけた縄から垂れ下がるその端を持って少し離れる。
皇貴妃も一歩後ろに後退した。
元義妹はとうとう呻き声すら上げられなくなり、覇気を止めても地面から動けず、そのま転がったままになった。
その時……。
「小雪!」
あの者__守銭奴娘が大雪と名づけた男が血相を変え、向こう側から現れた。
「梳嬪?!
離しなさい!」
守銭奴娘が煽りに煽った義妹__元義妹は、飛びかかってあの細首を両手で締めながら押し倒した。
随分と手慣れているように感じる。
元義妹の周辺を洗い出した時、何らかの粗相があったとして後宮から追放処分とした女官達が、少なからず消息不明となっていた。
激しい癇癪持ちの義妹で後宮に入ってからかなりの年数が経過し、女官の入れ替わりも激しく、実際に後宮の外に放逐した者達もかなりの数居た。
それに1度外に出てしまえば足取りを追うのにも時間がかかる。
仮にその手にかけたとして、遺体がどこにあるのかわからなかったのも、調査の邪魔をした。
身分が貴妃であった為、確実に言い逃れできない証拠を押さえなければ、まともに捜査もできなかったのだ。
今この場を押さえれば、同じ立場の貴妃への殺害未遂で捕らえられる。
それにどこか現実を甘く見ている、守銭奴娘に灸をすえるつもりで、数十秒置いてから動こうとした。
しかし背後から私の腰に絡みついた女に邪魔される。
「嫌です!
あのような者の所に行って、丞相に万が一があってはなりません!
人を呼びましょう!
それまでは離しません!」
「死ね!
性悪め!」
私達の攻防など気づく素振りもなく、義妹は縁ある嬪の声に被せるように、半狂乱になって守銭奴娘の細首を締め上げていく。
思わず周囲を見回すが、あの者の姿はどこにもない。
どこに行ったんだ?!
近くにいろと……。
「ふっ、ふふふ……あははは!
やったわ!
お前も動かなくなった!」
義妹の声にハッとし、抵抗していた手が、いつの間にか力無く地面に投げ出されてしまっているのを確認する。
その瞬間、なりふり構わず邪魔な女を突き飛ばした。
「ぎゃっ」
「小娘!」
短い悲鳴と尻もちをつく音が背後から聞こえたが、知った事ではない。
その時だ。
「ぎゃあ!
ひぃっ、や、矢が、ひ、ひぃぃぃ!
いた、痛い、痛いぃぃぃぃぃ!」
ヒュン、という音がして、突如義妹が地面に転がり、腕を押さえて悶絶し始めた。
右肩に矢が突き刺さっている?!
途端、幾つか火が燃え上がり、それが松明だと気づく。
どこに潜んでいたのか、屈強な男達が日が沈み、暗闇となった周囲を明々と照らしながら、朽ちかけた古い井戸の女人2人を10名程が取り囲む。
見覚えのある彼らは、陛下の近衛達だった。
そうしてその間から現れたのは、陛下夫妻。
「そこまでだ、凜汐貴妃。
其奴に縄をかけよ!」
「「「はっ」」」
陛下の命に2人の近衛が前に出て、転がる義妹を無理矢理起こし、後ろ手にして縄で体を拘束した。
「ひぃっ、痛い!
何をする!
離さぬか!
私は貴妃なのよ!
風家の私にこの様な仕打ち、許されるはずがない!」
暴れる元義妹は全力で抵抗するが、鍛えた男達の力に叶うはずもない。
すぐに守銭奴娘の近くに移動しようとするも、近衛に阻まれてしまう。
特に介抱するでもなく、倒れた娘を取り囲むだけの状況。
退けと言葉が喉元まで出かかった時、元義妹と目が合った。
「何してんのよ!
助けなさい!
私の兄でしょう!」
「……残念だが、私とフォン家とは既に何の繋がりもない」
「……は?!
何言ってるのよ?!」
私の言葉に、元義妹はポカンとし、しかしすぐに怒鳴りつけるも、一瞬後には私が使えないと悟ったようだ。
諦め悪く陛下夫妻にかなり高圧的に縋り始めた。
「陛下!
私は貴方様の妻なのです!
皇貴妃!
同じ妻として助けるべきでしょう!」
「は、そなたが妻。
笑わせるでない!」
もちろん陛下が相手にするでもなく、むしろ皇貴妃への態度に怒りを煽った。
紫紺の瞳がカッと見開かれ、かなり本気の覇気を当てられてしまう。
「んぐっ……はっ、はっ、ひっ、おやめ……ぅぐぇ、へ、陛下、おやめ……助けて……」
全力の覇気を当てられた元義妹は、力なく地面に突っ伏し、苦しみながら懇願する。
ややもすると、取り押さえていた近衛達の顔色も悪くなってきた。
しかし慣れたもので、捕縛した体に巻きつけた縄から垂れ下がるその端を持って少し離れる。
皇貴妃も一歩後ろに後退した。
元義妹はとうとう呻き声すら上げられなくなり、覇気を止めても地面から動けず、そのま転がったままになった。
その時……。
「小雪!」
あの者__守銭奴娘が大雪と名づけた男が血相を変え、向こう側から現れた。
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