太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

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4.

94.ちびっ子青龍

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「演出として魔力を使いはしますが、基本的に魔力で意図的に身体能力を上げるようなズルは致しません。
真心1番てやつですね。
私も奏者達も、それらを実現する為に日々研鑽を積み、芸事を磨いて、より多くの神々へと感謝を届ける。
もし神がいて、楽しませる事ができたなら、或いは褒美として何らかの加護を得られる事もある。
それが今回は、燻っていた邪気を祓い、元よりあった水脈が再び井戸の下で流れ、清涼なる気をあの宮一帯に呼びこめたのです」
「五行を使ったのですか?」
「ふふふ、丞相はお気づきになられましたか」
「どういう事です?」

 不思議顔の皇貴妃もお綺麗ですね。

「ただ気の赴くままに舞っても、あそこまでの効果は無かったでしょう。
まず東には青龍、ひいては木の気がございます。
そしてあの井戸は地下の水を汲み上げていた。
つまり水脈に干渉でき、絶えず循環する事で木の気を清浄に保っていたはず。
ですが何者かがあの井戸に死体を遺棄した事で、気が淀み、東側の宮全体に影響を及ぼした。
殺人はどういう訳か時間と人が違っても、同じ場所で起こる事もあります。
俗に言う、呼ばれるというやつですね。
今回も同じだと考えるなら、最初の殺人もあの宮のどこかで起こった。
もしこのまま放っておいて、宮の主が変わっても殺人が起こり続けかもしれません。
もちろん今となっては憶測ですが、少なくともあの井戸に死体を遺棄し続けた可能性は高いでしょう」

 おや、何かに惹かれたように先人が奥からこちらへいらっしゃいましたね?
立ったまま、私の顔をじっと上から見下ろしてまいりますが、どうされたのでしょう?
無表情で目は虚ろ。
心の機微を察するのが難しいです。

「そうですね。
見つかった人骨も年代は様々でした。
過去にあの宮に住まう者がそうしてきたのは間違いないでしょう。
別の宮に住まう者ばかりではあり得ない数の人骨でしたから」

 丞相の言葉を、先人の顔色が変わりました。
酷く傷ついたような、泣きそうな……。
何か過去の梅花宮と関わりがある方なのでしょうか?

「左様でしたか。
将来そうした事を引き起こさないよう、相剋となる金の気でまずは淀んだ木の気を打ち祓いました。
銀製の笛や陛下の剣を使ったのはその為です。
そしてしつこい淀み汚れは、火を起こす事で完全に木の気を断ちました」
「しつこい淀み汚れ……泥汚れかのように……掃除婦か」

 ぼそっと何か呟く陛下は無視です。

「斧でバサッと木を切り倒し、根っこは火で燃やして根絶やしにする感じですね。
雷は予想外の事故ですが、火柱や井戸の縁の火は、予め実験がてら細工しておいたのです。
雷が自分に落ちたらどうしようかと、冷や冷やしました」
「は?!
あれは事故であったのか?!
だとすれば、そなた……下手をしたら……」

 ……陛下は何を言っているのでしょう?
普通に考えて、人の身でどうやったら雷を発生させるのでしょうね?

 他の2人も、何故に私を驚きの目で見るのか、解せません。

 あの時の私の眼には、般若面のような顔をして、井戸から出ようともがきながら怨嗟の声を撒き散らす幾人もの先人達。
そして淀んだ気を纏って黒ずんだ龍が、上空から井戸をずっと睨みつける様でした。

 まずは笛の音や皆が奏でる音楽で先人達に真心を伝えて落ち着かせると、龍が雷を纏った後に井戸に向かって突進。
実は井戸の底に細工していた火薬が思いの外勢いよく着火して火柱になったのです。

 3度目は焼死かもしれないと思ったのは内緒です。

 井戸の外縁にも火薬を仕込んでおいたのですが、こちらは予想通りでしたよ。
生活魔法で火を起こして維持しただけです。

 先人達の供養のお焚き上げのつもりでしたが、天からも澄んだ雨が降った事も相まって、あの方達も天へ昇っていかれました。

 そして最後に、井戸から小さくなった青銀の鱗の龍がひょっこりと。
ぷくっと幼児体型のお腹が可愛かったです。
恐らく浄化されただろう木の気を纏っていたのではないかと。

 木の気を傷つけてはいけませんから、金の気を象徴する白の礼服を脱いで剣を包み、木の気を象徴する青緑の服になり、青龍を扇で扇いだりしつつ、共に楽しく舞ったのです。

 ちびっ子青龍は爽風を纏いながら天に昇りましたよ。

 蝙蝠翼の子猫ちゃんがいるのですから、そんな龍がいても不思議ではありません。
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