転生３回目の天才魔法使いは、スパダリたちの執愛に翻弄されてます～ハードモードな今生で真実の愛を掴みたい！～

5 愛と嫉妬と

5ー9 愛し子

　５ー９　愛し子

　「しかし、お前を見ているとなぜか、母のことを思い出す」
　『憤怒の魔女』が目を細める。
　「お前は、私の師であり、母である人の養い子によく似ている」
　母である？
　僕は、首を傾げる。
　古の魔女には、僕が知る限り僕以外の養い子はいなかった。
　もちろん、実子もいない。
　「古の魔女クインザーには、エリエル以外に養い子も実子もいなかった筈なのでは？」
　『憤怒の魔女』が驚愕を隠さずに僕をまじまじと見つめる。
　「お前は、エリエルを知っているのか？」
　いや。
　知っているというか。
　僕がエリエルなんで。
　どう説明したものか。
　頭を悩ませていると魔女が低く呻いた。
　「もしかして、お前は、エリエルの魂を持つ者なのか？」
　『憤怒の魔女』がまじまじと僕を見つめるとはっと息を飲んだ。
　「よもや、こんなところであなたに会えるとは。しかし、あなたほどの者がなぜ、性奴などに身を落としているのだ？」
　僕は、『憤怒の魔女』にこれまであったことの全てを離した。
　かつてエリエルと呼ばれていたこと。
　次の転生で異世界に生まれ、そこで幸せな日々を過ごしたこと。
　そして、今生での話。
　『憤怒の魔女』は、黙って僕の話に耳を傾けていたが、突然、涙を流した。
　「母からお前の話を聞かされて以来、ずっとこの日を待っていた。あなたと見える日がこんなに早くくるとは。まさしく僥倖」
　魔女が手を伸ばして僕の頬にそっと触れる。
　「我が母の愛し子エリエルよ。会いたかった」
　我が母の愛し子？
　僕の疑念に気づいた『憤怒の魔女』は、自分の生い立ちについて語った。
　「私は、古の魔女によって産み出された彼の方の血を引く娘の内の1人。あなたたちからは『憤怒の魔女』と呼ばれているが、本当の名は、アリー。あなたの妹にあたる」
　妹！？
　ぎょっとしていると、魔女は、説明を始めた。
　僕を謀略で失った古の魔女は、何を思ったのか自身の実の子を産み出した。
　それは、正確にはクローンと呼ばれるもの様だ。
　古の魔女は、自分のクローンを３体作ったのだという。
　それをとても大切に育てた。
　それは、僕という養い子を失った寂しさからのこと。
　そして。
　僕が今生に転生したことを知ると密かに見守ってくれていたらしい。
　ところどころであり得ない激しい介入もあった。
　僕を愛するあまりに僕を冷遇していたアルトリア王国を滅ぼしたり。
　ほんと、やり過ぎだよ！
　結果、僕は、奴隷に堕とされることになったわけだしな！