転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~

トモモト ヨシユキ

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4 舞踏会の夜

4ー10 目覚めろ!

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 4ー10 目覚めろ!

 『終末機関』とやらに襲撃を受けて倒れたサハード公爵は、寮の来客用の部屋に運ばれてすぐにラナン殿下によって治癒術を施された。
 だが。
 いっこうにサハード公爵が目覚めることはなかった。
 「これは、魂を侵す毒だ」
 ラナン殿下は、ふぅっとため息をつく。
 「この毒は、治癒の力では癒せない」
 ラナン殿下でも、癒せない?
 俺は、信じられずに殿下に詰めよった。
 「そんな!それじゃ、サハード公爵は?」
 「もって半日だろう。せめて、シャル、側にいてやってくれる?」
 そんな……
 俺は、信じられなくてその場に立ち尽くしていた。
 サハード公爵が死ぬ?
 俺の。
 婚約者様が?
 俺は、ラナン殿下の背後のベッドに横たわっているサハード公爵に駆け寄った。
 サハード公爵は、浅黒い肌が青ざめて目を閉じてそこに眠っていた。
 唇も色を失っている。
 俺は、指で自分の唇に触れる。
 かつて俺に触れたあの熱い唇は、今では冷たく冷えきっている。
 そんな。
 「サハード公爵」
 俺は、サハード公爵のベッド脇に膝をつくと彼の名を呼んだが、サハード公爵は反応がない。
 本当にこのまま死んじゃうの?
 俺の胸の中がしん、と冷たく凍えてくるのがわかった。
 もう、俺にキスしたり、触れたりしてはくれないのか?
 そう思うと、自然と涙が溢れてくる。
 「サハード公爵……フィオール、フィオール・リュマ・サハード!」
 俺は、眠っているサハード公爵にすがり付くとその端正な顔を覗き込んだ。
 そっと、その頬に触れる。
 「俺を嫁にするんじゃなかったのか?」
 俺を嫁にして、魔王国とこのアリオスト王国の平和の礎になるんじゃなかったのか?
 俺のこと。
 愛してるっていったじゃないか!
 俺を一人、残して逝ってしまう気なのか?
 そんな勝手なこと!
 許せるわけがないし!
 「目を覚ませ!」
 俺は、サハード公爵の体に抱きついた。
 「婚姻もしないまま、俺のこと、未亡人にするのか?」
 そんなこと、許さない!
 俺は、サハード公爵の体にすがり付き目を閉じた。
 戻ってこい!
 俺の。
 旦那様!
 俺は、頬をサハード公爵の冷たい頬に接触させると目を閉じた。
 サハード公爵の体に俺の魔力を流し込む。
 体内の隅々まで意識を通していく。
 毒は、どこだ?
 俺は、体内に潜む毒を探した。
 細胞の一つ一つまでもスキャンしていく。
 毒は、体内に吸収されても形は残る筈。
 俺は、全ての毒を見つけて取り除いていった。
 毒は、みな、サハード公爵の細胞に入り込んでしまっている。
 それでも。
 俺は、すべての毒を細胞から切り離して集めて取り出していく。
 気の遠くなるような作業だった。
 それでも。
 俺は、3日かけて毒をサハード公爵の体から取り除いていった。
 そして。
 最後の一つを取り出すと、俺は、意識を手放した。
 
 
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