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6 魔王国での新婚生活
6ー7 難題
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6ー7 難題
俺とルリオス王子の身代わりである副騎士団長ライナスさんが決闘した場合、ライナスさんが負けるとアリオスト王国と魔王国の和平に亀裂が入りかねない、というディナとフィオールの懸念に俺は、眉をよせた。
「じゃあ、どうしたらいいんだよ?決闘しなかったらフィオールは、ルリオス王子の婚約者にならなきゃいけないんだぞ?」
まあ、俺は、それでもいいんだけどさ。
2人は、うぅっと呻いて考え込んでしまった。
馬車の中は、しん、と静まり返っていた。俺は、1人、気楽に窓の外の流れていく景色を眺めていた。
「もし、よければですが、シャル様の代役で私が決闘に参加しましょうか?」
ディナが言うとフィオールが頭を振った。
「それでも結果は、変わるとは言えない。お前が負けてしまったらシャルとの婚約を破棄しなくてはならないし、あの騎士が負けてもアリオスト王国との和平が揺らぐことになる」
「では、どうしたら?」
ディナが挑むようにフィオールを睨む。
「あなたとシャル様の婚約を破棄せずにアリオスト王国と魔王国の和平を守る方法なんてあるんですか?」
「それは……」
フィオールが表情を曇らせる。
俺は、ふぅっと吐息をつく。
「俺と婚約破棄せずにアリオスト王国の威厳も傷つけずにすむ方法が一つだけある」
「なんだ?」
「なんですか?シャル様」
キラキラした目で俺を見つめている2人の視線に堪えながら俺は、小声で話した。
その日の翌日、俺が部屋でくつろいでいるとイケオジの執事さんがドアをノックした。
「失礼いたします、シャル様。お客様が見えられているのですがいかがいたしましょうか?」
「客?」
俺が小首を傾げているのを見てイケオジ執事は、部屋に入ってきて俺の髪をブラッシングし始めた。
はいっ?
俺は、とっさに断ることもできずにされるままになっていた。
イケオジ執事は、手慣れた手付きで俺の髪を背後で結い上げてリボンで止めた。
「お可愛らしい!」
「はぁ?」
俺は、差し出された手鏡を覗き込んで思わず舌打ちをした。
リボンって!
俺は、男だっちゅうの!
イケオジは、俺の肩をぽん、と叩いてから俺の手をとり立ち上がらせる。
「お客様がお待ちなので」
俺は、イケオジ執事にエスコートされて応接室へと向かった。
豪華そうな毛足の長い絨毯が敷き詰められた応接室のソファには、見知らぬ男が腰かけていた。
赤毛がかった金髪に青い瞳をしたその男は、俺を見るとすぐに立ち上がって騎士の礼をとった。
「突然、うかがいもおうしわけございません、コンティーヌ卿」
それは、ルリオス王子の護衛の騎士のライナスさんだった。
俺は、ソファに腰かけるように促してから自分もソファに腰かけた。
すぐにイケオジ執事がお茶のカップを差し出してくる。
今日のお茶は、俺が持ってきたアリオスト王国のお茶だった。
俺とルリオス王子の身代わりである副騎士団長ライナスさんが決闘した場合、ライナスさんが負けるとアリオスト王国と魔王国の和平に亀裂が入りかねない、というディナとフィオールの懸念に俺は、眉をよせた。
「じゃあ、どうしたらいいんだよ?決闘しなかったらフィオールは、ルリオス王子の婚約者にならなきゃいけないんだぞ?」
まあ、俺は、それでもいいんだけどさ。
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「それは……」
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「なんだ?」
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キラキラした目で俺を見つめている2人の視線に堪えながら俺は、小声で話した。
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「失礼いたします、シャル様。お客様が見えられているのですがいかがいたしましょうか?」
「客?」
俺が小首を傾げているのを見てイケオジ執事は、部屋に入ってきて俺の髪をブラッシングし始めた。
はいっ?
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イケオジ執事は、手慣れた手付きで俺の髪を背後で結い上げてリボンで止めた。
「お可愛らしい!」
「はぁ?」
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リボンって!
俺は、男だっちゅうの!
イケオジは、俺の肩をぽん、と叩いてから俺の手をとり立ち上がらせる。
「お客様がお待ちなので」
俺は、イケオジ執事にエスコートされて応接室へと向かった。
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赤毛がかった金髪に青い瞳をしたその男は、俺を見るとすぐに立ち上がって騎士の礼をとった。
「突然、うかがいもおうしわけございません、コンティーヌ卿」
それは、ルリオス王子の護衛の騎士のライナスさんだった。
俺は、ソファに腰かけるように促してから自分もソファに腰かけた。
すぐにイケオジ執事がお茶のカップを差し出してくる。
今日のお茶は、俺が持ってきたアリオスト王国のお茶だった。
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