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4 魔法少女がやってきた!

4ー6 『魔法少女』の真実

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 4ー6 『魔法少女』の真実

 海につくと田中 メイコと俺は、何をするというわけでもなくただ、二人で海辺をそぞろ歩いた。
 田中 メイコは、何も話さない。
 俺は、その薄幸そうな背中を見ていると落ち着かなかった。
 俺には、何もできない。
 所詮は、俺は、ただの道具でしかないからな。
 彼女が俺に何を期待しているのかは知らないが、俺には、何もしてやれない。
 それが、ムカつくのだ。
 俺は、自分の非力さに初めてイラついていた。
 しばらく歩いたところで田中 メイコが歩を止めた。
 遠くの海を見つめて彼女は、ポツリと漏らした。
 「ここでわたしは、ほんとは死ぬはずだったの」
 はい?
 俺は、嫌な予感中だった。
 聞いてはいけない。
 俺は、すぐに後ろを向いてここから立ち去るべきだ。
 そう、俺の本能がいっていた。
 だけど。
 俺は、実際にはその場にとどまっていた。
 田中 メイコは、俺に話した。
 「『魔法少女』は、生まれるとすぐにその親の手で殺される。なぜなら『魔法少女』は、神の呪いによって全ての存在から疎まれているから」
 彼女は、俺に『魔法少女』の悲しい物語を始めた。
 「かつて神に呪いを受けた人々が『魔法少女』となった。彼らは、いつか呪いが解かれることを信じて生き続けてきた。だけど、神の呪いは解けない。それどころか、神の呪いは、どんどんと『魔法少女』を極めていった」
 閉ざされた世界で生き続けるうちに『魔法少女』の呪いは、純化されていき研ぎ澄まされていく。
 今では、『魔法少女』が『魔法少女』の形をとどめることもできないぐらいに呪いは浸潤していた。
 「かつては、人の姿であった『魔法少女』は、今ではもう人の姿ですらなくなっているの。『魔法少女』は、いつしかただの化け物となり果ててしまった」
 俺は、前に見た『魔法少女』の姿を思い出していた。
 全身をドロドロした何かにおおわれた怪物。
 腐敗臭を撒き散らしてこの世界を呪い、破壊しようとするもの。
 「『魔法少女』は、いつか自我すらも失いただの魔物に成り果てる運命」
 田中 メイコは、俺に背を向けたまま話した。
 「だから、この世界に『魔法少女』が生まれたらそれを殺すことが我々に与えられた唯一の救いなの。だけど、わたしの両親は心弱くて、わたしを殺すことができなかった」
 
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