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5 戦争とか青春とか

5ー10 異世界からきた騎士

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 5ー10 異世界からきた騎士

 「異世界との連絡なら取ることが可能だ」
 いきなり俺の肩に乗っていた黒江の奴が言い出した。
 使い魔が口をきいたのでアーガシュ伯爵がぎょっとしている。
 「シバザキの使い魔は、口をきけるのか?」
 俺は、ぎりぎりと歯軋りした。
 余計なことをしやがって!
 「見たとおり、この猫は、うるさい奴なんです」
 「そんなことより、連絡がとれるとな?」
 「ああ」
 黒江が俺の手をすり抜けてアーガシュ伯爵の前にすとん、と飛び降りた。
 「この俺の本体である船をこの異世界に駐留させておけばいい」
 「うん。よくはわからんが、できるならそうして欲しい。いいな?シバザキ」
 俺は、そっと舌打ちした。
 黒江の奴め!
 余計なことしやがって!
 こうして俺は、いきなりアーガシュ伯爵の相談役の近衛騎士としてお仕えすることになってしまった。
 もちろん、俺がレナード商会の会長を続けることは許可を得た。
 その上でアーガシュ伯爵にお仕えすることになった。
 俺は、早々にアーガシュ伯爵のお屋敷を辞した。
 去っていく俺たちをアーガシュ伯爵は寂しそうに見送ってくれた。
 ほんとは、部下とかじゃなくって友達がほしいんじゃね?
 俺は、ふとそんなことを思っていた。
 けどな。
 俺は、ため息をついた。
 俺には、友達なんて必要ない。
 ただ、俺に必要なのは、マスターとの約束を守るということ。
 俺は、魔王を復活させるためにこの世に生を受けたのだから。
 「これからこの世界で最高権力者たちを相手に戦っていくのだからな。お前にも権力は必要だろう」
 黒江がいうのを俺は、うんざりしてきいていた。
 こういう荷物が積み重なっていくと将来、スローライフを送れなくなるんじゃね?
 だが、俺の心とはうらはらにルーナやルゥたちは、喜びを露にしていた。
 「これで商売の幅が拡がりますよ、カオル様!」
 「ご主人様は、その価値のあるお方ですから!」
 ほんとにそう思ってんのか?
 俺は、苦笑していた。
 とにかく、こうして俺は、どういうわけだか辺境伯の相談役の近衛騎士となったのだった。
 
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