異世界カフェの雇われ店長になりました~常連の騎士様や幼馴染みの聖者の熱愛に絆されそうです~

トモモト ヨシユキ

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2 カフェ『黒猫』

2ー1 乙女

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 2ー1 乙女

 僕がカフェ『黒猫』に来てから1ヶ月ほどが過ぎた頃になって、ようやくちらほらと客が店を訪れるようになった。
 お客さんたちの様子から、僕を警戒していたように思われた。
 訪れる客は、みな、立派な紳士ばかりで僕は、ちょっと接客に緊張していたんだけど、みな、いい人たちで僕ががちがちに緊張しているのを見て優しく声をかけてくれた。
 「そんなに緊張しないでもいいよ、君」
 「そうだとも」
 少し年配の紳士が僕に微笑みかける。
 「我々は、ここでは、みな、身分などには縛られない。君も、気にすることはない」
 「そうですわ」
 オーナーがにっこりと頷く。
 「私たちは、ここでは、自由ですもの。何者にも縛られない。だから、あなたも緊張しなくていいのよ、アイ」
 カフェで軽くお茶をすませると紳士たちは、そそくさとオーナーと一緒に二階へと向かった。
 しばらくして。
 美しいピンクのドレスのご婦人と薄いブルーのドレスのご婦人が二階から降りてくる。
 僕は、ちらりと2人を見て唖然としていた。
 それは、女性用のドレスを身に付け、化粧をし、巻き髪のウィッグをかぶった先程の紳士たちだった。
 僕は、無になっていた。
 無表情で静かにミルクティーを給仕する。
 「あら、ありがと」
 年配の人の方が僕にウインクする。
 「あなたが作るお菓子、楽しみだったのよ」
 「ええ」
 若い方の人がぽうっと頬を染める。
 「気になってたのだけど、アリーが、その、オーナーがあなたがここに慣れるまではダメって言うものだから」
 「そうなんですか?」
 僕は、なんとか笑顔を作ると今日のお菓子をテーブルに提供した。
 今日は、新鮮なリンゴによく似た果物が手に入ったのでタルト・タタンを作った。
 甘く煮たリンゴもどきを敷き詰めてタルト生地を重ねて焼いたものだ。
 僕がテーブルで切り分けているのを見て2人は、目をキラキラさせる。
 「とってもきれいなお菓子ね!それにいい匂い!」
 「こんなお菓子見たことがないわ!」
 女子高校生みたいにきゃっきゃと騒ぐ2人に僕は、ふっと笑ってしまう。
 なんだか、可愛らしい?
 「どうぞ」
 僕が切り分けたタルト・タタンを皿に盛って差し出すと彼らは、お淑やかに味わった。
 「んんっ!」
 「美味しい!」
 2人は、顔を見合わせるとにっこりと微笑んだ。
 「甘酸っぱくって、まるで、初恋の味、ね!」
 うん。
 僕は、2人のカップにお茶を注ぎながら思っていた。
 乙女だ。
 ここに来るお客様たちは、乙女なんだ。
 
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