14 / 30
2 カフェ『黒猫』
2ー4 代役
しおりを挟む
2ー4 代役
数十分後。
僕は、うずくまりしくしくと涙を流していた。
「何も泣くことないだろうが」
キュリアが僕を冷たく見下ろしているのを恨めしげに見上げて僕は、口を開いた。
「裏切り者!」
「それは、違うわよ、アイ」
にっこりと笑みを浮かべたオーナーが僕の頭を優しく撫でる。
「キュリアは、最初から、誰の見方でもないのですもの」
オーナーは、僕の涙に濡れた顔をシルクの白いハンカチで拭うと僕の手を引いてその場に立たせた。
「さあ、生まれ変わった姿をごらんなさいな」
姿見に移っているのは、艶のあるブルーのドレスを身にまとい、髪をシニョンに結い上げブルーのリボンをつけ
うっすらと化粧をした美少女だった。
「な、なんでこんな!」
「仕方ないのよ、アイ」
オーナーがふっと僕の肩越しに鏡の中の僕を見つめて口角をあげる。
「どうしてもあなたに私のパートナーをつとめてもらう必要ができたのよ」
「パートナー?」
「そう」
涙に潤んだ僕の目を見つめてオーナーが頷く。
「アリオが戻るまで、あなたが私のパートナーになるのよ」
オーナーは、僕を鏡の前に置いた椅子に座らせると僕の目元やら口許に化粧の粉をはたきながら話を続けた。
どうやらオーナーは、王太子妃となる聖者の次の側妃の座にアリオをつけるつもりだったようだ。
それを総一郎に責められたのだとか。
逃げた側妃が戻るまで聖者は、王太子妃にはならない。
つまり、どちらが本当にアレクセイ王太子殿下の妃に相応しいかを見極めない限りは総一郎は、アレクセイ王太子殿下とは婚約も認めない、といっているらしい。
しかし。
聖者と王太子が婚約しないままでいるのは、まずい。
何がまずいのかはわからないけど、まずいらしい。
そこで、逃げたアリオが戻るまで僕を身代わりにたてるつもりなのだ。
「こんなの、秒でばれますよ?」
「いいのよ」
僕の唇に指先につけた紅を塗りながらオーナーが答える。
「アリオは、そんな目立つ存在じゃないし、ほぼほぼ社交界に知り合いはいないの。とりあえず、アリオが戻るまで代役をしてくれれば後は、なんとかなるし」
僕は、赤く塗られた唇をまじまじと眺める。
まるでほんとに女の子みたいだ。
もしかしたら。
総一郎にもばれないかもしれない。
でも。
このドレスは、いつから用意してたの?
僕がそう問うとオーナーが一瞬だけ困ったような顔をした。
「これは、本物のアリオのためのドレスよ。私たちは、アリオが冬が来るまでには戻ると思っていたの」
でも。
彼は、戻らなかった。
僕は、きゅっと口許を引き締める。
「今日だけ」
僕は、きっとオーナーを睨み付けた。
「僕がアリオさんの身代わりをつとめるのは今夜だけですからね!」
数十分後。
僕は、うずくまりしくしくと涙を流していた。
「何も泣くことないだろうが」
キュリアが僕を冷たく見下ろしているのを恨めしげに見上げて僕は、口を開いた。
「裏切り者!」
「それは、違うわよ、アイ」
にっこりと笑みを浮かべたオーナーが僕の頭を優しく撫でる。
「キュリアは、最初から、誰の見方でもないのですもの」
オーナーは、僕の涙に濡れた顔をシルクの白いハンカチで拭うと僕の手を引いてその場に立たせた。
「さあ、生まれ変わった姿をごらんなさいな」
姿見に移っているのは、艶のあるブルーのドレスを身にまとい、髪をシニョンに結い上げブルーのリボンをつけ
うっすらと化粧をした美少女だった。
「な、なんでこんな!」
「仕方ないのよ、アイ」
オーナーがふっと僕の肩越しに鏡の中の僕を見つめて口角をあげる。
「どうしてもあなたに私のパートナーをつとめてもらう必要ができたのよ」
「パートナー?」
「そう」
涙に潤んだ僕の目を見つめてオーナーが頷く。
「アリオが戻るまで、あなたが私のパートナーになるのよ」
オーナーは、僕を鏡の前に置いた椅子に座らせると僕の目元やら口許に化粧の粉をはたきながら話を続けた。
どうやらオーナーは、王太子妃となる聖者の次の側妃の座にアリオをつけるつもりだったようだ。
それを総一郎に責められたのだとか。
逃げた側妃が戻るまで聖者は、王太子妃にはならない。
つまり、どちらが本当にアレクセイ王太子殿下の妃に相応しいかを見極めない限りは総一郎は、アレクセイ王太子殿下とは婚約も認めない、といっているらしい。
しかし。
聖者と王太子が婚約しないままでいるのは、まずい。
何がまずいのかはわからないけど、まずいらしい。
そこで、逃げたアリオが戻るまで僕を身代わりにたてるつもりなのだ。
「こんなの、秒でばれますよ?」
「いいのよ」
僕の唇に指先につけた紅を塗りながらオーナーが答える。
「アリオは、そんな目立つ存在じゃないし、ほぼほぼ社交界に知り合いはいないの。とりあえず、アリオが戻るまで代役をしてくれれば後は、なんとかなるし」
僕は、赤く塗られた唇をまじまじと眺める。
まるでほんとに女の子みたいだ。
もしかしたら。
総一郎にもばれないかもしれない。
でも。
このドレスは、いつから用意してたの?
僕がそう問うとオーナーが一瞬だけ困ったような顔をした。
「これは、本物のアリオのためのドレスよ。私たちは、アリオが冬が来るまでには戻ると思っていたの」
でも。
彼は、戻らなかった。
僕は、きゅっと口許を引き締める。
「今日だけ」
僕は、きっとオーナーを睨み付けた。
「僕がアリオさんの身代わりをつとめるのは今夜だけですからね!」
33
あなたにおすすめの小説
猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした
水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。
そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。
倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。
そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。
体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。
2026.1.5〜
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
魔王様が子供化したので勇者の俺が責任持って育てていたら、いつの間にか溺愛されているみたい
カミヤルイ
BL
顔だけが取り柄の勇者の血を引くジェイミーは、民衆を苦しめていると噂の魔王の討伐を指示され、嫌々家を出た。
ジェイミーの住む村には実害が無い為、噂だけだろうと思っていた魔王は実在し、ジェイミーは為すすべなく倒れそうになる。しかし絶体絶命の瞬間、雷が魔王の身体を貫き、目の前で倒れた。
それでも剣でとどめを刺せない気弱なジェイミーは、魔王の森に来る途中に買った怪しい薬を魔王に使う。
……あれ?小さくなっちゃった!このまま放っておけないよ!
そんなわけで、魔王様が子供化したので子育てスキル0の勇者が連れて帰って育てることになりました。
でも、いろいろありながらも成長していく魔王はなんだかジェイミーへの態度がおかしくて……。
時々シリアスですが、ふわふわんなご都合設定のお話です。
こちらは2021年に創作したものを掲載しています。
初めてのファンタジーで右往左往していたので、設定が甘いですが、ご容赦ください
素敵な表紙は漫画家さんのミミさんにお願いしました。
@Nd1KsPcwB6l90ko
異世界で勇者をやったら執着系騎士に愛された
よしゆき
BL
平凡な高校生の受けが異世界の勇者に選ばれた。女神に美少年へと顔を変えられ勇者になった受けは、一緒に旅をする騎士に告白される。返事を先伸ばしにして受けは攻めの前から姿を消し、そのまま攻めの告白をうやむやにしようとする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる