異世界カフェの雇われ店長になりました~常連の騎士様や幼馴染みの聖者の熱愛に絆されそうです~

トモモト ヨシユキ

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2 カフェ『黒猫』

2ー4 代役

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 2ー4 代役

 数十分後。
 僕は、うずくまりしくしくと涙を流していた。
 「何も泣くことないだろうが」
 キュリアが僕を冷たく見下ろしているのを恨めしげに見上げて僕は、口を開いた。
 「裏切り者!」
 「それは、違うわよ、アイ」
 にっこりと笑みを浮かべたオーナーが僕の頭を優しく撫でる。
 「キュリアは、最初から、誰の見方でもないのですもの」
 オーナーは、僕の涙に濡れた顔をシルクの白いハンカチで拭うと僕の手を引いてその場に立たせた。
 「さあ、生まれ変わった姿をごらんなさいな」
 姿見に移っているのは、艶のあるブルーのドレスを身にまとい、髪をシニョンに結い上げブルーのリボンをつけ
うっすらと化粧をした美少女だった。
 「な、なんでこんな!」
 「仕方ないのよ、アイ」
 オーナーがふっと僕の肩越しに鏡の中の僕を見つめて口角をあげる。
 「どうしてもあなたに私のパートナーをつとめてもらう必要ができたのよ」
 「パートナー?」
 「そう」
 涙に潤んだ僕の目を見つめてオーナーが頷く。
 「アリオが戻るまで、あなたが私のパートナーになるのよ」
 オーナーは、僕を鏡の前に置いた椅子に座らせると僕の目元やら口許に化粧の粉をはたきながら話を続けた。
 どうやらオーナーは、王太子妃となる聖者の次の側妃の座にアリオをつけるつもりだったようだ。
 それを総一郎に責められたのだとか。
 逃げた側妃が戻るまで聖者は、王太子妃にはならない。
 つまり、どちらが本当にアレクセイ王太子殿下の妃に相応しいかを見極めない限りは総一郎は、アレクセイ王太子殿下とは婚約も認めない、といっているらしい。
 しかし。
 聖者と王太子が婚約しないままでいるのは、まずい。
 何がまずいのかはわからないけど、まずいらしい。
 そこで、逃げたアリオが戻るまで僕を身代わりにたてるつもりなのだ。
 「こんなの、秒でばれますよ?」
 「いいのよ」
 僕の唇に指先につけた紅を塗りながらオーナーが答える。
 「アリオは、そんな目立つ存在じゃないし、ほぼほぼ社交界に知り合いはいないの。とりあえず、アリオが戻るまで代役をしてくれれば後は、なんとかなるし」
 僕は、赤く塗られた唇をまじまじと眺める。
 まるでほんとに女の子みたいだ。
 もしかしたら。
 総一郎にもばれないかもしれない。
 でも。
 このドレスは、いつから用意してたの?
 僕がそう問うとオーナーが一瞬だけ困ったような顔をした。
 「これは、本物のアリオのためのドレスよ。私たちは、アリオが冬が来るまでには戻ると思っていたの」
 でも。
 彼は、戻らなかった。
 僕は、きゅっと口許を引き締める。
 「今日だけ」
 僕は、きっとオーナーを睨み付けた。
 「僕がアリオさんの身代わりをつとめるのは今夜だけですからね!」
 
 
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