転生したら本でした~スパダリ御主人様の溺愛っぷりがすごいんです~

トモモト ヨシユキ

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14 お嫁に行くことになりました。

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    王都の城へ呼び戻されていたクリスがクーナの山城へと帰ってきたのは、その日の夕方のことだった。
    「何?」
    破壊された城壁を見て、クリスは、うんざりしたように俺とアークにきいた。
    「今度は、何をしたんだ?ユウ」
     「ちょっと、その、生き別れの弟が・・」
    俺が少し、申し訳なさげに言うと、ティルがペコッと頭を下げた。
   「ごめんなさい。悪気はなかったんです」
    「何?チビッ子の数、増えてる!」
     俺とアークは、クリスに事情を説明した。
    俺が、伝説の魔導書『R』の流れをくむものであること。   
   かつて、俺がエドランに拐われたこと。
   そして、俺の父である人が俺のことを今でも探していて、そのために弟であるティルがやってきたということ。
   「私が知りたいのは、なんで、隣国の王子である人がその、弟とかいう魔導書と一緒にここにいるのかっていうことなんだが」
     俺たちの話の後で、クリスが言うのをきいたディアンが口を開いた。
   「この子、ティルは、私のパートナーなのです。この度、私が父王ゲイルズよりアストラル王国国王スクルド2世宛に書かれた親書を届けに来るのに、どうしても一緒に行きたいと言うもので連れてきたのです。なんでも、こちらの魔導書、ユウ殿に会いたいとか言いまして」
   「父上に親書だって?」
    クリスが眉をひそめる。
   「もしかして、ネシウス公国のことか?」
   「まあ」
    ディアンは、頷いた。
   「ありていに言えば、そうですね」
        俺は、アークの方をうかがった。アークからネシウス公国の情報が伝わってくる。
    ネシウス公国は、アストラル王国と隣国であるラクロイト王国と国境を接する国であり、同盟国でもあるが、最近、王が亡くなり年若い皇子が次期王となるともくされていた。
    「ネシウス公国、やはり、揉めているのですね」
    執務室のデスクについたクリスがディアンにソファに座るようにすすめながらきくと、ディアンは、溜め息をついた。
    「なにしろ、次期王とされている皇子は、まだ7才ですからね」
    ディアンがソファに腰かけて言った。
   「敵も多い様ですし、心配ですね」
    「皇子の敵は」
     クリスがきいた。
    「クスナット教国でしょうか?」
    「あるいは、ね」
      ディアンが表情を曇らせた。
    「反皇子派の連中の背後には、クスナット教国の影があることはいなめませんね」
    「あの国は」
     クリスが穏やかに微笑んで言った。
    「対魔王戦の先鋒に立っている国でしたね」
    「ええ」
     ディアンが頷いた。
   「魔族の存在を決して認めようとはしない方々が多い国です」
    「私は、いずれ、クスナット公国と戦うことになるやもしれません」
    クリスは、何気なく言ってディアンの様子をうかがった。ディアンは、軽く微笑んだ。
   「そうなんですか。奇遇なことですが、私もあの国は、嫌いです」
    二人は、見つめあって、にっこりと笑った。
   「ディアン殿、私は、今、私の国における魔族の売買を取り締まろうとしているんです。私は、将来的には、奴隷制度そのものを廃止するつもりです。新しい時代には、人と魔族が手を取り合って進むべきだと思っています」
    クリスが言うと、ディアンは、部屋の隅に立っているディエントスを指して言った。
   「それは、彼の影響ですか?」
   「ええ、それもあります」
    クリスが答えた。
    「魔王ディエントスとさしで話せる機会が得られたことは大きかったですね。魔族ともわかりあえるということがわかりましたから」
   「魔王ディエントス?」
    ディアンがハトマメな表情で繰り返した。
   「魔王?」
    「そうです。魔王ディエントスです」
    ディアンがディエントスの方を振り向いて、そして、青ざめた。
   「なんで、こんなところに彼がいるんです?」
   「話すと長くなるのですが」
    クリスは、ことの次第をかいつまんでディアンに話した。クリスから話をきいたディアンは、ゲラゲラと笑い出した。
    「マジで?痴話喧嘩で魔王と光の精霊王を召喚?」
   「笑い事ではありませんよ。ディアン殿」
    クリスが溜め息をついた。
    「一つ間違えば、大惨事になってましたよ。運よくおさまってくれてますけどね。本当に、うちの魔導書のすることといったら」
    「そう、この魔導書たちは、我々人間には、計り知れない存在ですね」
    ディアンが言った。
   「できれば、この『R』シリーズの存在は、クスナット教国には、知られたくないな。彼らが知れば、手に入れようとしてくるかもしれないですからね」
     「確かに、そうです」
     クリスが肯定した。
   「魔王をも従属させる力です。彼らに渡すわけにはいかない」
       翌日、ディアンとクリスは、王都へと向かって出発した。
    ティルは、ディアンについていくと言ってきかなかったため、クリスは、仕方なく同行することを許した。
    「まあ、『R』シリーズについて父上に知っていただくのにちょうどいいかもしれないな」
    クリスは、そう言った。
   「いづれ、我々も、ユウの存在を父王に知らせなくてはならないからな」
    クリスは、まだ、俺のことを王に報告していなかった。
   理由は、いろいろあるらしい。
   なんか、屋根裏に隠されている怪物になった気分だけど、仕方がない。
   俺たちは、クリスたちが王都に向かうのを見送った。
   その後は、アークは、城壁の修理の指揮をとるのに忙しかったから、俺は、一人で城の図書室で本を読んで過ごしていた。
    主に、アストラル王国について書かれた本を読んでいたんだが、本棚の隅から読み古された絵本が出てきたのを見つけて手を止めた。
    クリスのものだろうか。
    俺は、興味本意でその古びた絵本を読み始めた。
    『勇者ラドリーの物語』
     うん。
    ラドリーといえば、あの時の勇者だよね。
    話は、ラドリーが悪い大魔導師エドランを倒して世界に平和をもたらしたという物語だった。
    俺のことは、いっさい書かれていない。
   そんなもんか。
   俺は、少し、ホッとしていた。
   俺は、自分がしてきたことをもっと責められるものだと思っていたのだ。
   でも。
   事実を知ってもクリスもアークも、俺のことを責めたりしなかった。
   俺のこと、受け入れてくれた。
   それだけが、全てだった。
   俺は、彼らのために何だってする。
   そう俺が思っていた頃、王城からクリスたちが戻ってきたとアルカイドが俺を呼びに来た。
   「クリスが呼んでますよ、ユウ」
  なんだろう?
   俺は軽い気持ちでクリスの執務室に向かった。
   クリスの待つ部屋へと行った俺を満面の笑みを浮かべたクリスと、少し、半笑い気味のディアンとティル、ご機嫌ななめの様子のアークが迎えた。
    なんだ?
   俺は、なんだか嫌な予感がしていた。
   「ユウ」
    俺を迎えたクリスは、微笑みを浮かべて言った。
   「君に頼みたいことがあるんだ」
    ええっ?
    なんか、デジャ・ビュ?
   最近、こんなことがあったような気がするんだけど。
  「何?」  
  俺は、不安な気持ちできいた。クリスは、そんな俺に事も無げに言った。
  「君に、お嫁にいって欲しいんだ」
   はい?
   俺は、呆気にとられて、続いて、アークの方を見た。アークは、目をそらしたまま、不機嫌そうにしていた。
    「どういうこと?」
    俺がきくと、クリスは、にこにこしながら言った。
   「君に、ネシウス公国次期王であるロキシス・ココロット・ナム・ネシウス皇太子殿下のもとに嫁いでもらいたいんだ」
    マジで?
   俺は、面食らっていた。
   だって、俺は、既婚者ですよ?
     「アークは?」
    俺は、きいた。
   「どう思うわけ?」
    「俺は、反対だ」
     アークが言った。
    「だが、今、他にいい案がない以上、仕方がない。本当に、じつに、不本意だが」
   マジか。
   「大丈夫。形だけのものだからね」
    クリスが微笑みを浮かべて俺を見つめた。
   「なにしろ、相手は、まだ7才だし」
   「なんで俺、なんだよ」
    俺は、クリスに抗議した。
   「別に、もっと相応しい人がいるんじゃね?」
   「アークも言った筈だよ、ユウ」
    クリスが答えた。
    「今、他にいい案がないんだよ。急がないと、彼は、暗殺されちゃうかもしれないんだよ。まだ、7才なのに。かわいそうだと思わないか?」
    それは。
   7才で暗殺とか、かわいそうすぎる。
   「頼むよ、ユウ」
    クリスが俺に頭を下げた。
   「ユウしか、この任務は任せられないんだよ」
   俺は、戸惑っていた。
   いや、マジで、彼らのためになんでもするって誓いはしたけど。
   だからって。
   嫁にいけって、どうよ?
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