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5 歴史は、繰り返す?

5ー1 条件をクリアした?

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 5ー1 条件をクリアした?

 ロタを失ってから一ヶ月が過ぎ、俺は、魔法学園に戻ってきた。
 故郷であるエルガーナ辺境伯領にロタを送り届け葬儀に立ち会った後、俺は、悲しみで立ち上がれなくなっていた。
 ロタを死なせてしまった。
 シチュエーションは、違えども、俺をかばうという形で。
 同じだ。
 前の生の時と同じ。
 もしかしたら運命は、変えられないのかもしれない。
 何か。
 俺なんかが抗うこともできないような大きな力が世界には、あるのかもしれない。
 だとしたら俺は。
 何度、死んで生き反ろうとも、どんなに強くなろうとも、もう、俺の運命は変えられないのか?
 再び、陥れられて悪役令息として裁かれるのか?
 無実の罪で家族を失い、自分も投獄され、そして。
 俺は、めまいを感じ倒れ、そのまま意識を手放した。

 「やあ」
 聞き覚えのある声が聞こえて俺は、気がついた。
 そこは、廃墟のような場所だった。
 崩れ落ちた古い建物の上に腰かけた女の影を俺は、ぼんやりと見上げていた。
 「やっと来てくれたんだね」
 女の顔は、逆行でよく見えない。
 だが、俺には、わかった。
 俺は、この女を知っている。
 初めて出会ったのは、俺が処刑された時だった。
 この女が全ての始まりだった。
 俺は、女に向かって立った。
 「ロタが・・死んだ」
 「知っている」
 女が冷酷なまでにそっけなく答えた。
 俺は、そんな女の態度に腹がたっていた。
 「あんたがくれた力だろう?」
 俺は、訊ねた。
 この力で俺は、信じられないくらい強くなってきた。
 なのに。
 ロタは、死んでしまった。
 このまま、また、繰り返すのか?
 俺は、何も変えられないのか?
 俺は、その場にくずおれた。
 嗚咽が漏れる。
 涙が。
 流れては落ちていく。
 気がつくとすぐ側に女が立っていた。
 「君は、十分に強くなった。前の君よりはもちろん、前世のローだった時よりも強くなった」
 女が俺に告げた。
 「そろそろいいだろう。君は、条件をクリアした」
 何がいいんだ?
 俺は、上を向き女を睨み付けた。 
 そして。
 俺は、初めてその女の顔を見たんだ。
 その女は、俺の知っている女、だった。
 「ロ・・タ・・?」
 
 
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