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7 領地開拓ですか?

7ー4 淡い気持ち

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 7ー4 淡い気持ち

 「アルモス兄は、やる気だ!」
 俺は、夜寝る前にロタに話した。
 ロタは、俺にホットミルクの入ったカップを渡した。
 「いいんじゃないですか?」
 ロタは、たいして興味もなさげに応じた。
 「というか、多感な年頃ですからね。ましてや両思いの恋人がいるんですから。二人で過ごしたいと思っても当然なんじゃ」
 マジか?
 俺は、ホットミルクをフゥフゥしながらロタをちらっと見た。
 「お前は?」
 「はい?」
 「お前もそんなこと思うことがあるのか?」
 俺は、ロタに訊ねた。
 俺の質問にロタは、答えた。
 「そうであって欲しいというならそう思うこともできます」
 「何、それ?」
 俺は、ロタをじとっと見つめた。
 「つまり、お前は、そんな気持ちにはならないってことか?」
 「そうではありませんが」
 ロタが俺を見返した。
 「私が心を動かされる相手は、オルナム様だけですから」
 「なっ!?」
 俺は、顔が熱くなる。
 こいつ、なんてことを言ってるんだ!
 ロタの言葉は、まるで愛のささやきのように聞こえて。
 俺は、ロタから視線を外した。
 「どうしたんです?オルナム様。顔が赤いですよ?」
 「な、なんでもないし!」
 俺は、慌ててミルクを飲み干すとベッドの中に潜り込んだ。
 俺の頭のてっぺんにロタがそっと口づける。
 「おやすみなさい、オルナム様」
 「お、おやすみ、ロタ」
 俺は、もごもごと呟いた。
 ロタが部屋から出ていくと俺は、はぁっとため息をついた。
 ロタは、俺のことをどう思っているのだろうか?
 俺は、布団の中で考えていた。
 ただの幼馴染み?
 いや。
 ローエルタールからすれば俺は、幼馴染みですらないわけだし。
 俺のこの気持ちももしかしたらローエルタールに作り出されたものかもしれない。
 恋とは違う。
 これは、もっともっと淡い気持ち。
 俺は、この気持ちに覚えがあった。
 前世、騎士のローだったとき、一度だけこんな思いを抱いたことがあった。
 だけど。
 それは、叶わぬ思いだった。
 俺がこの思いを抱いた相手は、決して俺のことを愛したりはしなかった。
 その女は、俺に言った。
 「あなたを尊敬することはできるが、愛することはできない」
 あの女は。
 俺は、眠りに落ちながら思っていた。
 あれは、誰だっただろう?
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