36 / 90
4 異界の徒
4ー6 真夜中のお茶会
4ー6 真夜中のお茶会
グラム・ヤーマン老と俺の『裏』は、数日後に行われた。
その日、俺は、ルトに頼んでちょっとしたものを用意していた。それは、小麦粉を薄く溶いたものを何枚も焼いて間にクリームを挟んで重ねたお菓子だった。
前世では、決して珍しくもなかったのだが、この世界では、こういった手のこんだ菓子はなかった。
「『裏』にお菓子か?」
ルトが聞くので俺は、くすっと笑った。
「たまには、いいだろう?」
年老いても噂の男娼を抱きたいと思う老人がいるんだから、客を菓子でもてなす男娼がいたっていいだろう?
宵闇に紛れてやってきたヤーマン老は、また、護衛たちを外で待たせて俺のもとへと現れた。
ルトが老人を部屋へと招き入れると、老人は、俺の前のテーブルに置かれたお茶会のセットを見て目を丸くした後、すぐに歯のない口をあけて大笑いした。
「これは、これは。真夜中のお茶会とは、面白い趣向ですな、ルシウス殿」
テーブルについた老人のために俺は、手ずからお茶をカップへと注いだ。老人は、くんくんと鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。
「これは、南の方の茶葉ですかな?」
「そうです。さすがは、ヤーマン商会の会頭様ですね」
俺は、にこっと微笑んだ。
「この大陸の最も南で作られる茶葉です」
それは、王都では珍しいがそんなに高級なものではなかった。どちらかというと庶民のためのお茶だった。
俺は、ヤーマン老がお茶を一口飲むのを眺めながら話した。
「このお茶は、俺の母親が好んだものです」
「ほう、お母上が」
ヤーマン老が微笑した。
「思い出のお茶というわけですかな?」
「ええ」
俺は、頷いた。
「俺の母は、貧しくて。この安いお茶ですら買うことができないこともありました」
俺たちは、それからいろいろなよもやま話をして過ごした。
といっても主に話しているのは俺の方でヤーマン老は、微笑ましげにそれに耳を傾けていた。
夜更けに去っていくヤーマン老を俺は、護衛の男たちのもとまで送り届けると姿が見えなくなるまで見送った。
グラム・ヤーマン老と俺の『裏』は、数日後に行われた。
その日、俺は、ルトに頼んでちょっとしたものを用意していた。それは、小麦粉を薄く溶いたものを何枚も焼いて間にクリームを挟んで重ねたお菓子だった。
前世では、決して珍しくもなかったのだが、この世界では、こういった手のこんだ菓子はなかった。
「『裏』にお菓子か?」
ルトが聞くので俺は、くすっと笑った。
「たまには、いいだろう?」
年老いても噂の男娼を抱きたいと思う老人がいるんだから、客を菓子でもてなす男娼がいたっていいだろう?
宵闇に紛れてやってきたヤーマン老は、また、護衛たちを外で待たせて俺のもとへと現れた。
ルトが老人を部屋へと招き入れると、老人は、俺の前のテーブルに置かれたお茶会のセットを見て目を丸くした後、すぐに歯のない口をあけて大笑いした。
「これは、これは。真夜中のお茶会とは、面白い趣向ですな、ルシウス殿」
テーブルについた老人のために俺は、手ずからお茶をカップへと注いだ。老人は、くんくんと鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。
「これは、南の方の茶葉ですかな?」
「そうです。さすがは、ヤーマン商会の会頭様ですね」
俺は、にこっと微笑んだ。
「この大陸の最も南で作られる茶葉です」
それは、王都では珍しいがそんなに高級なものではなかった。どちらかというと庶民のためのお茶だった。
俺は、ヤーマン老がお茶を一口飲むのを眺めながら話した。
「このお茶は、俺の母親が好んだものです」
「ほう、お母上が」
ヤーマン老が微笑した。
「思い出のお茶というわけですかな?」
「ええ」
俺は、頷いた。
「俺の母は、貧しくて。この安いお茶ですら買うことができないこともありました」
俺たちは、それからいろいろなよもやま話をして過ごした。
といっても主に話しているのは俺の方でヤーマン老は、微笑ましげにそれに耳を傾けていた。
夜更けに去っていくヤーマン老を俺は、護衛の男たちのもとまで送り届けると姿が見えなくなるまで見送った。
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。